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タカシの外資系物語

ハラショーな選択2005.02.08

ハラショーな人 ( その 1)

「それでは、みなさぁーーん。今日の料理は、ウクライナ風のボルシチでぇす。準備はいいですかー ?」


私は今、うちの奥さんと一緒に「ロシア料理教室」に参加しています。私自身、料理が特に得意なわけでもなく、はっきり言うと包丁さえ握ったことがありません。独身時代も、毎日「コンビニ弁当→牛丼→ファミレス→コンビニおにぎり …… 」とローテーションしてしのいでいたぐらいで、当時住んでいたアパートでも、結局ガスの元栓を一度も開けないままに、引っ越してしまいました。


結婚してもその状況は変わらず、料理はもっぱら奥さんにお願いしているのですが、料理教室だけは別でして、最近結構ハマっています。特に、日本人が普段あまり口にしないような国の料理は、その国・地方の歴史や文化に触れているようで、なかなか趣深いものです。


今回の講師であるナターシャさんは、同じマンションの住人でして、普段から家族ぐるみで親しくしています。


「タカシさんはどうですかぁ ? ニンジンの皮むきは終わりましたかぁ ? ハラショー ( ※ )! うまくできましたねぇ !」( ※ロシア語「Хорошо」-すばらしい ! よくやった ! てな感じの意味です )


肉の仕込みなど、スキルが必要な部分は奥さんに任せて、私はもっぱらニンジンの皮を剥いているだけ。それも包丁は使えないので、皮むき器でサクサクサク…… 実質はほとんど貢献できていないんですが、それなりに達成感はあったりします。


「いっただきまーす ! …… う、うまい !」


ナターシャさん 「みなさーん。みなさんに楽しいお知らせがありまーす。今度の土曜日に、私の友達が○○ホールでロシアの民族楽器を使ったコンサートをやりまーす。よかったら見に来てくださーいね !」


ナターシャさんはロシア文化を日本に伝える NPO に所属しており、料理教室だけではなく、いろんな企画をしています。そのアクティブな活動に加えて、来日 2 年とは思えない流暢な日本語。ニンジンの皮しか剥けない私は、ただただ感嘆するばかりです。

ハラショーな人 ( その 2 )

「なんでそうなるんだろ …… ホントにすごいよね。すばらしい !」


料理教室から帰った私たち夫婦は、今流行の「クロースアップマジック」をテレビで見ています。クロースアップマジックというのは、トランプやコインなどを使って、お客様の目の前で演じるマジックのことを言います。大掛かりなステージマジックとは違って、派手さには欠けますが、その分マジシャンの技術が半端じゃない ! またマジシャンとの会話も楽しく、おしゃれなバーにいるような感じも受けている理由だと思います。


実は私、トランプを使用するクロースアップマジックについては、「タネ」を知っています。トランプのマジックって、ほとんどが新品のトランプを使いますよね。新品のトランプというのは、A( 1 ) から K ( 13 ) までのカードが、スペードやハートなどの絵柄毎に並んでいます。クロースアップマジックのマジシャンというのは、指の感覚で、どのカードがどこに存在しているかを常に把握しています。カードを何回切っても、今、ハートの A が上から何枚目、下から何枚目にあるかわかっているのです。カードを聴衆に引かせて、それを無作為に元に戻しているように見えても、すべてはマジシャンの「指」がどこにあるかを理解しているわけです。ですから、彼らがやっているのは「タネ」があるというよりは、研ぎ澄まされた指先の感覚と、すさまじいまでの練習の成果の賜物といえるものなのです。ま、プロなのだからそれぐらいできて当たり前といえなくもないですが、われわれ凡人には到底真似できないことは間違いありません。


また、クロースアップマジックの第一人者といわれている前田知洋さんは、米国マジックの殿堂「マジックキャッスル」に、日本人最年少で出演したことでも知られています。まさに、世界的に活躍しているわけです。

