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タカシの外資系物語

「なんじゃコリャ」に勝てるか ?2005.09.27

世界柔道の不思議

少し前の話になりますが、みなさんは『世界柔道』をご覧になりましたか ? いやぁー、面白かったですねぇ … 最近は柔道だけでなく、陸上や水泳などの世界大会についても、TV で積極的に報道されるようになってきて、オリンピック以外でも世界レベルの白熱した試合が TV 観戦できるようになりました。


実は私、学生時代にほとんどスポーツをしてこなかった ( 今もそう ・・・ )のですが、柔道だけは経験があるのです。それも体育の授業とかではなくて、きちんとした「部活」で、です。こう見えても、黒帯 ( 初段 ) の腕前。私をよく知る人からは、「そもそもタカシがスポーツなんて ・・・ それも柔道で黒帯だって ? 信じられんな ・・・ 」と言われます。しかし本当なんですよ、これが。


そもそも数あるスポーツの中で、どうして柔道を選んだかというと、中学時代に転校をしたとき、転校先の担任の先生が柔道部の顧問で、「お前、ヒマなら柔道やれ。その歪んだ精神を鍛えなおしてやる ! 」なんて言われて、無理やり入部させられたような気がします。別に不良でツッパっていたわけでもないのに、「歪んだ精神」と決めつけられてしまうところが、斜に構えた私の性格を象徴していて悲しいのですが、これでも当時はそれなりに頑張って練習したような気がします。強豪ひしめく奈良県の大会で、軽量級のベスト 8 まで進んだこともあるので、自分で言うのも何ですが、わりと強かったのだと思います。


というわけで、私は柔道についてはかなりうるさいのです。今回の大会、井上康生選手・谷亮子選手が出ていなかったのは残念ですが、男子では鈴木桂治選手と泉浩選手、女子では奇跡の復活を遂げた薪谷翠選手など、非常に見所の多い大会だったように思います。


で、世界柔道を見ていて 1 つ気付いたことがあります。日本選手とヨーロッパや南米の選手の試合を見ているとよくわかるのですが、「なんじゃコリャ ? 」みたいな技で日本選手が負けるケースが多かったように思いませんか?これって、一体何なのでしょうね ・・・ 。

なんじゃコリャ ? の技

朽木倒し、肩車、すみ落とし ・・・ 私が「なんじゃコリャ ? 」と言っているのは、こういう技のことです。一方、柔道らしい「キレイな技」というのもあって、大外刈り、内股、払い腰、背負い投げ ・・・ みたいな技のことを指しています。


「キレイかどうかなんて関係ない。要は、勝ちゃいいんだろ、勝ちゃ ・・・ 」という方もいるかもしれません。しかし、そうじゃないんです。これは私が柔道にうるさいから言っているわけではなくて、両者の違いは、だれが見ても一目瞭然。キレイな技は「一本 ! 決まったぁ ! 」って感じがするのですが、なんじゃコリャ系の技は「そんなのアリ ? 」「今の、反則じゃねぇの ? 」って 100 人中 99 人の人が感じるぐらい、何ともうさんくさい技なんです。しかし柔道というのは、基本的には背中をついて畳に倒れてしまった方が負けになりますから、どんな技であろうと、負けは負けなんですがね ・・・ 。


日本人がこれらの技をうさんくさく感じる最大の理由は、「組み手がしっかりしていないから」だと思われます。「組み手」というのは、右手で相手の襟の辺りをつかんで、左手で相手の肘辺りをつかむことを言います ( 右利きの場合 )。右手を上に、左手を下に向かって力をかければ、相手はバランスを崩すので、そこから足を引っ掛けたり、投げ技を展開したりするのが、典型的(教科書的)な柔道の攻め口です。柔道についてほとんど知識がなかったとしても、日本人の多くはこのような組み手が柔道の基本になっていることを理解しているので、組み手をしない技(力任せの強引な技・タックルみたいな技)を見ると、妙にうさんくさく感じるのです。

