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タカシの外資系物語

外資系の DNA2005.04.19

DNAって、何 ?

大手証券会社である日興コーディアルグループには、「証券 DNA 」という言葉があります。証券 DNA というのは同社の造語で、投資家に対する運用手法や企業への財務戦略の提案、商品開発力などを指すとのこと。金融機関同士の大規模な合併や一攫千金を狙った M&A の仲介などではなく、証券会社が持っている本来の姿 ( = DNA )で生き残っていこうという、同社の決意が見事に表現された内容になっています。


一般に企業の社風 ( カラー ) を表現する際、「その会社の DNA・遺伝子を受け継ぐ」という言い方がよく使われます。日系企業においても、トヨタや松下、 SONY や財閥系の三菱グループなどを語る際には、よく DNA という言葉が使われます。では、企業における「DNA ( 遺伝子 )」というのは、一体何なのでしょうか ?


そもそも、 DNA とか遺伝子というのは何者なのでしょう。 DNA の正式名称は「 Deoxyribo Nucleic Acid」=「デオキシリボ核酸」といいます。アデニン( A )、チミン( T )、シトシン( C )、グアニン( G )という 4 つの塩基が二重螺旋で組み合わさって、人間を含むすべての生物の体の元を構成しているのです。で、その 4 つの塩基は、 RNA (正確には RNA の中の「伝令 RNA 」) というのを通じて子孫に伝えられます。遺伝情報が RNA に転記される際には、チミンの代わりにウラシル ( U ) という塩基が置き換わって、 A・U・C・G がそれぞれの組み合わせで、子孫に親の遺伝子を伝えていくわけです ( 高校時代に習った、うろ覚えの知識で書いていますので、細かい点は突っ込まないでくださいネ )。

A・T・C・G 塩基をタイピングせよ

これはめちゃくちゃ余談なのですが、みなさんは「英文タイプ」の講習を受けたことがありますか ? 私は大学時代に、冬休み中の特別講習として受講したことがあります。当時は、国際派ビジネスマンを目指していた ( 今もそうですが ・・・・・・ ) ものですから、ブラインド・タッチ ( キーボードを見ないでタイプすること ) くらい軽く出来ないと困るだろうと思っていたわけです。必修科目にはほとんど出席しないくせに、こういうチャラチャラしたものは積極的に受講していたんですね。だから卒業時に単位が足りなくて困ったわけですが ・・・・・・


英文タイプでは、両手の親指以外の指については、「定位置 = 担当」が決められています。キーボード 2 列目の順に、左手の小指から「 A・S・D・F 」、右手の人差し指から「 J・K・L 」、常にこれらのキーの上に指を置いておくわけです。講師の先生の「エー、エス、ディー、エフ、ジェイ、ケー、エル ・・・・・・ 」の掛け声に合わせて、まずは指慣らし。「よーし、エー、エスと、あ、あれ ? 」 なんと、私が借りているタイプライター、どうも「 S 」のキーが異様に重いっちゅうか、固いんです。それに加えて、「 S 」を担当している指は「左手の薬指」という、全ての指の中で極端に非力な指。「エ、エ、エェェェス、と ・・・・・・ ふー、こりゃ大変だ ・・・・・・ 」 他のキーは順調に押さえられるのですが、「 S 」だけは押さえるのが一苦労。紙への印字も、「 S 」の文字が弱々しく踊っています。


「じゃあ、次は順番を変えてやってみましょう。はい、ディー、エー、エス、ケー ・・・・・・ 」


「ディー、エー、エ ・・・ エェェェス、ケー ・・・・・・ と、ふーー」


「はい、ジェイ、エス、エー、エス、エス、エス、エス ・・・・・・ 」


「ジェイ、エ ・・・ エェェェス、エー、エ ・・・ エェェェス、エ ・・・ エェェェス ・・・・・・ ううっ、左手がつったぁ ! た、助けてくれーーっ ! 」


「だ、大丈夫かーーっ ! だれか、救急車を ! 早く、早くぅーーー」 ・・・・・・ って、ちょっとオーバーですが、まぁ、とんでもない目に遭ったわけです。


で、そのタイピング講習は今に活きているかというと、はっきり言って全く活きていません。そもそもタイピングなんてのは、完全に慣れですよ、慣れ。あんなもん練習しなくても、仕事で使っていれば、知らず知らずのうちに、ものすごいスピードで打てるようになるものです。

DNAを守るために必要なこと

話を戻しましょう。「 A・S・D・F 」ならぬ、「 A・T・C・G ・・・・・・ 」で構成されている DNA の話でした。企業における DNA とは何か。冒頭に述べたトヨタ等の日系企業だけでなく、外資系企業においても「 DNA 」は存在します。 IBM やディズニー、マクドナルドや GM ( ゼネラル・モーターズ ) にも、延々と受け継がれる DNA があります。しかし、日系企業の DNA とは、ちょっと趣が異なるような気がするのです。それは、なぜなのでしょうか。


外資系企業に勤めていて思うのは、「 DNA は存在しても、それをあまり感じさせない」ということです。例えば、仕事のやり方一つとっても、そのことがわかります。各人の仕事のやり方・進め方は、基本的に個人に委ねられており、ある人はAというやり方を、またある人は B という異なるやり方を採用しても、それについてとがめられることはありません。求められるのは「成果」であって、成果がその企業の DNA の思想を満たしてさえいれば、どんなプロセスであっても OK という考え方です。


