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タカシの外資系物語

「たたき台」を提示せよ !2006.03.07

「たたき台」って何 ?

みなさんは、「たたき台」と聞いて、何を想像しますか。モグラたたき ? ハエたたき ? ( ハエたたきなんて、最近すっかり目にしませんが・・・ ) 実は外資系企業において、この「たたき台」というのが非常に重要な役割を担っています。さて、これは一体何なのでしょう。


「たたき台」は、tentative plan と訳されます。 Tentativeというのは、「仮の、一時的な」という意味ですから、「たたき台」 = 「仮の計画」ということになります。この「仮に」というのが非常に重要でして、外資系企業では何事も、「仮に」「仮定を置いて」話をスタートします。


例えば、社内における組織変更を議論するとしましょう。一口に組織変更と言っても、会議に参加する人によって、考えていることはかなり違います。ある人は部門内のアルバイトの数を増やして欲しいと思っているかもしれませんし、またある人は管理職の数が多すぎると思っているかもしれません。このように、様々な思惑を持った人がいる場合、単に意見を言い合うだけでは、会議は全く収束していきません。こんな場合には、多少現実離れしていても構わないので、議論の元となる「仮の姿」を提示して、それをベースに話し合いをしていくのが効果的なのです。


「本日は組織変更というテーマでみなさんにお集まりいただきましたが、議論が多岐に及ぶことが想定されます。議論を一本化するために、『各部門の管理職を 10% 削減して、その分の人件費を補助作業としてのバイト代に振り向ける』という案をベースに話を始めたいと思います。バイト人員の配分は、前年同月の残業時間に応じて、各部門に機械的に比例按分しています。これはあくまでも『たたき台』なので、みなさんの活発な意見をいただいて、修正していきたいと思います・・・」 たたき台というのは、こんな感じで使用されます。たたき台をベースに議論を進めることによって、単に声の大きい人の意見に流されることなく、また少数意見も取り入れていくことが可能になります。

basis of judgment

資では、何かの意見を言う場合には、必ずその理由・根拠を述べねばなりません。なぜ反対なのか、何がクリアできれば賛成なのか、そのように判断する根拠は何なのか・・・ これを、「 basis of judgment ( 判断の根拠 ) 」と言います。 basis of judgment を明らかにしながら話すためには、議論の基準となるたたき台が必要です。「管理職が 15% 削減された場合、自分の部門ではお客様対応の業務に支障が出る。よって、管理職は 10% までしか削減できない・・・ 」といった感じです。この場合も、「管理職 15% 削減」というたたき台があったから具体的な話ができるのであって、「うちの部署は超忙しいから、人員の削減なんて無理だからな ! 」とハナから言ってしまったのでは話にならないというわけです。


ということで、外資では、会議のときに意見を活発に出す人よりも、たたき台を提示してみんなの意見をうまく調整する人の方が評価される傾向にあります。外資と聞いて、押しの強い人を想像していたら、温和で聞き上手な人が出てきてびっくりした、なんていう経験をみなさんもお持ちだと思います。外資のデキル人というのは、ゴリ押しで議論をする人ではなく、自分にとって有利な条件でたたき台を提示し、自分の意見に誘導できる人。その議論中、決して他人に不愉快な思いをさせない人なのです。

日本企業では「たたき台」は使われない !

一般的に、日系企業では「たたき台」があまり使われません。私が日系の銀行にいたときにも、会議にたたき台が使われるといったことは皆無で、議論する前から結果が見えているものがほとんどでした。結局のところ、声の大きい権力者の意見がまかり通っていたに過ぎなかったような気がします。


日系企業でたたき台が使われないのは、なぜでしょうか。それは、「言い出したモン負け」になってしまうからではないかと思います。日本企業では、外資のように積極的な意見交換は期待できません。となると、たたき台を出してしまうと、それがそのまま「本採用」される可能性が高いわけです。たたき台が本採用されると、次に何が起こるか ? それは、「じゃ、だれがやるんだい ? 」ということです。「たたき台を出したのはタカシなんだから、タカシがやるのが筋だよな ! じゃ、あとはヨロシク ! 」なんてことが、平気で起こります。


「よーし、そこまで言うなら、俺がやってやらー ! 見てろよー ! 」なーんて、一人で熱く燃えるのもいいのですが、何から何まで一人でできるというものでもありません。結局は、自分に直接利害が及ばないことまでは手が出せなくなり、たたき台を提示することについても及び腰になってしまうというわけです。


「言い出した人が責任持って実行する」というのは、日本文化の一部です。そもそも日本においては、「不言実行」 ( =ウダウダ言わずに、黙ってなすべきことを実行すること) を良しとする文化があります。言うよりも、実行する人が重んじられる文化なのですから、自分が言いだした場合はどうなるか ・・・ 推して知るべしでしょう。つまり、たたき台を提示したが最後、ほぼ100% の確率で自分でやる羽目に陥るわけで、そうなるぐらいなら、会議の時間中、ずっと押し黙っていた方があとあと苦労せずに済むというわけです。


このような「言い出したモン負け」という考えに対し、外資では全く逆の発想をします。それは、「オレはたたき台を提示して、一生懸命考えた。だから、これを実行するのは別の人 -たたき台を提示せずに、何も考えなかった人- がやるべきだ ! 」という考えです。そんな強引な ・・・ と思われるかもしれませんが、現に、外資においてたたき台を提示せずに、会議で議論にも参加しないでいると、実際にやらねばならない仕事ばかり押し付けられます。その結果、その仕事の実行に成功したところで、より評価されるのはたたき台を提示して計画を立てた人なのですから、日本的に考えると、これほど割に合わない話はないというわけです。


ま、外資で出世できるかどうかは別として、「たたき台」という考え方は大いに参考になります。私も明日の会議のたたき台を考えつつ、外国人の同僚から押し付けられて断りきれなかった仕事でも片付けますかねっと・・・ こっちの方が、ずっと多かったりして・・・ トホホ(T-T)・・・

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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