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タカシの外資系物語

昇進の条件 ( その 1 )2005.10.04

レベル申請とは ?

「レベル申請の締め切りは、今週末です。金曜日 17 時 30 分を過ぎてからの申請は、今回の評価の対象外となります ( 金曜日 17:30 に、 HR ツールのデータ受付が終了しますので時間厳守でお願いします)。


なお最終日は申請処理が集中し、メールによるワークフローの効率が悪くなり、期限を過ぎる危険性がありますので、早めに処理を行ってください ・・・ 」


9 月のある月曜日、人事部からこんなメールが届きました ( 正確に言うと、「届いていたようです ・・・ 」といった方がいいかもしれません。その日はクライアントとの打ち合わせに忙しく、社内メールを見る時間などないため、全く認識していなかったものですから ・・・ )。


で、その翌日、ボス ( 私の上司: 日本人 ) から電話が入りました。


ボス 「タカシ、人事部からのレベル申請に関するメール読んだかな ? 」


私 「え ? 何でしたっけ ・・・ 」


ボス 「レベル申請の件だよ。でね、タカシもそろそろ、上のレベルにチャレンジしてもいいんじゃないかって思うんだけど、どうかね ? 」


わが社では、「レベル」と呼ばれる人事上の職階があります。レベルは 10 段階で、私は現在「レベル 8 」です。社員はスタッフとかマネージャーとか、いろいろな呼び名があるのですが、それらは「対外呼称」に過ぎず、社内的にはこの「レベル」という人事ランクしか存在しません。部門によっては、私より低いレベルでもマネージャーと称している人もいますし、その逆もあります。つまり、マネージャーとかそんな呼び名はどうにでもできるわけで、レベルの高い人が偉く、より高い給料をもらえるという仕組みになっています。

昇進したい !

実は、入社時の私のレベルは「 8 」でした。なので、入社して 2 年の間、私は全く昇進していないことになります。一方で、私とほぼ同時期に同業他社から入社したヨシオは、「レベル 9 」で入社しています。ヨシオの方が入社時の評価が高かったと言ってしまえばそれまでなのですが、私自身はそうは思っていません。個人的にはヨシオと大差ないスキル・経験・実績があったにもかかわらず、いかんせんヨシオの前職の会社の方が、私が前にいた会社よりも業界における地位が高かったために、このような悲しい結果になったと思っています(まぁ、これとて負け惜しみかもしれませんが ・・・ 詳細は、No.174 『郷に入っても従えない !? 』参照のこと )


そういう経緯もあり、私は一日でも早く「レベル UP 」をはかりたいと思っていました。


私 「ぜ、是非チャレンジさせてください ! 」


ボス 「わかったよ、じゃ頑張って ・・・ それはそうと、タカシって、レベル 9 の条件満たしてたっけ ? 」


私 「へ ? 条件 ? 」


レベルは給料に直結するわけですから、上位のレベルを狙うためには、それなりの条件を満たしていなければなりません。


私 「経験プロジェクト件数とか、この 1 年の収益とか ・・・ そんなもんですかね ? 」


ボス 「それはもちろんだけど、それだけじゃないんだよ。条件一覧送るから、それと照らし合わせてみてよ」

申請の条件

早速、レベル 9 申請のための条件が送られてきました。


私 「どれどれ ・・・ 」


( 条件 1 )  自身が PM ( プロジェクト・マネージャー) として関与したプロジェクトが 5 件以上あること


( 条件 2 ) 直近 1 年の獲得収益が○千万円以上


これらの条件は、問題なくクリアできそうです。


( 条件 3 ) 直近 2 年に受験した TOEIC が 800 点以上


実はこれがクリアできないばかりに、レベル 9 に昇進できない人が、そこら中にゴロゴロしています。外資系企業とは言いながら、 30 代も半ばを越えて「 TOEIC 800 点」っていうのは、かなりキツイんですよね。この条件の過酷さはわが社でも有名なので、私は数ヶ月前に取得しておきました ( とは言うものの、805 点でしたから、超ギリギリだったのですが ・・・ 詳細は、No.260&261『TOEIC受験大作戦』参照のこと )


なーんだ、この条件なら申請できるじゃん ・・・ と思っていた私。しかしよく見ると、その下に「条件 4 」というのがあるじゃーーあーーりませんか !


