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タカシの外資系物語

紙をなくせ !2004.08.12

「えーーっと、Expense code( 経費科目 ) は 2003XX の Travel Expense ( 旅費 ) だよなっと …… 」今日は月末です。わが社では、経費の請求はイントラネット上で行うのですが、特に締切期日が決められているわけではありません。ただし、経費を使ってから 3 ヶ月以上経過したものは請求できないことになっているので、多くの人は月に 1 回程度、経費の請求処理を行っているようです。私も月に 1 回、月末に処理をするようにしています。


実は私、今の会社の経費処理を非常に気に入っています。それは、「領収書がほとんどいらない」からです。私はこれまでに、日系 → 外資系 → 外資系と転職してきましたが、はじめの 2 社は、経費請求のためには必ずといっていいほど紙の領収書を必要としていました。確かに領収書がなければ、本当にその経費をその金額だけ使ったかどうかわかりません。しかし、どこかに出張したことが明らかな場合でさえ、新幹線の旅費を請求するために、その証拠として領収書が必要だという言い分には、どうも納得がいかなかったのです。新幹線なら費用も事前にわかるのですから、領収書などなくても、その金額支払ってくれればいいのに …… と思ってしまいます。


中にはディスカウントのチケットを買って、差額を浮かせようとする人もいるかもしれませんが、大した金額ではないのですから、そのくらいは目をつぶってもいいのではないでしょうかね。また、脱税など不正の温床になることを懸念する声もあるでしょうが、それは管理プロセスがしっかりしているかどうかの問題であって、領収書の有無とは別の話だと思います。


例えば、わが社のプロセス ( 大阪に出張する場合 ) をご紹介しますと ……


( 1 ) 管理者に「出張申請書」を上げる ( 管理者が承認 ) … 行き先と目的、何泊するか、など。例 : ○○銀行に提案活動、8 月 X 日より 1 泊の予定


( 2 ) 実際に出張に行く ( 申請者 )


( 3 ) 経費申請 ( 申請者 )


( 4 ) 申請内容チェック ( 管理部門 )


( 5 ) 申請者の指定口座にお金が振り込まれる


…… 以上です。で、金額はどの時点で確定されているかというと、( 1 ) の時点です。このケースなら以下の金額となります。


交通費 新幹線 ( 東京-新大阪往復自由席 ) 13,240 円 X 2


ホテル代 一律 10,000 円


計 36,480 円 

わが社では領収書があろうがなかろうが、このケースでは 36,480 円しか支払われません。仮に、ヒッチハイクで大阪まで行って野宿しようが、グリーン車で行ってスイートに泊まろうが同じ金額です。つまり、それぞれのケースにおいて、会社が支払う経費の金額を固定しているので、領収書を確認する必要がないということです ( もちろん、書籍を購入した場合などには領収書が必要ですが )。


さて、どうして私がこの仕組みを気に入っているかといいますと、申請者の手間が省けるだけではなく、会社全体として無駄な作業 (= 付加価値の低い作業 ) をしなくてもいいからなのです。


わが社の経費支払プロセス ( 1 )~( 5 ) は、すべて PC 上で行うことができます。しかし、ここに領収書が介在すると、話は違ってきます。まず、領収書は「紙」ですから、PC からネットワーク経由で送信することはできません。「紙」を扱い出した途端に、デリバリー ( 運搬 ) の作業が発生するのです。また、領収書をむき出しにして運搬するわけにもいきませんから、台紙に貼って、封筒に入れて、送信管理簿に記入して …… なんて作業も、続々と追加されてきます。


送られた側は、封筒を開けて、申請内容とチェックします。それが終わったら、キャビネかどこかに後生大事に保管するわけです。世界一地価の高い日本のオフィス空間の一部が、領収書のファイルで埋まっていくわけです。


で、そもそも何のためにこのような作業をしているかというと、A さんが申請した大阪への出張代 36,480 円を支払うための「確認」をするためです。36,480 円を確認するだけのために、いったい何万円の人件費を使っているのでしょうかね。まったくもって無駄な作業です。


