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タカシの外資系物語

ガラスの天井を突き破れ !2004.12.24

ポーラー・エクスプレス

先日久しぶりに、うちの奥さんと映画に行きました。この年末はアニメ映画の大作がめじろ押しでして、宮崎アニメの『ハウルの動く城』をはじめ、あの「ファインディング・ニモ」の PIXAR が制作した『Mr.インクレディブル』なんてのも人気があるようです。アニメ映画が大好きな私たち夫婦、期待に胸を膨らまして映画館のゲートをくぐったのです。


「さーーて、どれを見ようかね、と…… あ、ありゃりゃ ?」


チケット売り場の上映予定表を見て、愕然……『ハウル』も、『Mr.』も、すでに売り切れているではないですか…… うちの近所の映画館は、大規模なショッピングモール内にある、いわゆる「シネコン」というやつでして、全席指定かつインターネットで事前予約もできるということで、週末上映の人気作品は、数日前に売切れてしまうことが多いのです。


「やっぱり予約しないと無理か…… トホホ……」


しかし、われわれ夫婦はそんなことではへこたれません。


「よし、こっちだ、こっち ! この『ポーラー・エクスプレス』にしよー。実はこれが一番面白いらしいよ !」


「そうそう、TV の情報番組でもこの冬一番の出来って言ってたわ !」


なんと負けず嫌いな 2 人なのでしょう。ま、何はともあれ、仕方なく…… いやいや、かなり積極的に『ポーラー・エクスプレス』を見ることに決めたのでした。


「いやーー、ホントにいい映画だった。ここ 2、3 年で一番だったんじゃないの ?」


負け惜しみで言っているんじゃないんです。ホントに良かったんですよ、これが ! これまで見た全ての映画の中でも、あの名作『E.T.』に次ぐぐらいの出来のよさ。私たち夫婦は、『ハウル』や『Mr.』のことなどすっかり忘れ、すっかり感動に浸っていました。ジーーーン……(T-T)


主人公である少年は、成長するにつれ、サンタクロースの存在に疑問を持ち始めていました。そしてクリスマス・イブの夜、サンタクロースは来ない、架空のものだと思っていながらも、なかなか寝疲れない少年。そして真夜中を過ぎた頃、空の彼方から轟音を響かせてある列車が到着したのです。その名は「ポーラー・エクスプレス(急行北極号)」!……(あんまり話すと怒られそうなので、これぐらいにしておきます。続きは映画館で見てくださいね。でも、ホントにお勧めですよ !)

女性の社会進出

さて、映画の中で主人公の少年をサポートする役として、黒人の少女が出てきます。彼女は、意志が強く、持ち前のリーダーシップを発揮して、主人公の少年を何度も助けます。少年が頼りなく描かれているのに比べると、かなり対照的なこの少女。どこかで見たことあるなぁと思っていたら、そうそう、アメリカのブッシュ大統領と新しく国務長官に就任したライス大統領補佐官にそっくりです。現在のアメリカ社会において、「強い女性」の象徴はこういう女性なのかもしれません。


政界ではライス大統領補佐官や、古くはイギリスのサッチャー元首相。財界ではヒューレット・パッカードのフィオリーナ社長など、欧米社会における女性の社会進出は、日本に比べるとかなり進んでいると、一般的に思われています。確かに、アメリカでは管理職の 40% を女性が占めていますが、日本では 10% 弱で国際的にもかなり低い水準です。男女雇用機会均等法においても、採用や昇進・昇格を性別によって差別することがないように規定されてはいるものの、結果については明文化していません。つまり、表面的に「男女平等」という看板を上げておけば、結果はどうであれ、責任を問われることがないということです。

「女性支店長」の実際

私はコンサルタントという職業柄、様々な業界とのお付き合いがあるのですが、その中でも銀行、商社なんてのは、極めて女性の昇進・昇格が難しいように思います。また業界を問わず、営業部門での女性の躍進も難しいような気がします。一方で、広報や商品開発・マーケティングなどの分野では、女性が重用されているように思います。