ハラショーな人の条件

ロシア料理のナターシャさんしかり、クロースアップマジックの前田さんしかり、彼ら ( 彼女ら ) の共通点は、以下の通り表現できます。


( 1 )みんながやらない ( 手を付けない、ニッチな ) 分野で活躍している


( 2 ) 卓越した技術・スキルを有している


( 3 ) 上記 ( 1 )( 2 ) だけでも、それはそれで素晴らしいことです。しかし、彼ら ( 彼女ら ) には、これらに追加して、以下の特長もあります。


( 4 ) グローバル ( 国際的 = 外の世界 ) な視点を持っている = 海外のどこに行っても通用する


私は、3 点目のこの観点こそ、今後のビジネス社会で生き抜いていくキーポイントではないかと考えています。


まず、( 1 ) は「分野を選ぶ」ということです。数あるビジネス・フィールドの中で、自分はどの分野・エリアを攻めるのか、言い換えれば、どの業界に身を置くか、どの会社に勤めるかということです。次に、( 2 ) はその業界でスキルを磨いたり、地位を向上させるということです。自分が選んだ分野を深堀りするということになります。最後の ( 3 ) ですが、これは横展開を意味します。自分が選択した分野でそれなりのスキルを身に付けた後で、それをグローバルに、外の世界へと展開することで、エリアそのものを拡大しようとする試みです。

ハラショーな選択とは ?

さて、実は日本人の大半は、( 1 ) と ( 2 ) だけで勝負をしたがります。つまり、( 3 ) の選択肢がそもそも存在しないのです。例えば、大学を卒業して、電子部品業界の会社に入社したとします。その会社で、営業マンとしてそれなりのスキルを身につけ、地位を築いたとしましょう。この段階で、( 1 ) と ( 2 ) はある程度達成されています。次に何をすべきか。大半の人は、( 2 ) の深堀りをさらに進めようとするのです。しかし、これはあまり得策ではありません。なぜなら、多くの人が同じように深堀りをしている分野において一定以上の成果を上げるためには、余程の能力と才能と「運」がなければ、まず成功することは難しいからです。ほとんどの人は「営業課長」になることはできても、同じ会社で「営業部長」になれる人は限られている、ということです。


ここで、1 つの選択肢として、( 3 ) という横展開を考えてみましょう。例えば、外資系企業への転職です。上の例で言えば、電子部品業界の日系企業で営業マンとして培った経験とスキルをもって、同業の外資系企業に転職するのです。


「簡単に言うけどさ …… 英語もできないのに、外資系への転職なんて可能なの ?」と、思われるかもしれません。確かに外資系企業では、英語ができることは最低限の条件です。英語ができないのなら、それなりにできるようになる必要はあるでしょう。 
  
しかし、日系企業における「営業課長」から「営業部長」になるための過酷な出世競争に比べれば、ここで要求されている英語の習得の方が楽な気がします。( 2 ) のさらなる深堀りよりも、( 3 ) の横展開の方が、成功しやすいのです。 
  
例えば、私の同僚のケイイチくん。彼は、私と同じように、外資系コンサルティング会社の東京オフィスで IT コンサルタントをしていましたが、ある日、NY オフィスのスタッフ募集に応募して、NY に行ってしまいました。現在、彼は NY で、日系企業向けの IT コンサルティングに従事しています。会社におけるランクは、私の方が少しだけ上です。彼が NY オフィスで「見習い」をやっている間に、私が抜いてしまったからです。しかし、彼は今や英語がペラペラです。さて、私とケイイチ、どっちが将来的に「勝者」になる可能性が高いかというと …… それは、おそらくケイイチです。( 2 ) の深堀りを選択した私は、見た目にはケイイチを追い越しているようですが、実力的にはケイイチに抜かれてしまっています。そもそも私とケイイチに、それほどの実力差はなかったように思いますので、そういう意味では、( 3 ) の横展開を選択したケイイチの勝ちだということです。


誤解いただきたくないのですが、私は外資への転職を勧めているのではありません。それも 1 つの選択肢ですよ、その方が比較的楽に成功できる場合もありますよ、と言っているにすぎません。IT 業界における IBM などは、まさに「( 3 ) 横展開」の考え方が、従業員に染み付いているわけで、だからこそ様々な IT 企業 ( 特に外資系 ) の経営層を数多く輩出しているのだと思います。みなさんの会社でも、バブル期の大量採用世代が管理職になり始めている頃ではないでしょうか。社員全員が何らかの役職をもらえた時代は、すでに過ぎ去っています。分野を定め、スキルを伸ばすのと同時に、自らがグローバルの視点を持って横展開をすることで、限られた「パイ」を広げていかなければ、成功はおぼつかない時代が到来しているのです。


自分自身の未来を「ハラショー」なものとする選択とは、広く外部に目を向けて活躍の場を探ることではないでしょうかね。私自身も、ケイイチに負けないよう、頑張りたいと思っています。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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