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タカシの外資系物語

タカシ・就職活動の頃 ( その 2 )2004.11.11

9 時に昼食 ?


( 前回の続き )「スーツ着て来いなんて、まったくぅ …… 銀行には入る気ないっちゅうねん …… 」


ゼミの先輩で、某大手銀行に勤めるヒロユキさんから食事の誘い。スーツを着てくるように指示された私は、この誘いが単なる「食事」では済まないことを、何となく理解していました。


「でも、金融機関ってこれまで一度も会社訪問してないんだよな …… 案外自分に合ってたりしてね …… 」


銀行には興味がないと言いながら、実は心中複雑だったりします。ま、「食わず嫌い」ってこともありますからね。


しばらくすると、ヒロユキさんから 2 回目の電話がかかってきました。


ヒロユキ 「よっ ! どう、調子は ?」


タカシ 「あ、あのねぇ …… 調子は ? って、さっき電話もらってから、まだ 2 時間しかたってませんけど …… 」


ヒロユキ 「あ、そやな。明日の集合時間やねんけど、ちょっと、はよ来てもーてもええか ?( 少し早く来てくれてもいいか ? という意味 )」


タカシ 「いいですよ。11 時頃ですか ? 」


ヒロユキ 「 9 時に来てくれへん ? 」


タカシ 「い ?! 9 時って …… 明日は昼飯食うんでしょ ?」


ヒロユキ 「アホやのー、おまえは …… 9 時に昼飯食うんが、いま流行っとんのや、ボケ !( 関西人はよく『アホ』とか『ボケ』という言葉を発しますが、深い意味はありません。「相槌」または「リズム」みたいなもんなので、いちいち気にしてはいけないのです )」


実際には、9 時から昼ごはんを食うやつなどいません ( ドカベンの山田太郎ぐらい。ふ、古い ! )。


つまり、ヒロユキからの呼び出しは、ほぼ間違いなく採用がらみの話に違いありません。


タカシ 「いいですよ、じゃ 9 時に …… ナンバのロケット広場でいいですかね ? ( ナンバ = 難波。大阪の繁華街です。ナンバ、心斎橋一帯を、通称「ミナミ」とも言います。何年か前に、阪神が優勝した際、大勢の人が川に飛び込んで問題になっていましたが、ちょうどあのあたりを指します。「ロケット広場」というのは、ナンバの待ち合わせの名所でして、文字通り、大きな「ロケット」が立っています。大学のゼミのコンパがあるときは、決まってここを待ち合わせ場所にしていました )」


ヒロユキ 「いや、明日はうちの銀行の大阪支店に直接来てくれや」


タカシ 「面接 …… ですか ? 」


ヒロユキ 「そーや。気に入らんかったら、すぐに帰ったらええし … な ? ええやろ ?」


ま、いっか …… 気に入らなかったら、ホントに帰ればいいんだし …… 私は軽い気持ちで応対しながらも、実は何かを期待していました。もしかしたら、自分にとってピッタリの会社かもしれない、内定もらえるかもしれない …… ワクワク ……

第 2 の男


私は明日に備えて、早く寝ることにしました。Zzzzz …… 少し眠りかけたときのこと、急に電話が鳴り響きました。時計の針は 12 時過ぎです。


電話の声 「もしもし、△△ 銀行の者ですが、タカシさんいらっしゃいますか ? 」


タカシ 「はい、私ですが …… 」


電話の声 「おっ、タカシじゃねぇか、元気 ? オレだよ、オレ。ESS で一緒だったナオキだよ、覚えてる ? 」


サークルの先輩で、某都市銀行に勤めているナオキさんでした。どうやらナオキさんも銀行のリクルーターのようです。


ナオキ 「ところでさ、明日の午前中って、ヒマ ? 」


タカシ 「明日は 9 時に約束があるんですけど …… 」


ナオキ 「あっちゃーー、やっぱり先を越されたかぁ …… どこ ? どこの銀行 ? 」


タカシ 「それはちょっと …… 」


ナオキ 「そっかぁ …… じゃあさ、8 時にうちの銀行に来ない ? 30 分ほど話したら、次の銀行に行けばいいじゃん、9 時なら十分間に合うよ」


タカシ 「そんな無茶な …… 午後とか、明日以降じゃダメなんですかね ? 」


ナオキ 「明日の午前中しか都合つかないんだよね …… いっそのこと、こっち来れば ? 」


さーて、困りましたよ。ゼミの先輩ヒロユキさんの○○銀行と 9 時に約束、サークルの先輩ナオキさんの△△銀行と 8 時に約束 …… いや、ちょっと待てよ、と。ナオキさんは 30 分で話を終えて、ヒロユキさんの銀行に行けばいいと言っていますが、そんなのは現実的に無理な話です。ナオキさんのところに 8 時に行くことは、つまり、ヒロユキさんの銀行には行かないということを意味します。


タカシ 「ナオキさん …… 申し訳ないんですけど、やっぱり先に約束したところに行きます。」


ナオキ 「あ …… そう …… そりゃ残念。ま、明日以降でも気が向いたら連絡してみて …… じゃ」 


ガチャ !


