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タカシの外資系物語

「裏」の評価体系を見抜け !2005.02.15

通信簿の評価項目

「ありゃりゃ、ちょっと目標に足りなかったにゃ・・・・・・ トホホ・・・・・・ 」


本日、US の本社から「Full Year 2004 Personal Results」というレポートが来ました。これは何かといいますと、要するに昨年の私の「評価実績レポート ( つまり、通信簿 )」なのです。


そもそも私はどのような項目でもって評価されているのでしょうか。送られてきた実績レポートの内容は以下の通り。


(1)Revenue ・・・ 「収益」のこと。昨年、どれだけの案件 ( プロジェクト ) を売り上げたのかということを示します。これには、私自身の売り上げ (Personal Revenue) と、私が所属する部門の売り上げ (Sector Revenue) の 2 つに分かれます。


(2)Utilization ・・・ 「稼働率」のこと。どれだけ稼動したか、つまりどれだけ働いたかということを示します。ちょっと補足しますと、これは単にタイムカード方式のように、「朝9 時に来て夜7 時に帰ったから 9 時間稼動(お昼の 1 時間含めず)」というものではありません。コンサルティング業務というのは、コンサルタントの「時間」を売ることでお客様からお金をもらっています。ですから、お金の裏づけがない労働( = その労働に対する対価をだれも支払ってくれないもの)は、Utilizationには含まれません。例えば、月150 時間労働・月単価100 万円の人に対して、80 万円の支払い(お金の裏づけ)があったとすれば、「稼働率 = 80%」となります。つまり、お金の裏づけがなければ、いくら頑張って働いても、「稼動した」とはいえないわけです。


(3)Knowledge Management ・・・ 社内スタッフへの教育や外部メディアへの情報発信など、「社内ナレッジへの貢献」のこと。


さて、2004 年初に立てた私の目標値はどうだったのでしょうか ? それに対する実績や、いかに ?


【2004年 タカシ実績評価レポート】


(1)Personal Revenue (目標) 100Myen(1億円ぐらいです) (実績) 106Myen


(2)Utilization (目標) 70% (実績) 62%


(3)Knowledge Management (目標) 社内研修講師 2 件、外部メディアへの情報発信 2 件 (実績) 何もしていない( ! )

「表」と「裏」の評価体系

冒頭で私が、「目標に足りなかった」というのは何を指しているかというと、(2)Utilizationのことを言っています。「あれっ?(3)も何もやってないじゃん、そんなんでいいの? 」と思われるかもしれません。いいんです。そんな暇なかったし、そもそもあんまりヤル気ないし・・・・・・ もちろん、(3)もクリアしている方がいいに決まっているのですが、(1)(2)が達成できていない段階で、(3)をどうこう言っても仕方ないのです。いわば(3)というのは、(1)(2)を達成した上での「オマケ」みたいなもんにすぎんのですな、これが。


オマケというのはどういうことかと言いますと、(1)(2)の評価が全く同じ2人がいた場合に限り、(3)の評価が活きてくるわけです。逆に言うと、(3)をどれだけ頑張ったところで、Personal Revenueが 1Myen でも、または Utilization が 1% でも高いほうがよっぽど評価されます。


外資における「数字の評価」というのは、まさにこういうことを言っています。しかし、会社は大っぴらに、「(3)はどうでもいいんだよ~。オマケだからね~。そんな暇あったら稼げよ~」みたいなことは言いません。そんなことを言ってしまったら、社内にナレッジが蓄積できなくなるからです。その証拠に、うちの会社の評価は、項目毎に以下のように配分されている、と人事部のポータルに出ています。


【「表」の評価体系】

- (1)のSector Revenue ・・・ 30%


- (1)のPersonal Revenue ・・・ 30%


- (2)Utilization ・・・ 20%


- (3)を含めたそれ以外の定性項目 ・・・ 20%


しかし、これはあくまでも表面的な評価体系であって、実際は違います。そもそも、「(3)を含めたそれ以外の定性項目」っちゅうのは、非常に怪しい。後述しますが、「定性評価」というのは、こと外資系においてはほとんど存在しないと思ったほうがいいのです。


私の感覚では、本当の評価は以下のようなイメージだと思われます。


【「裏」の評価体系 = これが使われている】

- (1)のSector Revenue ・・・ 30%


- (1)のPersonal Revenue ・・・ 40%


- (2)Utilization ・・・ 30%


- (3)を含めたそれ以外の定性項目 ・・・ オマケ(実はどうでもいい)

タカシの通信簿検証

それでは、「裏の評価体系」に照らして、私の 2004 年評価を考えてみましょう。まず「Sector Revenue」ですが、これは個人の力ではどうにもなりません。金額的にも、個人が頑張ってどうこうなるもんでもないので、みんなで力を合わせて頑張るしかないわけで、「神頼み」的な要素が大きい部分です。ちなみに、昨年のわが Sector の実績は目標ギリギリだったものの、とりあえず「達成」したようです。


「Personal Revenue」(106Mは文句なく「達成」です。本来なら、目標値 100Myen を超える分については今年分に振り向けたいところです。実際に、そういう「小細工」をしている人もいるのですが、私はそういうことはしていません(別に自信があるわけでも何でもなく、処理が面倒くさいだけなのですが)。


