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タカシの外資系物語

プロの自覚 - プロ野球スト問題に思う2004.09.21

プロ野球スト勃発 !

いまやサッカー人気に押され気味のプロ野球ですが、かつて私が小学生ぐらいの頃には、男の子のほぼ全員が野球をやっていたほどの絶大な人気を誇っていました。運動オンチのこの私ですら、ほぼ毎日キャッチボールをして遊んでいました。ちょうど王選手がホームランの世界記録を打ち立てた頃で、毎日テレビの野球中継にかじりついて応援したことを思い出します。


子供がプロ野球選手やプロサッカー選手に憧れる理由は、いくつかあるのだと思います。満員のスタジアムで、大声援の中、ホームランを打つ、シュートを決める…… そこには、単純にカッコいいということ以上に、「プロ = プロフェッショナル」ということへの憧れがあったように思います。お金持ちになって、有名人になって、だれからも支配されない実力の世界で自由に生きる…… 子供たちはプロへの憧れを通して、無意識のうちに、自分の周囲に存在する「一般のサラリーマン社会」を否定していたのかもしれません。


そのプロ野球業界が、前代未聞の「ストライキ問題」で揺れています。事の始まりは、オリックスが近鉄を買収することを、経営者の「独断」で決めたことが原因です。ヤクルトの古田選手が会長をつとめる「プロ野球選手会」としては、選手やファンの意向を全く聞かずに、球団の経営陣が合併を決めたことに対する抗議として、ストライキを計画したとのことです。


さて、本件についてもいろいろな立場の人が、様々なメディアを使って意見を言っています。世論の大半は、勝手に合併を決めた経営陣に戦いを挑んでいる選手会を支持しているようです。一方では、企業経営の立場からは、合併もやむなしという意見も多いように思います。ここでは私なりに、外資系企業に勤める立場から、プロ野球スト問題に対する私なりの見解を述べたいと思います。

企業としての合併・吸収

企業経営という観点で見れば、収益性が悪くなった事業を手離したり、どこかと合併するという動きはごく当たり前のことです。私が以前に所属した銀行業界でも、ここ 10 年ほどの間に劇的な変化が起こりました。私が新卒で銀行に入った頃には、いわゆる「大手 20 行」といわれる銀行 20 社が、全国規模でビジネスを展開していました。それがあれよあれよという間に、その数が 1 桁になってしまいました。ある銀行は合併をしたり、ある銀行は破綻して消滅してしまったり(私がいた銀行は、破綻した後、国有化され、今はまったく新しいタイプの銀行として生まれ変わっています)。


そして今まさに、銀行業界で起こったことと同じことが、プロ野球業界でも起ころうとしているわけです。では、この 2 つの業界に共通することは何なのでしょうか。それは、「変化への対応に失敗した」ということです。


従来の銀行では、それぞれ名前こそ違っているとはいえ、やっている仕事・業務そのものは、同業他社と大差のないものでした。どの企業も、ほとんど同じような商品・サービスを、同じようなやり方で売っていれば、それなりに収益をあげることができたのです。しかし、安泰な日々は、長くは続きませんでした。規制によって保護されていた銀行に、「金融ビッグバン」という自由化が訪れ、ときを同じくして不良債権問題が一気に噴出しました。その結果、多くの銀行が破綻し、合併・吸収されていったのです。


プロ野球業界における環境変化というのは、「スター選手の海外(メジャー)流出」ということでしょう。イチローやゴジラ松井といった、日本球界の「顔」が次々と海外に活躍の場を求めて飛び立っていきました。スター不在となった日本球界では、それに続くスター選手の台頭に望みをかけたものの、イチローや松井に匹敵するような大物は育たずじまい。そこへ来て、短期間で世界レベルに到達したサッカーに、人気をジワジワと奪われていきました。復活の最後のチャンスとなったアテネ五輪でも、絶対視された金メダルを逃し、大衆の野球離れは現実のものとなったのです。


人気がなくなり、客が入らない。だから、経営が成り立たない。ごく当然の成り行きとして、合併話が出てきました。しかし、このこと自体は驚くような話ではありません。親会社が高額の運営費を払ってまで球団を所有するのは、多くの観客を呼び込んで、その宣伝効果に期待しているからです。それが効果がないと判断されれば、その事業を撤収するのが経営者の務めです。赤字経営のまま無理に所有を続け、親会社本体の経営に影響を与えたのでは、それこそ本末転倒です。

経営者だけの責任か ?

