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タカシの外資系物語

降格人事ヲ命ズ ( その 2 )2005.05.25

退職します !

前回の続き )日系の銀行から外資系企業に転職後、それなりに順調 ( ? ) に昇格をしてきた私。しかし、あまりの激務から「燃え尽きる」一歩手前の状態になり、今後の身の振り方を考えていました。そんな矢先、ヘッドハンターから現状の給料の 1.3 倍のオファーがあり、私はそれに乗ることに決めたのです。つまり、転職の決意を固めたわけです。


私はまず、T 部長に話をすることにしました。部長とは言っても、私が勝手に「部長」と呼んでいただけで、社内における正式なランクは「パートナー」といいます。パートナーは、ある事業分野での収益責任を持っていますが、日本の部長のように、明確な組織の「長」というわけではありません。プロジェクトによっては、自分の配下のスタッフが異なる ( その都度変わる ) ケースもあり、特定の部下を管理・指導するという責任はあまりありません。


T パートナーは私が関与しているプロジェクトの責任者でしたが、私個人という意味では、あまりつながりはありませんでした。一方で、私個人について責任持って管理してくれているパートナーが他にいるかというと、これもいないのです。外資系企業というのは、組織が柔軟な反面、いざというときに相談すべき上司が不明確な部分があるように思います。


タカシ 「T 部長、ちょっと話があるんですが ・・・ 」


T パートナー 「何かな ? 忙しいから手短かにお願いしたいんだけど ・・・ 」


タカシ 「( か、感じわるっ ! ) あのー、実は来月末で退職させていただこうと思ってるんですが ・・・ 」


T パートナー 「あ、そう。退職ね。退職って ・・・ にゃ、にゃんだとぉーー ! 辞めるだとーー ! 」


タカシ 「別の会社から、いい条件の話をいただいているもんで ・・・ 」


T パートナー 「いやね、あなたがどこに転職して、いくらもらおうが知ったこっちゃないんだけど ・・・ M 銀行のプロジェクトはどうするんだよ ! 」


・・・ それこそ、知ったこっちゃない。私に任せきりで、私の後任を育ててこなかった、あんたの責任じゃねぇか ・・・ 

T パートナー 「正直言うと、今辞められると困るんだよ。条件面では可能な限り譲歩できると思うんだけど・・・ ちなみに、その会社はいくら出すって言ってんの ? 」


タカシ 「 XXX万円です」


私は正直に、オファーされている本当の金額を言いました。なぜなら、今の会社のマネージャー・レベルでは、到底もらえるような金額ではなかったので、譲歩などできないと思っていたからです。


T パートナー 「うーーん ・・・ ちょっと社長に相談してみるよ。また連絡するから ・・・ 」

 

社長との直接交渉

あーーあ、とうとう転職か ・・・ 席に戻ってしばらくボーーッとしていると、 T パートナーから電話がかかってきました。えらい早い対応やな ・・・


T パートナー 「すぐに社長室に行ってくれるかな。社長と直接話して欲しいんだけど ・・・ 」


なぬーーー ! 社長と直接やとーーーーーーーーー ! 何してくれんねん、このおっさん。社長に直接交渉せぇって、んな無茶なーーー。


とは言いながら、すでに退職の決意を固めた人間というのは、予想以上に強いものです。社長に説得されようが恫喝されようが、給料 1.3 倍の方がいいに決まっているわけで、私は開き直った心境で、社長室のドアを叩きました。


社長 「あぁ、タカシさん久しぶり。どう ? 元気でやってるの ? 」


タカシ 「は、まぁ ・・・ 」


社長とは、 M 銀行へのプレゼン以来ですから、半年ぶりぐらいです。開き直って部屋に入ったものの、やっぱり威圧感あるなぁ、このおっさん ・・・


社長 「パートナーの T さんから聞いたよ。で、その会社はいくら出すって言ってんの ? 」


タカシ 「 XXX 万円です」


社長 「あ、そう。じゃ、私からあらためてタカシさんにオファーを出すよ。 XXX万出すから、うちに残ってくれないか」


タカシ 「ええっ ? 」


こりゃまた、予想外の展開です。そーくるか、このおっさん ・・・ 私は一瞬考えたのですが、すぐに結論を出しました。「残ろう」と。「ゲンキンなやっちゃなー!」と思われるかもしれませんが、私が転職しようと思っていた一番の理由は給料面の話なわけで、それが折り合えば、辞める理由などありません。確かに激務からくる燃え尽き症候群には対応する必要がありますが、転職したからといって仕事が楽になるわけじゃなく、かえって気苦労も多いような気もします。それなら、 XXX 万円を心のよりどころにして、このままこの会社で頑張った方がいいような気がしたのです。

上司を変えてください !

