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タカシの外資系物語

外資系とディベート ( その 2 )2004.12.02

ディベートにおける勘違い

前回のコラムでは、ディベートとは単に議論をすることではなく、賛成側と反対側に分かれて議論をするということ、そして日本人はディベートが不得意であるということをお話しました。 


そもそも私がこのようなテーマを取り上げた理由は、ディベートに関して「勘違い」をしている人があまりにも多いと感じたからです。それも、特に外資系企業に勤める日本人にこのタイプが多いのです。では、ディベートに関する「勘違い」とは何なのでしょう? 


タカシ 「今日の議論は、A 社のコスト削減プロジェクトにおける課題収集の方法についてです。現在 A 社では年間 20% のコスト削減を目指して、全社的な改革プロジェクトを実施しているのはみなさんも知っての通り。A 社では『私の意見』という形で、全社員からコスト削減の方法を募っているんだけど、どうもそれがうまく機能していないようなんだよね。これに対して、今後どのようにすべきか提案を求められているんだけど…… みんなはどう思うかね ?」 


ネガくん 「そもそもコスト削減なんてのは、経営の強いリーダーシップがなければ効果なんてあがんないですよね。現場から意見を積上げていくようなボトムアップ形式では、20% 削減するなんて到底無理だと思いますよ」 (ふむふむ) 


アファくん 「でも現場が納得しないようなお題目を掲げても、それって結局、絵に描いた餅で終わるケースが多いのも事実ですよね」 (それも一理あるわな) 


ネガくん 「そんなことないよ!ここ最近 V 字回復を遂げた企業のほとんどは、社長がグイグイ引っ張ったから改革できたんじゃないか。現場レベルの改革には、どうしても限界があるんだよ…… タカシさん、提案するなら社長によるトップダウン方式を持ちかけましょうよ !」 (でもさ、トップダウンのみでいいのかな ?) 


上の会話では、私のチームにいるネガくん(ボトムアップ方式に反対)とアファくん(賛成)が、A 社の業務改革(コスト削減)方法について、簡単なディベートをしています。業務改革は、経営層によるトップダウン形式がいいのか、現場から積み上げるボトムアップ形式がいいのか…… 実はこの2 人、それから延々 30 分にわたって「自説」を唱え続けました。で、結局のところ、どうすればいいの ?

ビジネスにおけるディベートの目的

私が A くんと B くんに集まってもらって意見を求めたのは、何も 2 人にディベート大会をやってほしいからではありません。この議論について、「A くんの押しが強かったから、A くんの勝ち !」なんてことはありえないのです。そんな理由で議論の決着がつくのなら、顔が恐くて、声の大きい人がいつも正しいことになってしまいます(ま、日系企業においては、往々にしてそういう理由で物事が決まっていくという側面も否定できませんがね)。 


私が A くんと B くんに期待したのは、以下の 2 点です。 

(1)議論の目的は、A 社への提案内容を固めること(A くんと B くんでどっちが勝ったか決めるわけではない) 

(2)提案内容を固めるために、ディベート形式で議論して、「落としどころ」を探ること 

* 「落としどころ」というのは、適用分野毎に最適の方法をとるために、いくつかの手法を融合することを考えている 


「最初の一歩」として、A くんと B くんがディベート形式で議論を始めたところまでは良かったのですが、それ以降がよくありません。私としては、それぞれの意見のメリット・デメリットを十分に理解した上で、より効果的な方法を見つけて欲しかったわけですから。 


冒頭でお話した、ディベートに関する「勘違い」というのは、まさにこのことを言っています。つまり、「ディベートとは、自説を曲げずに主張し、相手を打ち負かすことだ」という勘違いです。この手の人たちの特徴は、まず議論をふっかけるのが好きだということ。次に、自分でふっかけておきながら、自説を無理やり押し付けて、相手をやりこめることに生きがいを感じているということです。 


しかし、ビジネスにおいて議論で相手を打ち負かしたところで、実はほとんどいいことはありません。何でも正しいことを言う「神様」なら話は別ですが、そんな人はこの世の中にいないわけで、どんなに優れた施策・意思決定においても、必ず欠点や改善すべき点はあるのです。ビジネスにおけるディベートの目的は、議論相手から自説の欠点を引き出し、自説を改善しいくことこそあるのです。 

