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タカシの外資系物語

日系の時間、外資の時間2006.10.03

ケンジは何故、忙しいのか ?

「あー、忙しい、忙しい。時間がいくらあっても足りないや~ ( T-T ) 」

 


半年前に中途入社してきたケンジくん。何やら、とても忙しそうにしています。


私 「なんか、忙しそうだな。どうしたの ? 」


ケンジ 「あ、タカシさん。いや、 9 月末って評価の季節じゃないですか。通常の仕事に加えて、評価の申請書出さないといけないんで、ホントにテンテコ舞いですよ。申請書の締め切りまでに間に合うかなぁ … 」


わが社では、3 月末と 9 月末に人事評価を実施します。社員は全員、このタイミングで、自己評価の申請書類を自分の上司あてに提出しなければなりません。つまり、かく言う私も、ケンジと同様に評価の申請書を出さなければならないということを意味します。


私 「締め切り、締め切りって、あと 2 日もあるんだから、余裕じゃねぇの ? 」


ケンジ 「余裕なんてあるわけないじゃないですかぁ … まだ不慣れだし、時間がかかって仕方ないんですからーー ( T-T ) 」


慣れ ? 慣れねぇ … 確かに、ケンジくんは入社後初めての評価申請なんで、不慣れな部分はあるでしょう。しかし、彼の仕事ぶりを見ていると、どうも「慣れ」の問題だけではないような気がします。なんていうか、こう、要領が悪いんですよね。


私 「ケンジさぁ … さっきから見てると、なんか一所懸命メモ書きしてるみたいだけど、一体何書いてんの ? 」


ケンジ 「へ ? だから、申請書の下書きですよ」


私 「し、下書き ? 評価の申請書って、データベースに直接書き込めばいいようにできてるんだから、下書きなんていらないじゃん ! 」


ケンジ 「だって、間違えたらどうするんですか ! 」


私 「だから、間違えたら直せばいいじゃん、って ! わざわざ下書き書いて、それ見ながら入力してるやつなんて、初めて見たぞ。そんなことしてるから、時間がいくらあっても足りないんだよ ! 」

 

外資はコマ切れ時間を使う

読者のみなさんには、ケンジくんが極めて要領の悪い男のように見えるかもしれません。しかし、私に言わせると、日系企業で仕事をしている人の多くは、ケンジくんと大差ない仕事のやり方をしているように思います。

 


実は私も、外資に転職した当初は、「外資というのは、なんて忙しいところなんだろう … 」と思ったものです。外資では、基本的に、自分のことは全て自分でやらねばなりません。日系企業のようにサポートをしてくれる庶務係さんのような人はいませんから、経費の申請から自分に届いた郵便物のピックアップまで、全て自分でやる必要があります。


外資では、日系企業にいた頃のような仕事のやり方ではうまくいきません。ケンジくんの例にもあるように、下書きなんて悠長なことをしていては日が暮れてしまいます。下書きして、それをまた入力 … なんてことをせずに、いきなり清書するつもりで入力する。間違えたら、直接修正すればいい。また、少しでも空き時間があれば、仕事をせっせと片付ける。例えば、会議って、 5 分ぐらい遅れて始まることが結構ありますよね。常に PC を持ち歩いていれば、そんな「コマ切れ」の時間を利用して、経費の申請などを終えてしまうことができます。


これが日系ならどうでしょう。 PC なんて持ち歩いていないので、コマ切れの時間を活用して何かしようと思っても、そもそもできない環境になっているように思います。また、会議の時間は会議に集中すべきであって、待ち時間に他の仕事をやるなんてけしからん ! みたいな雰囲気もあるように思います。しかし、 10 人の人が 5 分間待たされただけで、 1 時間弱 ( 5 分× 10 人= 50 分)の仕事量をロスしたことになります。こういうのが積み重なって、無視できないほどの大きなロスを発生させているのです。最初から空き時間が出ることを前提に仕組みを作っておけば、そのようなロスは最小限にすることができます。

日系 = ゾウ ? 外資 = ネズミ ?

かなり前のことになりますが、『ゾウの時間 ネズミの時間 – サイズの生物学』 ( 本川達雄 / 中央公論社 ) という本がベストセラーになりました。この本の骨子は、動物によって時間の感じ方は違う ( 例えば、ゾウの 1 時間は、ネズミにとっては 1 分を意味する ) ということでした。ゾウはゆったりとした流れの中を生き、ネズミはめまぐるしく過ぎる時間の中を生きているということになります。人間の場合も同じで、子供のときに比べて、大人になってからの方が、時間が過ぎるのが早いと感じる理由は、それと同じです。


実は、日系と外資においても、時間の流れ方は異なります。日系企業の方が時間の流れが緩やかなので、日系のやり方のまま外資に来ると、非常に忙しく感じます。しかし実際には、仕事の総量自体は、それほど違いがなかったりします。外資の方が優秀だから、短時間で多くの仕事をこなしている … というよりは、そもそも ( 無理やり ) 短時間でやるような仕組みになっているので、そうせざるをえない … という方が的確な表現だと思います。外資は定時 ( 9 時~ 5 時 ) で終わることを前提に、日系は残業することを前提に、会社がデザインされているという言い方もできるかもしれません。


昼食時、日系企業の社員が喫茶店で楽しそうに談笑している一方で、外資では、昼食の時間も惜しんで、 PC に向かって仕事をしている人をよく見かけます。少しでも早く仕事を終わらせたいという気持ちがある一方で、休憩ぐらいはきっちり取りたいという気持ちも … どっちが優れているというわけではなく、結局は、その人の考え方、ライフスタイルに依存するのかもしれませんね。 
  
数日後、ケンジくん、またもやバタバタと走り回っています。


私 「おぅっ ! ケンジ。評価の申請は無事提出できたかい ? 」


ケンジ 「ええ、おかげ様で … でも、前日は徹夜しちゃいましたよ」


私 「あ、そう … ( 徹夜するほどの内容とも思えんが …、ま、いっか … )」


ケンジ 「それはそうと … タカシさんにお願いしていた提案書のサンプル、もう送ってもらえましたっけ ? 」


私 「あ ! 忘れてたよ、ゴメン、ゴメン。あとで送っておくから … 」


ケンジ 「ダメです ! 今、この場で僕の PC 使って、タカシさんのデータベースにアクセスしてください。今すぐにですよ ! 」


私 「は、はぁ … 」


こいつ、結構図太く生き残るタイプなのかもしれません。トホホ … なんでケンジに怒られにゃならんのか … 。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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