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タカシの外資系物語

自分の会社を言えますか ?2005.08.02

自分の会社が言えない

外資系企業に勤めていると、日系企業時代とは異なった振る舞いをしている自分に気付くことがあります。例えば、だれかと知り合いになって、その人から「どこに勤めているのか ? 」と尋ねられたとき。


「タカシさんはどちらの会社にお勤めなんですか ? 」


「いや、ちょっと … 」


ちょっと … 、では相手もよくわからないわけで、こんな場合は、さらに突っ込まれます。


「どんな種類の仕事なんですか ? 」


「コンピュータ関係 … かな ? 」


かな ? … と聞き返されても相手も困るわけで、相手はより一層激しく突っ込んできます。


「もしかしたら、ベンチャー企業の経営者とか ? 実はすごいんでしょ ? 」


「 … ごく普通のサラリーマンなんですけど … トホホ ・・・ ( 全然すごくないんじゃーー ! これ以上、イジめんといてくれやーーー(T-T) ! )」


なぜ自分の会社の話をすることを避けるのかというと、一番の理由は、説明するのが面倒だということが挙げられます。私の場合は、「外資系」かつ「コンサルティング会社」という、かなり特殊な業種であるため、一般の方にその内容をお伝えするのに骨が折れるのです。例えば、「外資系」と言った瞬間に、英語がペラペラなんだろうとか、給料が高いんだろうとか、その手の話題を持ち出されます。実際には、英語が不得意で、給料もそれほどではない私にとっては、この段階で「もう勘弁してくれよ ・・・ トホホ ・・・ 」ということになります。次に「コンサルティング会社」というと、「コンサルタントって、頭いいんでしょ ? 何でも教えてくれるんでしょ ? 」などと言われることが、よくあります。それにも当てはまらない私は、回答に困ってしまうのです。

自己紹介=仕事 ?

一般に、外資系企業に勤める人の多くは、自分の仕事や会社に関する話をするのを嫌う傾向にあると思います。なぜか ? それは、日本人と欧米人の仕事に対する考え方の違いが大きな理由だと思います。


日本人というのは、相手に自分を紹介する場合に、自分がどこに勤めているかということも含めて話します。紹介される側も、「へー、商社にお勤めなんですかぁ ・・・ 」「弁護士さんでいらっしゃるんですね ・・・ 」などと、その人の職業のみで、その人の人柄まで判断してしまう傾向にあります。つまり、自分の職業と勤めている会社名を告げた瞬間に、自己紹介はほぼ終わってしまっているようなものなのです。銀行員だから真面目なんだろうとか、マスコミに勤めているから派手なんだろうとか、そりゃそれなりに当たっているのかもしれませんが、全員がその通りのわけはなく、極めてステレオタイプ的・一面的な見方でしかありません。


日本人がこのような対応をとる理由は、他人が自分と同じ ( ないしは、どこが違うのか ) ということを、できるだけ手っ取り早く認識したいからなのです。例えば、仮に私が銀行員だったとしましょう。A ・ B ・ Cさん 3 名から、それぞれの職業を聞いた私は、一体何を考えているのでしょうか ?


A さん 「私はメーカーに勤めています」( 私 「メーカーなら給料は負けてないはずだ。こっちが主導権持って、話ができそうだぞ ・・・ 」)


B さん 「私は商社に勤めています」( 私 「うーーむ、商社マンにはかなわないだろうなぁ ・・・ 英語もペラペラだろうしな ・・・ ちょっと様子を見ながら話してみよう ・・・ 」)


C さん 「私は医者です」( 私は 「こりゃダメだ。オレとは世界が違う ・・・ 」)


この結果、私は A さんとは好意的に話す一方で、B さんとはやや警戒しながら話し、 C さんにはとっつきにくい印象を持ちます。つまり、相手の職業によって、自分が付き合うべき相手はだれなのか ( または、自分が主導権を握れそうな相手はだれなのか ) ということを瞬時に判断しているのです。


一方で、欧米人にとっては、相手の仕事やどこに勤めているかということは、それほど大きな問題ではありません。欧米人は、趣味・嗜好、物事の考え方、宗教など、あくまでも総合的に相手を判断するのであって、職業はそれらのうちの単なる一要素に過ぎないからです。外資系企業にもその考え方は受け継がれており、彼らが自分の職業について多くを語らないのは、このようなところからきているのです。

周囲に内緒で、お金だけ欲しい !

以上のような、日本と欧米の考え方の違いは、貧富の差の大小にも影響を受けていると思います。日本社会というのは貧富の差がほとんどなく、その違いは職業による給料の差でしかありません。なので、他人との違いをことさらに職業で表現しようとしがちなのです。


一方で、欧米社会というのは、貧富の差が非常に大きく、ちょっとやそっとでは上に上がれないようになっています。また仮に、アメリカン・ドリーム的に上流階層にのし上がった場合でも、それをことさらに誇示するような文化はありません。


この違いは、日本の長者番付を見るとよくわかります。日本社会において高額所得を得た人は、多くの場合、それを周囲に誇示しようとしがちです。これは、日本という差がつきにくい社会において、いかに自分が頂点を極めたかを示したいがための行動に他なりません。一方、日本の長者番付の中には、外資系企業に勤める人も何人か含まれます。しかし彼らは、表舞台に出てくることを拒む傾向にあります。なぜなら、高額所得であることはあくまでも個人的な話であり、公衆で話題にするようなことではないからです。昨年の長者番付 1 位になった投資顧問会社の部長さんも、このような外資の考え方を持った人だと思います。


外資の人間にとっては、「自分が大金を手にすること」自体が重要なのであって、そのことが外部に知らされることについては、ほとんど意味がありません。「社長賞で賞金 10 万円」ならば、「社長賞」はいらないから、「賞金 10 万円」だけ欲しい、というのが外資の考え方です。日系企業においては、賞金 10 万円もさることながら、社長賞という名誉にこそ価値が見出されるケースが多いように思います。


結局のところ、自分がいかに幸せであるかということが重要なのであって、他人からどのように思われようが、関係ない ・・・ というのが外資の考え方です。「外資の人って、なんとなくとっつきにくくい感じがする」と思われているみなさん、それには以上のような理由があったのです。日系と外資系、どちらがいいとは言えないのですが、個人的には外資の考え方が好きです。勤めている会社で、自分の人間性まで判断されるのって、やっぱりおかしいと思いませんかね ?

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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