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タカシの外資系物語

ステコミでチェンマネ ?2005.06.07

ステコミって何 ?

「ケンジーー、ステコミの資料できたかなぁ ? 」


「あっ、そう言えばすっかり忘れていましたね。まだ全然手をつけてませんよ。弱ったなぁ … 」


現在私が PM ( プロジェクト・マネージャー ) をしているプロジェクトでは、月に一回、「ステコミ」こと「ステアリング・コミッティ」を実施しています。


そもそも「ステアリング・コミッティ ( steering committee )」とは何なのか ? 辞書を引くと、「運営委員会」と出ています。ステアリング( steering )というのは、「操縦・舵取り」という意味ですから、まぁ「プロジェクトの舵取りをする会議」みたいな感じでしょう。元来私は言葉を略すのが大嫌い (No.205 『略すな ! 』参照 ) なので、正確に「ステアリング・コミッティ」と言いたいところなのですが、あまりにも長いので「ステコミ」と言ってしまっています。なんか、「捨てゴミ」みたいで語感がいまいちなのが気になっているのですが。


実際の位置づけとしては、プロジェクト・オーナー ( 当該プロジェクトの最高責任者、役員レベル ) 同席のもと、以下の内容について議論することになります。


( 1 ) プロジェクトの進捗状況報告 
( 2 ) 担当者レベルでは決められない重要事項の決定


このうち、特に重要なのは ( 2 ) です。プロジェクトを進めていくと、担当者レベルではどうしても決められないことというのがあるもんでして、そういうときに、ステコミの場を使って、どんどん決定していくのです。

その場で意思決定できるか ?

ケンジ 「でもね、タカシさん。そんなダイナミックな意思決定ができる経営者なんて、日本にはほとんどいないじゃないっすか。せっかくステコミを開催しても、自分じゃ何も決められないんだから、意味ないですよ … 」


ううむ、するどい … 確かにステコミの場で、物事をバシバシと決めていくような役員は、まずいません。ステコミ決定事項の大半は、事前に根回しされて、ステコミが開催される段階では、すでに何らかの決定がなされていることの方が多いのです。一方で、事前に根回ししても決められないようなこと、特に会社の経営戦略そのものに関わるような事項については、そもそもステコミには議題として持ち出されずに、経営会議など別の機会に決められることになります。つまり、プロジェクトの舵取りをする会議とは言っても、それは形式的なものにすぎず、舵取り自体は別途行われていることになります。


ケンジの言うように、日本企業における意思決定プロセスなんてのは、たいていこんなもんでして、役員だからといって、その場で即断即決の意思決定ができるわけではありません。これは余談ですが、最近よく、「すごい会議をする会社」「会議の仕方がうまい会社」なんてのが、マスコミや本などで頻繁に取り上げられるようになってきました。その内容を見てみると、「即断即決」とか、「 2 分で結論を出す」とか、確かにすごい内容なのですが、これは会議のやり方がすごいんじゃなくて、決めている経営者 ( 多くの場合、カリスマ的なワンマン経営者 ) がすごいというだけのことのように思えます。逆に言うと、意思決定の早い経営者・役員というのは、どのような会議形式であろうと、もっと言えば会議があろうとなかろうと、決めるべきものはドンドン決めていくのではないかと思います。そう考えると、私がプロジェクトで月一回実施している「ステコミ」というのは、全くもって形式的なもので、あまり意味がないようにも思えてきます。

それでも「ステコミ」をやる理由

ケンジ 「いっそのこと、ステコミなんてやめてしまいません ? 役員への報告なら、お客さんの方でやってもらえばいいわけですから … こんな形式的な報告会に時間を取られるぐらいなら、プロジェクトを進めるように力を入れましょうよ ! 」


ううむ、確かに … でもねケンジくん。そうもいかん理由がいくつかあるんだよ、これが ・・・


( ステコミをやる理由 1 ) - 経営層にアピールする 
ステコミには、お客様の役員レベルだけでなく、私の会社からも私の上司にあたる役員が参加します。つまり、プロジェクトに関わるすべての利害関係者が参加する中で、その進捗状況や課題を議論するわけです。私たちコンサル会社にしてみれば、「契約通りに作業をしていますよー ! 」ということを、お客様の経営層にアピールできる絶好の機会です。またお客様側の担当者にしても、自分の活躍を役員に知ってもらう機会ですし、それは私も同じです。私だって、自分の上司と話す機会などほとんどないわけでして、そういう意味では、ステコミが唯一のアピールの場と言っても過言ではありません。


( ステコミをやる理由2 ) - 経営層が、自分の言葉で訴えかける 
どんなプロジェクトでもそうですが、単にスケジュール通りに作業を進めることだけが目標ではありません。プロジェクトへ参加を通して、仕事のやり方や意識変革を実現すること、それこそが経営層が狙っている真の目的だったりします。これを一般に、「チェンジ・マネジメント」といいます ( ちなみに、これを略すと「チェンマネ」です。なんか「チェンマイ」みたいで、辛ーいタイ料理を思い出すのは私だけでしょうか )。


社員にチェンジ・マネジメントを期待するなら、経営層自らが変革しなければなりません。「あの役員、なんか変わったな。やる気満々だな」と思わせるためには、自分の思いや会社の方向性を、自分の言葉で社員に語りかけることが何よりも有効です。役員と一般社員というのは、普段ほとんど話す機会がないのでしょうから、ステコミの場を活用することで、大いにコミュニケーションをはかればいいわけです。

チェンマネは、常務から …

ケンジ 「はぁーー。そんなもんですかねぇ … 僕には単なる形式的な報告会にしか思えないんですが … 」


タカシ 「ま、そう言わずにさ。ステコミのときには、そういう観点で役員さんを見てみるといいんじゃないかな … 」


さて、ステコミ当日です。


タカシ 「 … というわけで、作業進捗につきましては、要件定義作業が 1 週間程度遅延しているものの、後続作業に大きな影響は与えないと思われます。また、来週からはいよいよ、現場担当者のみなさんへ説明作業が始まります。現場では、今回の情報化に対する反発が大きいと聞いています。私どもでも十分に留意した上で説明作業を実施いたしますが、役員のみなさまからも、現場に対するケアをお願いいたします。では、○○常務様、一言いただけますでしょうか ? 」


○○常務 「プロジェクトも、それなりに順調に進んでいるようで何よりです」 
… ふんふん …


○○常務 「来週からの現場説明会は、前半の山場です。頑張ってください」 
… それで ? …


○○常務 「最近、蒸し暑くなってきましたが … 」 
… ん ? …


○○常務 「体を壊さないように、頑張ってください。以上」 
って、それだけかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい ! チェンマネはどないなったんやーーーーーーーーーーー ! もっと、気の利いたことーーーーー言えやーーーーーーーー ! 自分の思いを伝えろやーーーーーーーーーーーーー ! おらおらおらーーーーーーーーー ! ハァハァハァ …


ケンジ 「 … ( ジロリ ! )」


うっっ ! そんなににらむなよ … ま、徐々に、常務自身もチェンマネされていくはずだからさぁ …


みなさんも、ステコミに参加される際には、是非主体的に取り組んで、自分をアピールするとともに、自己変革のための機会にしてくださいね … それにしても、いまいちな「捨てゴミ」 … いや、「ステコミ」だったなぁ … トホホ …

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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