ですから、私は今回の球団合併の話については、仕方のないことだと思っています。「選手の意向を無視して、勝手にすべきではない」という言い分がありますが、非常に酷な言い方をすれば、その選手が頑張って優勝争いに加わらないから人気が出ないわけで、経営者だけのせいにすべきではないでしょう。


例えば、破綻したり、救済合併された銀行では、経営陣は責任をとってほぼ全員クビになる一方で、一般社員の給料も大きくダウンします。それが受け入れられない社員は、転職するなどして、自分が納得できる職場を見つけます。銀行の例では、ボーナス 8 割減なんていうのもあるわけで、会社に残る人は、それを受け入れて頑張っているわけです。しかし、プロ野球のストを見ていると、選手たちにそこまでの覚悟があるように思えません。環境が激変している中で、「今までと同じように、年俸も維持して……」などという気持ちでいるとすれば、勘違いも甚だしいと思います。


加えて、ファンに試合を見てもらってナンボのプロ野球において、「ストライキ」っちゅうのはいかがなもんでしょうか。現代のビジネス社会において、ストライキを実施するような民間企業など、世界中見ても、どこにも存在しません(一部鉄道会社とか、公営に近い形の企業ではときどき見られますが)。なぜなら、そんなことをする前に、やるべきことがあるからです。なぜ自分の球団は優勝できないのか、なぜ集客力がないのか。球団の経営が立ち行かなくなった根本原因はそこにあるはずなのに、それを真剣に考えている選手はほとんどいないように思います。

プロの自覚を持って

「タカシ、お前はプロなんだから、プロらしい仕事をしなきゃならない。プロとして成果を上げれば、それに見合った報酬は払おう。でも、プロとして不十分な成果なら、会社を辞めてもらうことになるからな……」


外資系企業に転職して間もない頃、私は上司であるアメリカ人に、このように言われました。「なーーんて言っても、まさかクビになることはないだろうさ……」とタカをくくっていたところ、同僚の何人かは成果を上げられなくて、本当にクビになっていきました。私はといえば、何とかクビの皮一枚つながっているという状況ですが、1 年後にはどうなっているかわかりません。だから、必死で頑張るしかないのです。ストライキなどやっている暇が、どこにあるのでしょうか。プロ野球選手というのは、私なんかより、もっともっと「プロ」であってしかるべき存在です。自分の言い分が通らないからといって、業務を投げ捨てるとは何事でしょう。


ファンも、いたずらに選手会を煽るべきではないと思います。長年応援し続けている球団がなくなることについて、心情的には大いに理解できます。しかし、プロ野球は民間企業です。採算が合わなければ淘汰されるのは、仕方ありません。かつて、Jリーグでも大手のチームが吸収合併されたことがありますが、サッカー選手はストなど起こしませんでした。プロ野球だけが特別ではありません。


プロ野球選手のみなさん、あなたはなぜプロ野球選手になったのでしょうか。それは冒頭に書いた、「お金持ちになって、有名人になって、だれからも支配されない実力の世界で自由に生きる」というプロの世界に憧れたからではないでしょうか。そして、同じように憧れを持った数千万人の中から勝ち残った代表として、今グラウンドに立っているのでしょう。ならば、その実力で観客を魅了してください。そして、実力でファンを増やしてください。プロの自覚を持って。


球団経営者のみなさん、みなさんは「経営のプロ」として、選手の実力を十分に引き出す環境を作る義務があるのです。そういう環境を作れば、ファンは戻り、もっと増えるはずです。エンターテインメント・ビジネスとして、野球をもっともっと発展させてください。プロの自覚を持って。


私を含む多くの大衆が、手に汗握る熱戦を期待しています。「プロ」としての実力、華麗なプレーを、存分に見せてください。そして、私も自分の仕事に誇りを持って取り組んでいきたいと思います。そう、プロの自覚を持って。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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