「邪道」に負ける

また、イメージ的にうさんくさいというだけではなく、組み手を組まないのは「邪道」という意識も根強くあります。現に、世界柔道の解説をしていた篠原信一さん ( 元・五輪銀メダリスト ) も、「単に勝負に勝つのではなく、 2 つ取って勝って欲しい (「 2つ取る」というのは、両手の組み手をしっかり持つという意味 )」としきりに言っていました。


私が柔道を習い始めたときのことを考えても、「まず組み手 ・・・ 」という意識は非常に強いものでした。主審が「はじめ ! 」と言えば試合は始まっているのですが、実際には、両者がお互いに組み手を持つまでは、試合は始まっていないようなものなのです。組み合うまでにトリッキーな動きをして、たとえポイントを得たとしても、「お前は柔道の礼儀がなっていない ! 」などと言われ、あとからボコボコに怒られるのがオチです。「組み合うことこそ柔道の礼儀」というのは、日本全国、どこの指導者でも同じです。ですから、日本の柔道選手の多くは、両手を組み合ったところからでないと試合は始まらないという錯覚をおこしています。なので、外国人選手がいきなり、なんじゃこりゃ系の技で来ると、対応できずに負けてしまうのです。


両手をしっかり組んで試合ができれば、日本の選手は 90% 以上勝てると思います。しかし、現実には、世界柔道で金メダルを取れたのは、男女合わせて、たったの 3 つです。それ以外のほとんどは、なんじゃこりゃ系の技に屈してしまいました。「実力は勝っているのに、惜しい ! 」 ・・・ でも、これって、本当に「惜しい」のでしょうかね ?

「型」にこだわって負ける日本

柔道、ノート PC 、ウォークマン ・・・ 分野こそ違っても、これらは「日本発でグローバル化したもの」です。しかし、そのいずれもが、グローバル化の荒波の前に屈しているような気がします。なぜか?それは、まだグローバル化していなかった古きよき時代の「型」にこだわりすぎたからなのではないかと思います。


例えば SONY のウォークマン。もちろん、ウォークマンの元祖はカセットテープを媒体としたものでした。媒体が CD に変わろうが、 MD に変わろうが、基本的には媒体を交換することによってしか、中身を変更することはできませんでした。今私が聴いている曲を、隣のだれかが聴くためには私と同じ CD を購入するなり、 MD に録音するなり、それなりの ( 面倒な ) アクションが必要だったのです。なので、ウォークマンというのは、基本的には個人という閉じた世界での消費財に過ぎませんでした。つまり、自分が持っている媒体 ( CD やテープ ) を聴いて、機械が古くなったら買い換えてもらうというのが、ウォークマンという製品の「型」( = ビジネスモデル ) だったのです。


ウォークマンのビジネスモデルは鉄壁のように思えました。なぜなら、外出先でヘッドフォンをして音楽を聴くというライフスタイルは、若者を中心に完全に定着したからです。しかし、ビジネスモデルの破綻は思いも寄らぬところで起こりました。媒体である CD そのものが売れなくなったのです。原因は、ネット配信による音楽、物理的な媒体を必要としない音楽が急速に浸透したことにあります。


SONY はレコード会社 ( 音楽レーベル ) としての側面もありますから、この市場の変化に真っ先に気付くべきでした。しかし、現実には i-Pod のアップルなどに遅れをとる形となり、シェアを大きく奪われる結果となってしまったのです。


SONY 敗北の最大の原因は、「型」にこだわりすぎたことでしょう。カセットテープや CD といった目に見える媒体に比べると、ネット配信音楽は、当初は一部のマニアだけの「なんじゃコリャ」系のメディアでした。しかし、われわれ消費者にとってみれば、外出先で手軽に音楽が聴ければ何でもいいのであって、「正統派」だろうが、「なんじゃコリャ」だろうが、どうでもいいことなのです。


柔道の世界と同様に、ビジネスの世界もまた「勝ち負け」がはっきりわかる世界です。自分の信じるやり方ですっきりと勝つのがベストですが、やり方にこだわるあまり、勝負に負けていては話になりません。独りよがりにならずに、常に大きな視点で大局を読めるか。そして、自分の「型」を臨機応変に変革し、ときには捨て去ることができるか。100% の確率で組み手を持って勝つことができない以上、ときには「なんじゃコリャ」という技を使ってでも勝たねばならないのだと思います。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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