問題は「Utilization」です。これは「未達」です。ま、これについては、しょうがないと思っています。Personal Revenue を稼ぐためには、提案活動などの営業をしなければなりません。提案書を書いたり、それをプレゼンテーションしたりする行為には、「お金の裏づけ」がありませんから、Utilization としてはカウントされません。つまり、全くの「タダ働き」ということになります。しかし、提案しなければ売れませんから、Revenue を上げることはできません。


実際に、マネージャー・レベル以上のコンサルタントというのは、プロジェクトをやりながら新規の案件を提案しているケースが多く、Revenue と Utilization のバランスをうまく保っていかないと、評価されません。その「さじ加減」が非常に難しいところなのですが、どちらかと言えば、Utilization を稼ぐよりも、より多くの Revenue を稼いだ方が評価されます。なので、私は Revenue を重視して仕事をしたわけで、その結果が「Utilization 未達」となったわけですから、ま、しょうがないというわけです。もちろん、マネージャーより下のスタッフレベルであれば、Revenueの評価はありませんので、専ら高い稼働率を稼いだ方が高い評価を得ることができます。


以上のことから、私の2004年評価はこんな感じでしょうか。


- (1)のSector Revenue ・・・ 30% 達成 !


- (1)のPersonal Revenue ・・・ 40% 達成 !


- (2)Utilization ・・・ 30% 未達(トホホ・・・ )


未達分も、全く評価されないわけではないでしょうから、30% のうち15% ぐらいはもらえるのではないでしょうか。ちゅうことは、「目標に対して、85% の達成」ということになります。簡単に言えば、100% 達成時のボーナス契約が 100 万円だったとしたら、85 万円もらえるということになります。ま、こんなもんですな。

いくつかの疑問に答えましょう !

外資の評価体系というのは、実は非常にシンプルにできています。しかし、上で述べたように、表面的にアナウンスされている評価体系を、そのまま信じてはいけません。「裏」を読まねばならんのです。


(疑問1 ) 上記(3)でいうような、「定性項目」は本当に評価されないのか?


まず、されませんな。というか、定性項目というのは、だれも客観的に評価できないので、結局のところ、評価する際に評価体系からはずしてしまうのです。例えば、4、5 年前のこと、私は業界の様々な雑誌に論文を書きまくり、外部講演の講師をやりまくったことがあります。しかし、そのこと自体はほとんど評価されませんでした。むしろ、そんなことができる人は Utilization の低い「ヒマ人」なわけで、評価は低くなります。ですので、本なんかを執筆して対外的に有名なコンサルタントというのは、実は社内評価は低かったりします。「あの有名な人が・・・ 」なんて人が、社内の閑職にいたります。本当に評価されているコンサルタントは、そんなヒマはないということです(もちろん、原稿の執筆料とか講演料という意味では、金銭的な見返りはあるのですが)。


日系企業で企画部などのエリート部署にいた人が、外資のコンサル会社に転職すると、この部分に非常に戸惑います。なぜなら、彼ら(彼女ら)は、日系企業にいた頃は(3)のような「定性項目」で評価されていた人がほとんどだからです。確かに、社内のナレッジ構築や情報の外部発信も重要な仕事です。それを否定する気はありません。しかし、そのような「定性項目」が、どれだけ収益に貢献しているかを計測できない以上、だれも評価できないというのも事実です。外資というのは、白か黒かハッキリしなものは、そもそも評価対象からはずしてしまいますから、結局、評価されないということになります。


(疑問2 ) 稼働率は高ければいのか? 「質」は見ないのか ?


「質」というのは、例えば同じ「稼働率 50%」でも、仕事の難しさによってその値打ちは違うだろうということを言っています。確かに、大したスキルを必要としない仕事の稼働率 50% と、会社が初めて手がけるような難しい案件の 50% では、差があってしかるべきです。しかし、結論から言うと、この両者に評価上の違いはありません。どんな案件であろうと、50% は 50% であって、質の違いはほとんど考慮されません。


理由は簡単でして、これも客観的な評価ができないからです。だれだって、自分の手がけた案件は他人の案件より難しいと主張するに決まっています。そういう状況のところに「定性評価」を入れてしまうと、収拾がつかなくなるのです。


また、よく言われるのは「お金に色はない」ということです。楽な仕事も、困難な仕事も、50% 稼動してもらえるお金は同じ値打ちです。会社というレベルで見れば、楽に稼いでくれたほうがいいに決まっています。


しかし、誤解いただきたくないのは、個人のレベル向上という意味では、楽な仕事ばかりではスキルが全く伸びないというのは当然の話です。単に、短期的な評価のことばかり考えて世渡り上手的に振舞っていると、実力が全くつかないわけで、頑張った人にはそれなりの報いがあるということは忘れてはいけません。


いずれにしても、外資においては、公式に発表されている評価体系の「裏」を読まなければ、自分が納得できるようなリターンが望めないのは事実です。「表」の評価はそれはそれで認めつつ、「裏」の評価で稼ぐ。何だか面倒な話なのですが、少なくとも、日系企業でまかり通っている「全くわけのわからない評価」に比べれば、余程マシだと思うのですが、いかがでしょうかね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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