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タカシの外資系物語

「おめでとう ! 」 研修参加が決定 - 待っているものは … ? ( その 3 )2006.08.07

タカシが泣いた理由

前回の続き ) 超有名コンサルティング会社からやってきた切れ者講師 Jason の前で、だれがプレゼンをするかを、各グループで話し合うことになりました。私のグループでは、みんなが視線をそらせる中、紅一点の Isabella が私のケースを採用すればいいと言い出したのです !


Isabella 「 I think Takashi’s case is better, because it is the most interesting scheme ( タカシのケースが面白そうだから、それでいいんじゃない ? ) 」


私 「 But ・・・ ( おいおい、ちょっと待ってくれよ ! 無茶言うなよー ( T-T ) ) 」


Paul 「 I think so. This case is good for discussing 」


私 「 However ・・・ ( Jason の前で英語のプレゼンなんて、勘弁してくれよーー ( T-T ) ) 」


George 「 OK ! Takashi, I can support you! 」


私 「 ・・・ ( って、これ以上 “逆接” の単語知らんわーーーー ! そんなことより、プレゼンだけは勘弁してくれーー ( T-T ) )」


そのとき、私はただ「アワワワ ・・・ 」と言葉にならない沈痛な「叫び」を訴えていました。いや、もしかしたら、本当に泣いていたように思います。なぜ、これほどまでに嫌がるのか ? 理由は以下の通りです。


( 理由 1 ) 英語でプレゼンする準備ができていないから


もちろん、日本語でやってもいいなら、準備などは必要ありません。しかし英語でプレゼンするとなると、英語の資料以外に、各ページで何を話すかぐらいの下準備は必要です。私は事前にそこまで考えておらず、グループ内での説明も超適当でした。このままプレゼンしたら、資料の英語を単に棒読みするだけになる可能性が高いのです。


( 理由 2 )  Jason の専門分野と重なったから


Jason の専門分野は「金融」とのこと。私のケースも金融です。 Jason の専門外なら適当にごまかせそうな気もするのですが、同じ金融ではそういうわけにもいかないでしょうから、思いっきり突っ込まれることを恐れたのです。


( 理由 3 )  単に Jason が恐いから


こいつ、見た目が超~恐いおっさんなのです。適当に冗談でも言って済ませてくれそうになかったのですよ、ホントに ( T-T ) …

プレゼン開始 !

( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ・・・ 私が半べそで拒否し続けたものですから、メンバーも少しは心を動かされたようです。 George が自分の資料を見ながら、「じゃ、俺がやるよ ・・・ 」と言おうとしたまさにその瞬間、悪魔の最後通告が下されました。


Isabella 「タカシ ! あんたがやりなさい ! あなたが一番 Junior なんだから、ここで鍛えてもらわないでどうするのよ ! 」


私 「は、はい ・・・ やらせていただきます ( T-T )」


・・・ そう言われると、返しようもありません。私はグループの中では一番 Junior な ( ランクの低い ) マネージャーであることは確かですし、諸先輩方が私を鍛えてやろうと言ってくれているのを断るなんざ、できません。また、せっかく中国まで来たのですから、後は野となれ山となれ。こうなったら、やってやろーーじゃーーねーーかーーー !


そうこうしているうちに、早くも私の順番がやってきました。制限時間は 5 分。この短時間で、お客様の状況や提案内容およびその特長、コンペ ( 競合他社 ) の状況、などをまとめて話さねばなりません。


Jason 「OK, next! Group 2, who is presenter?」


私 「ミ、ミ、ミ、me ! ( ネコか、わしは・・・ )」


Jason 「OK, Let’s start !」


私 「OK, マ、my business case イ、is・・・」


私が話し始めると、聴衆のうち数名が、スライドが映し出されているスクリーンを指差しています。


「えっ ? どうしたの ? 」 見ると、スクリーンには何も映っていないではないですか ! なんと、緊張しすぎで、 PC とスクリーンをつなぐのを忘れとったわーー ( T-T )


私 「Sorry・・・ then, let’s start, again・・・」


Jason 「Wait! You forgot, Thank you for coming, everyone!」 ( ちょっと待て。「今日はお越しくださってありがとう ! 」っていう、挨拶が抜けてるぞ ! )


・・・ それぐらい、大目に見てくれやーーーー、ジェイソーーーーーーーーーーーーーーン ! ( T-T )


私は半ばヤケクソになって、少々大げさな挨拶をしました。


私 「Ladies and Gentleman, thank you for coming, today! I’m very glad to meet you and ・・・」


Jason 「2 minutes passed. It remains ・・・3 minutes!」 ( 2 分経過。残り 3 分 ! )


・・・ ア、アホか、わしは・・・残り 3 分でプレゼンするなんて、絶対無理じゃわい ・・・ ( T-T )

タカシ、プレゼンの評価は ?

結局、私以外で日本人が発表したグループはありませんでした。私のプレゼンは予想通り、スライドに書いてある英語を棒読みしたにすぎず、多くの日本人同僚からは失笑と冷たい視線を浴びて終わりました。ただ意外にも、グループのメンバーをはじめ、外国人の同僚からは、「 Takashi, Good job! 」といった、ねぎらいの言葉が返ってきたのには驚きました。


最後に Jason から、プレゼンに対する講評がありました。 Jason は、私のプレゼンに対して、次のように言いました。


「まず、言葉の問題 ( language problem ) については、私は全く気にしていません。この講義は英会話の講義ではないし、タカシは日本に帰ったら、日本語ですばらしいプレゼンができるわけですから。今日は、日本語がわからないわれわれのために、英語でプレゼンしてくれてありがとう ! 」


「次に、タカシのプレゼンは、内容的にも一番良かったと思います。多くのプレゼンは、わが社の提案のメリットだけを強調していましたが、タカシの提案では、そのメリットが定量化されており、お客様にとって、意思決定しやすい内容でした。あと、自分の提案の弱点とそのカバー策について触れていた点についても良かったと思います ・・・ 」


・・・ ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ・・・ ジェイソン、お前ってやつぁー、泣かせやがるぜ! 
  
外資系企業に勤める上で、非常に重要なことの 1 つに、「自ら率先してチャレンジする」ということが挙げられます。欧米人や英語でビジネスをしているアジア人は、チャレンジする人をリスペクト ( 尊重 ) する一方で、何もせずに当たり障りなく過ごす人を軽蔑します。プレゼンが終わった後、私に投げかけてくれた「 Good job! 」というのは、彼らの本心であり、かつ一緒に仕事をする一員として認めてくれたことを意味するのです。


みんなが hesitate ( 躊躇 ) しているときに、「じゃ、私がやる ! 」と立ち上がるのは、非常に勇気がいることです。しかし、だれかが立ち上がって話を始めなければ、議論することはできません。だれかが立ち上がって、たとえ間違った説明をしたとしても、そこから解答を導き出すことで、仕事は回っていくのです。


今回の研修では、このことを再認識しただけでも、かなりの収穫がありました。さて、この研修は 8月と 10 月に、各 1 週間ずつ残っています。そのときになったら、また面白いお話ができるかと思いますので、どうか期待していてくださいね ! はー、それにしても疲れた研修だったわい・・・。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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