( 条件 4 ) 申請段階において、下記の研修を受講済みであること


・経営戦略方法論研修 
・IT 戦略方法論研修 
・プロジェクト管理方法論研修 ・・・


そこには、レベル 9 を申請する前提となる「必須研修」の一覧が記載されていました。で、私はそれらの研修のうち、いったいどのくらい受講済みかと言いますと ・・・


「まだ 1 つしか受けとらんわーーーーーーー(T-T) ! 先に言えやーーーーーーーーー ! 」

「超荒業」でしのげるか ?

確かに、私とて ( 条件 4 ) を全く知らなかったわけではないのです。レベル 9 申請のためには、いくつかの研修を受講しておかなければならないことぐらい、わが社では常識的な話。でもね、普通にプロジェクトに入って仕事をしていたら、研修を受ける時間などないんですよ・・・研修は、長いものになると 1 週間ホテルに缶詰、なんてのもあります。実際問題として、 1 週間もプロジェクトを離れるわけにはいかんのですよ ・・・


では、忙しい人は一生昇進できないのかというと、そうでもありません。実はそういう人のために、「荒業」が用意されています。それは、「すべての研修を E ラーニングでしのぐ」という超荒業。しかし実際には、 1 週間缶詰の研修をEラーニングで代替しようというのですから、そんな簡単なものではないのです。各 E ラーニングには、セクション毎にめちゃくちゃ難しいテストやレポート提出が義務付けられており、大抵の場合、実地の研修に出た方が手っ取り早いケースが多いのです。


が、しかし、今回はそんなこと言っていられません。今週末の申請に間に合わせるためには、 E ラーニングしか残された道はないのですから。


私は、未受講の研修について、仮にすべてを E ラーニングでこなした場合、一体何時間かかるか試算してみることにしました。各 E ラーニングには、「 Standard Time ( 標準受講時間 )」というのがあって、完了までにかかる時間の目安を提示してくれています。


「Standard Time = 50 hrs (50 時間 )」となっている場合、テスト合格・レポート提出までに約 50 時間かかることを意味します。ここで注意しなければならないことがあります。1 つは、 50 時間というのは、あくまでも「きっちりと」やった場合であって、テキストをすっ飛ばしてやれば、実は半分ぐらいの時間でできるのです。その反面、テキストはすべて「英語」なので、日本語でやるのに比べて 1.5 倍ぐらいかかります。


「Standard Time × 0.5 ( 間をすっ飛ばすから )× 1.5 ( 英語だから )」、つまり実際にかかる時間というのは、標準時間の 0.75 倍というのが現実的なところです。


「未受講研修の Standard Time 総合計はと ・・・ 50 + 75 + 25 +50 ・・・= だいたい 400時間ぐらいか ・・・ 実際には、その 0.75 倍かかるから、 300 時間 ・・・ 日に直せば 12.5 日か ・・・ って、できるか、こんなもーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん(T-T) ! ! ! 」


未受講の E ラーニングは、全く睡眠をとらないと仮定して、 2 週間ぶっ通しでやっとできる量 ・・・ とても今週末に間に合いそうにありません。トホホ ・・・ 私は早速、ボスに連絡して、次のように告げました。


私 「今回のレベル申請の件ですが ・・・ 準備が間に合いそうにないんで、次回(半年後)にお願いします ・・・ (T-T)」


ボス 「あ、そう ・・・ そりゃ残念だね。ま、次回頑張って ! 」


私 「・・・ (T-T) ・・・ (T-T) ・・・ (T-T) ・・・ (T-T) ・・・ (T-T) ・・・ 」(いつまで泣いとるんじゃ、わしは ! )


さて、今回の一件を通して、私はいくつかの「教訓 ( Lessons Learned ) 」をみなさんにお伝えすることができます。それらは、外資で生き抜くための必須要件なのですが ・・・ この続きは次回のコラムでお話しすることにいたしましょう。


( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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