タカシ 「わかりました。それでは転職せずに残りたいと思います。ただ、残るに際しては、給料面以外にもお願いしたいことがあるのですが ・・・ 」


社長 「何かね ? 」


私はこの際なので、いくつかのお願いをすることにしました。1つは、コーポレートカードが欲しいということ。コーポレートカードというのは、会社の経費でカードが使えるというもので、当時はパートナーのみが所有を許されていました ( その後、全面廃止になったのですが )。私はパートナーではないので、当然コーポレートカードは持たせてもらえなかったのですが、実は非常に必要としていたのです。それは、当時関与していた M 銀行のプロジェクトが、ロンドン・ニューヨークなど、グローバル規模で行われていたため、滞在しているスタッフのアパート代などの決済が、かなりの金額になっていました。私個人のクレジットカードでは、カードの限度額ぎりぎりのケースもあったので、コーポレートカードが欲しかったのです。


もう 1 つは、 M 銀行プロジェクトの責任者を、 T パートナーから別の人に代えて欲しいということ。 T パートナーは、クライアントとの相性が最悪で、私が疲れた原因の大半は、 T パートナーの尻拭いをしていたためでした。 T パートナーはグローバル規模の大きなプロジェクト管理の経験もなかったので、そういう経験が豊富な人に代えて欲しいとお願いしたのです。


社長 「だれか、いい人いる ? この人推薦しますとか ・・・ 」


タカシ 「 H パートナーがいいと思います」


私は H パートナーとの付き合いはほとんどなかったのですが、彼は大規模プロジェクトの経験も豊富で、部下の面倒見もいいということで、社内では若手のホープと目されていました。


結局、私が給料以外でお願いしたことのうち、コーポレートカードの件は実現されませんでした。ま、特殊な事情があるとはいえ、マネージャーごときに青天井のコーポレートカードなど渡してしまったら、何をされるかわかりません。私が社長だったとしても、 OK は出せないような気がします。もう1 つの件、 H パートナーへの変更の件は、あっさり通りました。 H パートナー自身も、銀行分野に進出したいと考えていたようで、両者の思惑が合致したわけです。しかし、この変更が、あとあとややこしい問題を生むことになるのですが・・・

4 ランクの Skip

社長 「じゃ、引き続き頑張ってくれよ。何かあったら、直接オレに言っていいから」


タカシ 「ありがとうございます。では、失礼いたしま ・・・ 」


社長 「あ、そうそう。本日をもって、タカシさんのランクを、シニアマネージャー B にということにしたから。そうしないと、 XXX 万円なんて出せないんだよ。ということで、よろしくな ! 」


タカシ 「は、はぁ ・・・ ( い ? なんとねーーーーーーーーーーーー ! )」


こりゃ大変なことになったな・・・ 昇格前の私のランクは「マネージャー B 」です。それが「シニアマネージャー B 」になったということは、マネージャー C ・ D ・シニアマネージャー A を飛び越えて、何と 4 ランクのスキップ ( Skip ) をしたことになります。 2 ランクのスキップなら、ときどき見かけるのですが、さすがに 4 ランクなど聞いたことがありません。それも、定例の昇格プロモーション時期 ( 10 月 ) 以外の昇格など、前代未聞です。


私としては、ランクはマネージャー B のままで、給料だけ XXX 万円欲しかったところなのですが、そうは問屋が卸しません。ま、そりゃそうでしょうな。会社としても、給料に見合うだけの職務を与えなければ、単に「ゴネたもん得」みたいに思われていまします。


ま、いいや。社長がシニアマネージャーだって言ってるんだから、俺はシニアマネジャーなんだ ! まさに外資系らしい人事じゃねぇか。何か不正を犯しているわけでも何でもありません。経営者である社長が決めたことなのですから、私がシニアマネージャーになったことは、会社全体が認めたのと同じことなのです。よし、頑張ろう ! 私はこの現実を受け入れ、心機一転頑張ることを心に誓いました。


翌日会社に来てみると、机の上に新しい名刺が置いてありました。「シニアマネージャー 奈良たかし」 対応はやっ !  会社の LAN 上にある「社員リスト」のランクも変更されていましたし、シニアマネージャー以上のメーリングリストにも、ちゃんと名前が載っていました。


「さすが社長、やること早いね ! 」

それに加えて、いくつか、あまり付き合いのない人から、次にようなメールが来ていました。


「シニアマネージャー タカシさん ご昇進おめでとうございます。いったいどんな手を使うと 4 ランクのスキップなんてできるんでしょうか。是非、ご教授ください・・・ 」


・・・ 何が言いたいねん ・・・ この手のイヤミ・誹謗・中傷が今後もあるのかと思うと、気が重くなります ・・・ 憂鬱な気分で仕事をしていると、 H パートナーから電話がありました。


H パートナー 「あ、タカシさん ?  おまえ、社長と何話したんだよ ?  なんか、大変なこと言ってくれたみたいだな ! 」


タカシ 「へ ? 」


H パートナー 「とにかく、今すぐのオレの部屋来てくれよ ! 」 ガシャン ! 
・・・ トホホ ・・・ 何のことだろ ・・・。

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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