落としどころの議論

実は私がこのことに気付いたのは、外資系企業に転職してからでした。学生時代に ESS でディベートに触れる機会はあったものの、それは「勝ち負けの議論」でしかありませんでした。日系銀行では、議論の機会などほとんどありませんでした。ほとんどの会議は事前に根回しすることで、実際の会議の場では異論が出ない「反対なしの議論」だったからです。「じゃ会議を始めます。お手元の資料について、何か意見はありませんか ? ないようですので終わりましょう。シャン、シャン !」こんなことなら会議など開く必要はないのですがね。 


で、外資に転職したわけですが、外資では事前の根回しなどありません。議題(= アジェンダ)が示されるのみです。参加者はアジェンダを見た段階で、自分なりの意見を語れるようになっておく必要があります。つまり、この段階で、「反対なのか、賛成なのか」を決めておく必要があるのです。議論が始まると、自然に反対派と賛成派に分かれます。しかし、目的は派閥を作っていがみ合うことではないということを、参加者自身が理解しているので、議論はそれなりの落としどころに収束していきます。つまり、賛成・反対の両極を理解した上での「落としどころの議論」となるわけです。 


転職したばかりの頃は、「タカシは意見がないのか ? 意見がないなら参加しなくてもいいぞ !」と、上司(特に外国人上司)から、よく言われました。日系企業から外資に転職された方は、大なり小なり、同様の経験をされているのではないでしょうか。 


このことが一種の「トラウマ」となって、外資に勤める日本人の多くは、「会議では意見を話さなきゃ…… ディベートでは相手の反対を言わなきゃ……」と身構えてしまうのです。このときに、ビジネスにおけるディベートの本質を理解していない人は、議論に勝つことだけを考えてしまい、「勝ち負けの議論」をしてしまいます。口が達者で理屈っぽくて、すぐに議論をふっかけるやつ。そのわりに、議論の結果、何も残らないやつ…… この手の日本人が、外資には多く存在しているのです。 

ビジネス・ディベートのコツ

ではここで、私からみなさんに、外資系企業でディベートをする「コツ」をお話しましょう。もしあなたがディベートをふっかけられた場合は、相手の意見に対して正面きって反対しないことです。相手の目的は、自分の意見を覆して欲しいわけではなく、あくまでも自分の意見の「粗探し」をしてくれと言っているだけなのですから、強い口調で反対してはいけません。「あなたの意見はだいたい OK だと思うよ。でも、こうしたらもっとよくなるよ !」ぐらいのイメージで、やんわりと話すことが重要です。 


逆に、あなたがディベートをふっかけた場合には、相手の意見を真摯に聞く必要があります。とかく、人は自分の弱点を突かれると意地になって反論したくなるのですが、そこはグッとこらえなければディベートをしている意味がありません。多くの人から同じような反対意見が出たのなら、やはりその部分は弱いのだと観念して、考えを変えるぐらいの柔軟な態度が必要というわけです。 


Takashi, TAKASHI ! 


上司のNeilが呼んでいます。 


Neil 「Now, I plan you are assigned to A company project as PM, it’s OK ?」(A 社のプロジェクトにPM (プロジェクトマネージャー)として入ってもらいたいんだけど、いいかな ?) 


Takashi 「OK ! (お、A 社のプロジェクトが獲得できたんだ。よかった、よかった……)」 


Neil 「And…year end holidays you applied…」(それと…… 申請してくれた冬休みの件だけど……) 


Takashi 「ン !」 


Neil 「This project will be very busy, especially year end. You’d better change your holidays after the project !!」(このプロジェクト、年末は超いそがしそうだから、休暇は終わってからにした方がいいぞ !) 


にゃ、にゃ、にゃんですとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぉ ! こりゃ大変だ、ディベートするために「反対意見」を述べなきゃ…… オレの休暇がなくなると何が起こるか…… 


* 働き過ぎで体を壊す (ふむふむ) 

* 旅行を楽しみにしていた家族がガッカリする (そーだよなー、ごめん(T-T))

 

あまりにもガッカリし過ぎて暴動が起こるかもしれないよな。その暴動が拡大して、鎮圧のために軍隊が派遣されて、挙句の果てには戦争が起こるかも…… 


……なーーんて、くだらないこと考えてる場合かーーーーーーーーーーー ! 


Neil、ちょっと待ってくれーーーーーーーーー ! 1 年ぶりの休暇なんだーーー、休ませてくれーーーーーーーーーー ! トホホ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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