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タカシの外資系物語

パワーポイントを極める2004.10.24

外資系とパワーポイント

タカシ 「ま、こんなもんかな …… ヨシオさぁ、今まとめた内容を文書化してくれる ?」


ヨシオ 「はい、パワポでいいっすか ?」


「パワポ」というのは、Microsoft Office 製品の 1 つ、プレゼンテーション・ソフト「PowerPoint ( パワーポイント ) 」のことです。私のまわりにいる若者たち ( 20 代 ) の間では、「パワポ」と略されることが多いのですが、私はこの略語が何となく好きになれません。なんとなく間が抜けているような感じだし、そもそも言葉を略すこと自体、あまり好きではないものですから……( No.205 『略すな ! 』参照 )


さて、本題に戻りましょう。今回のお題は『パワーポイントを極める』です。前にも書いたことがありますが、外資系企業における文書のほとんどはパワーポイントを使用して作成されます。最近では日系企業においてもかなり使用されているようですが、それでもまだ、ワープロソフトの「Word」の方が多く使われているのではないでしょうか。外資系企業の場合は、契約書等の正式文書以外は、すべてパワーポイントで文書化されるといっても過言ではありません。


では、どうして外資系企業は日系企業よりもパワーポイントを多用するのでしょうか ( 逆に言うと、日系企業が外資系企業ほどパワーポイントを使わない理由とは ? ) それは、仕事のやり方に対する本質的な違いからきているのではないかと思います。外資系企業では、仕事の成果をその場で相手に伝えること、つまりプレゼンテーションそのものを重視します。一方で、日系企業においては、文書としてまとめること、つまり文書化そのものを重視します。日系企業における仕事の成果は、その文書を回覧することによってはじめて、相手 ( 評価者 ) に伝えることになります。この「プレゼンテーション」と「文書化」という差異が、ソフトとしてのパワーポイントとワードの使用頻度の差として現れているのだと思います。

エクセル小僧 タカシ

で、私個人が日系企業にいるときはどうだったのかと言いますと、日系の銀行に勤めていた頃には、ロータス 1-2-3 ( なつかし ! ) やエクセルといった表計算ソフトばかりを使っていました。なぜか ? それは、「計算ができる !」からです。日系の銀行員時代には、システム部とマーケット部 ( デリバティブのディーラーでした ) に所属していましたが、いずれの業務も数値を計算する機会が非常に多かったのです。書類を作成しながら横で計算する、必要なら計算結果をそのまま添付する …… みたいな感じで仕事を進めるためには、表計算ソフトがぴったりだったわけです。一例をあげると、システム部時代に私が開発したシステムのマニュアルは、ほとんどエクセルで作成されています。ユーザー ( システムの使用者。この場合は、銀行の同僚です ) からは「メンテナンスしにくいじゃねぇか ! ワープロで書け、ワープロで !」と非難轟々だったような記憶がありますが、私としては「読めればいいじゃん、そんなもん ……」ぐらいにしか思っていませんでした。

パワーポイントで文書を作る

そんな「エクセル小僧」だった私が、外資系企業に転職して、大きな意識改革を迫られました。私に与えられたミッションは、「自分の価値を第 3 者である顧客に説明し、それに対してお金を払ってもらう」ということ。相手に説明する上で最適のソフトは、ワードでもエクセルでもなく、「パワーポイント」だったのです。


外資に転職した当初は、パワーポイントでの文書作成に、ことのほか手間取っていました。真っ白のスライドを前に、「うーむぅ …… 何を書こうか …… 」とさんざん思い悩んだ挙句、要点を箇条書きで羅列して終わり …… これでは、ワードの文書と大差ありません ( トホホ …… )


「絵や図表も入れて、見栄えもよくしないとな ……」ということで、頑張って絵を描いてみるのですが、いかんせん私、絵心が全くないのです。以前に、スヌーピーの似顔絵を描いて、自分としては会心作だと思っていたところ、「何これ ? ブタさん ?」と言われたこともあるぐらいです( トホホ …… )


ということで、最初のうちは何をどのように書けばいいのか、全くわかりませんでした。こんなとき、どうするのか ? ズバリ、「他人が作ったのをパクる !」のです。図表や絵、スライドの構成など、最初のうちは他人の真似をするのです。元のファイルから図や絵をコピーして自分のスライドに貼り付け、あとは内容を自分のケースに書き換え、色や言い回しなど、センスに合わせて変更していけばいいのです。このように、「パクって、自分なりにアレンジ」を何度も繰り返していると、自分なりのパワーポイント「資産」が増えてきます。これがある程度貯まれば、他人に頼らなくても、自分の資産だけで一通りの文書が作成できるようになります。私の場合は 2 年ぐらいで、自分のパワーポイント資産を構築できたと思います。外資に転職して 7 年になりますが、今ではその資産を繰り回して文書を作っています。もちろん、今でもいい素材があれば、サクっと拝借しちゃってるんですけどね。