ご、ごめん、ナオキさん …… これでも義理堅い方なんで ……

X デーの攻防


さて、私はこの瞬間 ( ほぼ数秒の間 ) に、人生における大きな決断をしたことになります。ヒロユキかナオキか、つまり○○銀行と△△銀行のどちらを就職先に選ぶかということを決めたわけですから。確かにこの段階では、○○銀行への入社が決定したわけではありません。しかし結論を言えば、私は○○銀行に入社しました。そう考えると、このときの決断次第では、△△銀行に入っていた可能性も同じぐらいあったと言えるのです ( ちなみに、今となってはどちらの銀行も破綻ないしは破綻に近い形で他の銀行に吸収されましたので、結局はどっちでも一緒だったという説もありますが …… トホホ …… )。


当時、銀行の採用活動には「X デー」と呼ばれる基準日が存在しました。この日に、ほとんどの銀行が内定者を決定していたのです。実際には、全ての銀行が申し合わせて同じ日程にしていたわけではなく、まず学生の人気が高い有力銀行が動き出し、その動きを察知して、他の銀行も動いていました。そうすることで、有力銀行だけが優秀な学生を囲い込んでしまうことを避けていたのです。この方式では、有力な銀行ほど早く動き出し、優秀な学生ほど早く連絡が来ることになります。そういう意味では、私が先に連絡が来た「ヒロユキ = ○○銀行」に決めたのは、それなりに合理的だったのかもしれません。

お前に賭けた !


翌日、9 時に○○銀行に行くと、受付にヒロユキがいました。


ヒロユキ 「よっ ! 来てくれてよかったわ、ほんまに …… 他の銀行からも連絡あったやろ ? 」


タカシ 「は、はぁ …… 」


ヒロユキ 「ま、何はともあれ、これでオレも安心やな …… よっしゃ、よっしゃ …… 」


タカシ 「あのぅ …… 今日はだれと会うことになるんでしょうかね ? 」


ヒロユキ 「まずは、大阪支店の人事課長やな。その後、本店人事部の副部長に会って、それが終われば大阪支店長。それで終わり。ハイ、採用っちゅうわけや ! 」


タカシ 「ハ、ハイ、採用って、それで決まっちゃうんですか ? 」


ヒロユキ 「そうや」


タカシ 「今日はじめてヒロユキさんの銀行の方に会うんですよ ? それで、いきなり採用って …… 」


ヒロユキ 「確かにな、お前以外の学生さんは、これまでに何回か面接して、勝ち残ってきたやつらや。お前は今日はじめてやから、まぁ、それまでの分は不戦勝っちゅうわけやな」


タカシ 「不戦勝って、あんた …… そんなんで、いいんですか ?」


ヒロユキ 「正直言うとな、オレが今まで面接してきた学生さん、あんまりええ人おらんかってん ( あまり、いい人材がいなかった、という意味 )。オレもリクルーターとして、それなりの学生さん紹介せんと、上に何言われるかわからへんし。そういうわけで、お前に賭けたわけや」


タカシ 「はぁ ?」

臭い関係


なんちゅー身勝手な人 …… まぁ、しかし、ここまで来た以上、私も引くわけにいきません。こうなったら、意地でも合格してやろうじゃ、あーりませんか !


ヒロユキ 「それはそうと、タカシ、お前の靴下、なんじゃそりゃ。白やんけ …… 白い靴下はいてるビジネスマンなんて、おらんぞ」


今思うと、非常にはずかしい話なのですが、私は就職活動中ずっと「スーツ + 白い靴下」で過ごしていました。


ヒロユキ 「もう時間ないしな …… しゃーない、オレのと換えたるわ ( 仕方がない、オレのと交換してやろう、という意味 )。おまえ、水虫ちゃうやろな、たのむで、ホンマに …… 」


ヒロユキはそう言いながら、自分のはいている黒の靴下を脱いで、私のと交換してくれました。何とも「臭い」話で恐縮なのですが、私がヒロユキさんの銀行に入ろう ! 入りたい ! と思ったのは、まさにこの瞬間だったのです。後輩のために、自分の靴下を脱いで渡してくれる先輩がどこにいるでしょうか。「この人のいる銀行なら、何とかやっていけそうだな ……」


ヒロユキ 「ほな、健闘祈っとるさかいな、頑張れや ! 」


ヒロユキは私のお尻をポンっとたたいて、面接室に送り出してくれました。


それから 5 時間後のこと。


「おめでとう、タカシさん ! あなたの採用を内定します。一緒に頑張っていきましょう !」


私は常務取締役である大阪支店長と、固く握手をしていました。私の就職活動が、今終わろうとしていました。


しばらくすると、人事部の担当者がやってきて、私を電話の前に座らせて、次のように言いました。


「タカシさん、このたびはおめでとうございます。じゃ、早速なんですが、内定者恒例の『儀式』をやってもらいます ……」


? ? ? 儀式って、なんやーーーーーーーーーー ? ? ! ! 

次回に続く

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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