この理由は非常に簡単でして、広報やマーケティングというのは比較的新しい分野ですから、既成の人事的な枠組みが存在しないのです。枠組みがないということは、「だれにも同様にチャンスが与えられている = 男女平等」ということで、実力次第で女性が昇進することも可能なわけです。一方で、営業部門というのは既成の人事的枠組みでガチガチに固められています。「歴代の部長や課長は男性だったから」と理由だけで昇進が決まっているのが実状です。そこには、男性でなければならない合理的な理由はほとんどありません。これまでの慣習を変えてしまって、もし失敗したら困るから、などというくだらない理由にすぎないのです。銀行や商社などの保守的な業界では、営業だけではなく、全業種にそのような考えがはびこっているわけです。


先日、私が付き合いのある銀行で、史上初めての「女性支店長」が誕生しました。マスコミにも取り上げられたりしていたので、その銀行に勤める女性社員のモチベーションはさぞかし上がっているだろうと思っていたのですが、実はそうでもありませんでした。


「あの抜擢は シンボル みたいなものですから。私たちには関係のないことです」


これは知り合いの女性社員の言葉。つまり、会社として女性の昇進・昇格に積極的に取り組んでいることを世間に知らしめるための「ポーズ」にすぎないというのです。


「本当に実力で昇進するのなら、女性の支店長は 5 人ぐらいいてもおかしくないんですよ。でも、実際には 1 人しかいません。結局のところ、中身は何も変わっていないということです。もう、諦めていますけどね……」

Glass Ceiling とは ?

日系企業ほどではないですが、外資系企業においても女性の昇進は限定的だといえます。私と同じレベルの「マネージャー」になる女性はそれなりにいますが、それより上のランクまで昇進する女性はほとんどいません。確かにわが社の役員の中にも女性が 1 名、いるにはいます。ですが、これは上記の銀行の例と同じように、「シンボル」「ポーズ」といった域を出ないような気がします。この役員の実力を否定しているわけではありませんが、仮に実力で役員になれるのだとすれば、もっと女性役員の数が多くてしかるべきだと思うのです。


“ Glass Ceiling ” (グラスシーリング)という言葉があります。これはアメリカで広く使われているのですが、その意味は「ガラスの天井」に阻まれてトップの座に手が届かないという状況を指しています。アメリカだろうが、外資系企業だろうが、このような「天井」は厳然と存在しているわけです。


日本の場合は、「天井」そのものが欧米よりもかなり低く設定されています。まず是正すべきは「天井」の高さを上げて、管理職の女性割合を欧米並みにすることが必要です。そして、「シンボル」として女性を登用するのではなく、実力ベースでの公平な評価をすることが何よりも重要です。私は、女性は元来、男性と同等かつ遜色のない実力を持っていると思っています。男性と同様に、優秀な人もいれば、その一方で実力のない人もいるはずです。しかし現状の評価制度においては、「天井」のバーがあまりにも低いため、実力のある人もない人も同様に扱われてしまっているような気がしてなりません。本当に実力あれば、部長や役員にどんどん抜擢すればいいのです。


また、一般職という職種も女性に特有ですが、これも同様に男性にも適用すべきだと思います。男性の中にも、転勤したくない人、出世競争に身をさらしたくない人はいるはずです。男性 = 総合職、女性 = 一般職という切り分けそのものが、そもそも時代に適応しなくなってきているわけですから、性別での分類はやめて、あくまでも職種だけの分類にし、男性でも女性でも自由に選べるようにすればいいと思います。欧米企業では、男性の「一般職」もかなり一般的です。こうすることで、女性の「天井」を引き上げる要因にもなっているのです。


『ポーラー・エクスプレス』の少女は、最後に「LEAD」と書かれたチケットを車掌さんからもらいます。そして、車掌さんが一言。「これからは、あなた(女性)の時代です。あなたのリーダーシップという能力を、存分に発揮して、この社会を導いてください……」


「ガラスの天井」を撤廃し、女性のリーダーシップ能力を開花させること。男性と女性が平等にアイデアを出し合って、よりよい社会を作り上げること。サンタの存在は信用できなくなった私ですが、こんな未来像は持ち続けたいと思っています。


“All Aboard! Let’s go to gender equal society ! ”(男女平等社会へ向かって、出発進行!)



“Merry Christmas !” 
 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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