パワーポイントのデータベース

もちろん、無断で使用するわけですから、著作権には十分に留意する必要があります。「この図、使えるじゃん !」と思っても、それをそっくりそのまま使用すると、あとでどんなトラブルが起こるかわかりませんので。いつだったか、ある業界セミナーに出席したときのこと。


「あれ ? このスライドって、どっかで見たことあるなぁ …… 」 
講師が使っているスライドをよく見ると、それは以前私がある顧客に提案した資料に入れていた図表が使われていました。それも、ほとんど加工もせずに、そのまま …… おそらく、その顧客を経由して、回りまわって講師のもとにやって来たのでしょう。「ひどいヤツだなぁ。訴えてやる !」と、ちょっと思ったのですが、よくよく考えてみると、私が書いた図表自体、だれかの文書から拝借してきたものだったような気もします ( トホホ …… ) 結局のところは、同じ業界内で、同じような「素材」をお互いに融通しあっているだけなのかもしれませんね。


上記のようなトラブル (?) を避けるためには、ある程度無断で使用しても問題にならない「素材集」が必要になってきます。そういう意味では、外資系企業には非常に豊富な素材が揃っています。通常、外資系企業では、これまでに作成された文書や成果物のほとんどすべてがデータベースで一元管理されており、問題のない範囲で社員に公開されています。それも日本国内はおろか、全世界の文書が揃っていますので、そこはまさに「パワーポイントの宝庫」。もちろん、必要なサニタイズ (sanitize:不適切な部分を削除すること。具体的な顧客名を「○○会社」などとすることで、最低限の守秘義務を確保すること ) は実施されているので、文書の具体的な内容がわかりにくい部分もありますが、そんなことはどうでもいいのです。ここで欲しいのは、パワーポイントに記載する、斬新な図表や絵のデザインなのですから。私も、パワーポイントで行き詰ったときには、会社のデータベースを眺めて、材料を探しています。

パワーポイントでプレゼンする

文書が完成したら、次はプレゼンテーションです。パワーポイントには、「アニメーション」という機能があり、「開始」「強調」「終了」などの設定をすることで、文字 ( 文章 ) をスライド上に出したり ( スライドイン )、消したり ( スライドアウト )、くるくる回転させたりすることが可能です。この機能は、うまく使うとそれなりに効果的なのですが、あまり凝りすぎると、スライド上でアニメーションが動き続け、何だかサーカスみたいな感じになってかえって逆効果を生みます。なので、私はアニメーションについては、本当に強調したい部分や結論などを除いては、あまり使わないようにしています。


アニメーションなんかに凝るよりは、私がお勧めしたいのは、パワーポイントを利用した「柔軟なプレゼンテーション」の実践です。「柔軟なプレゼンテーション」とは、その場で内容を変更したり、追加したりすることをいいます。


タカシ 「( プロジェクターで映したパワーポイントを指しながら ) …… 以上の観点から、御社に必要な観点は、非効率なプロセスの排除、散在したサブシステムの集約、それに伴う組織の融合 ……」


クライアント 「あっ、タカシさん。その観点の中に、『経営者の意識改革』ってのも入れてくれるかな。うちの会社に一番欠けている点だから ……」


タカシ 「なるほど、了解しました ( と言いながら、その場でパワーポイントに挿入する )」


以上のようにプレゼンを進めていけば、その場で参加者の意思統一がはかれるだけでなく、文書そのものの更新作業も終えることができます。こうすれば、「P4 の○○を△△に修正……」などといった、くだらない議事録を作って回覧する必要もありません。


ただ、自分の辞書ツールに「特殊な」言葉を登録している方は要注意。私の場合、「ご」と入力すると、うちの愛犬「ゴルゴ」( No.220 『ブルな気持ちで!』参照 )と変換されるように登録しているのですが、先日こんなことがありました。私はその日も、パワーポイントを使ってクライアントと議論をしていました。


クライアント 「タカシさん、そのスライドの右上のところに、『アルゴリズムの確認』って入れておいて」(『アルゴリズム』というのは、コンピュータの処理手順のことを指します)。


タカシ 「あ、はい。わかりました。ア・ル・ゴ・リ・ズ・ム っと」


すると、画面に出てきたのは 「ある ゴルゴ リズム」 …… ??? なんか、うちのバカ犬がうれしそうに飛び跳ねているような情景が浮かびます……


クライアント 「??? な、何 …… それ ?」


タカシ 「いや、何でもないっす …… トホホ ……」


ま、いずれにしても、日系企業においても、今後ますますパワーポイントを使う機会が増えてくると思われます。みなさんも、自分なりのパワーポイント活用法を考えてはいかがでしょうか。以上、口ほどにもないパワーポイントの達人でした !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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