一方、日系企業の場合は、自社の DNA の思想を満たすために、各人の仕事のやり方、それこそ箸の上げ下げにまで口を挟んできます。どうしてこんな作業が必要なのか不思議に思って上司に尋ねてみると、「それは昔からやっていることだから」という答えが返ってきたという経験が、みなさんにもあると思います。では、なぜ「昔からやっていること」を継続しなければならないのか。その理由は、昔からやっているのと同じようにやっておけば、かなり高い確率で自社の DNA を未来に引き継ぐことができると、頑なに信じられているからです。ですから、企業の DNA つまり企業理念や思想、それが言わんとしていることを理解していなくても、仕事のやり方を厳しく規定して、それを淡々と行うことだけに心血を注いできたわけです。


しかし、日系企業のこのやり方は、経済が右肩上がりの安定成長を前提として、ある程度「固定化」された状況でないとうまく機能しません。外資系企業の多くは、経済の安定成長が保証されていない「不安定」な状況を、日本より早く経験していたために、従来と同じ戦略では立ち行かないことに気付いているのです。ですから、業務の具体的な担い手である社員に大幅な権限を委譲することで、その時々の環境にマッチし、ときには環境自体を変えてしまうような施策を打ってきました。

環境変化への対応

もちろん、外資系とて DNA そのものをガラガラポンと、そっくり入れ替えるようなことはできません。「ヒト」が短期間で「トリ」のように空を飛べないのと同じことです。しかし、例えば「花粉症」を例に挙げて考えてみましょう。花粉症というのは、 30 年前にはなかった症状です。国土の緑化を進める施策において、スギをガンガン植えていった結果として生まれた、いわば行政による失敗の結果といえるものです。花粉症への対応を日本企業に当てはめてみましょう。日本企業は、自分を取り巻く環境を自分で変革するような行動には出ません。常にその場しのぎの「対処療法」でしかないわけです。なので、来年も再来年も、春先になるとマスクをした人が街に溢れかえり、一部の薬品会社が大儲けをするだけ …… ということを繰り返すわけです。


一方で、外資系企業なら、どう対処するでしょうか。おそらく、花粉症の原因となるスギそのものをひっこ抜いて、違う種類の木に植え替えると思います。または、花粉が飛んでこないところに引っ越すと思います。この違いは、日本人は定住型の農耕民族であり、欧米人は非定住型の狩猟民族であることに由来する部分もあるのですが、行動範囲が限定された原始時代ならいざ知らず、時代は今や農耕も狩猟もないグローバルな時代を迎えていることを忘れてはいけません。この対応の違いが、環境変化に対する柔軟性に大きく影響してくるわけですから。

企業の代名詞を捨ててでも ・・・・・・

自社の DNA を守るために、環境変化への対応をうまく行っている外資の例として、 IBM が挙げられると思います。 IBM も 90 年代初頭には、いわゆる大企業病に苦しんだわけですが、ルイス・ガースナーという経営者を外部から迎えることで、ハードウェアという「モノ」を売る企業から、「サービス」を売る企業に変革しました。最近、IBMの代名詞だったパソコン事業を、中国の新興企業に売却したのもその流れと言えます。私も銀行員時代から IBM の方とは付き合いがありますが、彼らの DNA は昔から一貫して変わりません。「情報化を通じて、顧客企業の発展に寄与する」 これだけです。以前はコンピュータというハードウェアを作って、納品していれば顧客は満足していたのですが、現在はコンピュータを使って業務をどのように行うか、どのように変革するかということが重要になってきました。それゆえに、 IBM はPC事業を売却して、サービス部門を強化したというわけです。


日本で成功した例としては、日産が挙げられると思います。日産も外部からカロルス・ゴーンという経営者を招いて変革を実施しました。その結果の V 字回復。日産の代名詞だった「スカイライン」がなくなったことに対して惜しむ声もありますが、日産の DNA はスカイラインでしか実現できないわけではありません。「昔から伝統的にやっているから」 そういう裏づけのない理由に固執していると、知らぬ間に企業そのものが傾いている ・・・・・・ なんてことにもなりかねないわけです。


「あいたたたたぁ ・・・・・・ 今日のタイピング講習はひどい目に遭ったな ・・・・・・ シップでも貼っとくか ・・・・・・ 」学生時代の私。日系企業よろしく、対処療法に終始していました。このときに


「すいません。このタイプライター代えてくれませんかね。“ S ” が固くて使いにくいんですよ。きっちり練習して、確かなスキルを身に付けたいんで ・・・・・・ お願いします ! 」


なーんてこと、言えばよかったんでしょうね。ま、私も自分の DNA を守るために、刻々と変わる環境変化にうまく対応していきませんとね ・・・・・・


ハ、ハ、ハックション !? また花粉がたくさん飛んでるぞ、こりゃ ・・・・・・ こうなったら、いっそのこと引っ越すか ? って、そんなこと無理だし ! マスク買ってこよっと ・・・・・・ トホホ ・・・・・・ 自己変革は、企業も個人も難しいようです、ハイ ・・・・・・

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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