では、業務プロセスに「紙」が介在することによって、実際にはどれだけの「損害」を被っているのでしょうか ? 実は私、あるプロジェクトで、試算したことがあるのです。その試算では、「現在の業務プロセスから紙がなくなれば、プロセス全体の時間が 30% 削減できる」というものでした。つまり、紙があるだけで、仕事の時間が 3 割も余計にかかっているのです。もしかしたら、毎日残業してるのは、紙のせいかもしれません。


加えて、業務プロセスから紙をなくすと、仕事をする場所や担い手を大きく変えることができます。例えば、全てのプロセスが PC 上で電子的に行えるようになっていれば、世界中のどこにいても仕事をすることができます。つまり、確認作業をする管理部門だって、東京で仕事をする必要がないのです。


実際にわが社の経費確認作業は、中国のある都市で、現地スタッフによって行われています。中国の現地スタッフは、必要最低限の日本語の読み書きをマスターしており、業務の遂行に大きな問題はないようです。確かに日本人が処理をするよりは若干時間がかかるでしょうが、人件費が日本の約 5 分の 1 以下であることや、地価の差などを考慮すれば、欠点を上回って余りある合理化が実現できるはずです。


このように、業務の一部 ( 特に、管理業務 ) を海外に移転することを「オフショアリング」と呼んでいます。欧米企業では 10 年以上前からオフショアリングが活発に導入されていましたが、日系企業では思うように導入できていませんでした。その最大の原因は、日本語 ( 特に漢字 ) の存在でした。グローバル言語の英語とは異なり、日本語を理解できる働き手は、日本以外にはほとんどいなかったのです。


しかし、ここ数年、日系企業の中国への進出に伴い、中国の大都市を中心に日本語の教育熱が高まってきました。「日本語がペラペラというわけではないけれど、読み書きはそれなりにできる」という人材が増えてきたわけです。日系企業にとっては、オフショアリングを実施するインフラが整ってきたわけで、今後は製造以外の部分でも、海外への業務移転がますます進んでいくものと思われます。


さて話を戻しましょう。今回私がお話したかったのは、「紙をなくしましょう ! 」ということです。仕事のほとんどは PC 上でカタがつくはずです。「どうも画面は見にくいな …… 印刷しよっと …… 」なんてことをするから書類がたまり、机の上が紙であふれてしまうのです。出力した紙だって、そのほとんどは読んでないんじゃないですか ?


以前のコラムでもお話した通り、わが社では基本的に紙をプリントアウトできない仕組みになっています。これによって、紙の無駄使いや紙を扱うことによって発生する業務をなくすと同時に、情報のセキュリティ保護にも一役かっています。 (『セキュリティって、疲れるなぁ ……』参照 )


特に、世の管理職諸兄、紙にばかり頼っているから、いつまでたってもパソコンが上手くならないのですよ。欧米企業の管理職は、紙をほとんど使わないのですから、明日から早速ペーパーレスを実践してみましょう !


「Takashi ! TAKASHI !」


先月着任した Nick ( 私の上司にあたる ) が何やら私の名前を叫んでいます。


「Hi, Nick. What ?」


「○▲□×$#…peraperapera -----」


…… この人、興奮すると何言ってるかわからなくなるんですよね。そもそも英語得意じゃないんだから、ゆっくり話してくれよなぁ …… なんか、怒ってるみたいだけど ……


「▲□×$!You ?」


焦って聞いたら、ますますわからなくなってきた。'You' しか聞き取れん …… こりゃ本格的に困ったぞ ……


「Ummmmmmmmmmmm...」


自分が話しているのを私が理解しないことにしびれを切らしたのか、Nick が取り出したのは一枚の紙切れ …… 彼と私は、その紙の上で「筆談」を始めました。


いやーー、紙って便利なときもあるんですよねーーって。ま、みなさんも無理しない程度にペーパーレスに励みましょう。では ! …… トホホ …… なんか、かっちょわるし ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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