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タカシの外資系物語

買収されたら、どうします ?2004.07.06

最近、企業による買収や合併の話がよくニュースに出てきます。特に多いのが、外資系企業による買収です。例えば、自動車業界などでは、外資系企業による日系企業の買収や経営統合が活発に行われています。日産のゴーンさんのように V 字回復で大成功した例もあれば、某財閥系メーカーのようにうまくいかなかった例もあるのは、みなさんもご存知のところだと思います。


外資系の企業買収で特徴的なパターンは、「ファンド」という形で経営に加わるケースです。経営が悪化して資本が毀損した日系企業に対し、「お金 ( ファンド ) を出してあげるよーー、でも経営は任せてねーー」てな感じで、入り込んできます。銀行がお金を貸しているのとは異なり、外資系ファンドは金を返せとは言いません。しかし、彼らの狙いは会社を立て直した後のキャピタル・ゲイン ( 将来、会社を売却したときに出る売却益。100 円で買ったものが 300 円で売れたときの儲け 200 円のことを指します ) ですから、経営陣として参加し、倒れかかった ( または倒れてしまった ) 会社を必死で立て直すわけです。


以上のように、買収のパターンはいろいろとあるわけですが、いずれにしても買収した側から新経営陣がゾロゾロと乗り込んでくるのは同じこと。乗り込まれる側からすれば、あまり気分がいいものではないでしょう。


私はこれまでに、(1) 日系銀行→ (2) 外資コンサル( 1 社目 )→(3) 外資コンサル( 2 社目 ) と、3 つの会社を経験してきましたが、いずれの会社でも何らかの形で企業買収を経験しています。


(1) 日系銀行・・・破綻 ! 
このコラムでも何度かエピソードをお話している通り、私が勤めていた銀行は破綻し、外資系のファンドに買収されてしまいました。破綻した時点の経営陣からは、粉飾決算の疑いで逮捕される者も出たほどで、それ以外の役員もほぼ全員がクビになりました。( 『 H 部長との思い出』 参照のこと )


買収したファンドから送り込まれたのは、総勢 10 名以上の「再建部隊」。ほとんどがアメリカ人です。新社長は外部から招聘された日本人でしたが、この人も外資系企業経験者でした。プロパー ( もともと銀行にいた人材 ) からも 2 名が新たに役員になりましたが、両者とも MBA ホルダーでした。


私は破綻する直前に銀行を辞めていましたから、新経営陣が一般行員の目にどのように映ったかはわかりません。でも、しばらくしてから銀行の同僚に会うと、次のように言っていました。


「新しい経営陣のもと、銀行が再起に向かっている雰囲気は出てきた。経営陣の考え方は合理的だし、意思決定のスピードも速い。破綻する前よりは、ずっといいんだろうな …… でも、何となくやりきれない気分になるときがある。何千人ものプロパーがいるのに、だれ一人として自分の銀行を立て直すことができないんだろうか、って …… ちょっと寂しくなるんだよ ……」


(2) 外資コンサル ( 1 社目 ) ・・・ E ビジネス部門買収 ! 
前の外資系コンサル会社では、銀行時代とは逆のケース、つまり自らが買収する側として、いくつかの企業との M&A を経験しました。私が直接関与したのは、E ビジネス関連のコンサルティング部門を、ある企業から買収した案件です。その当時、ちょうどインターネットが爆発的に普及し始めた頃で、外資系のコンサルティング会社では E ビジネスのコンサルティングに力を入れていました。私がいた会社は、同業他社に若干の遅れをとっていたため、自前でコンサルタントを育てるのではなく、どこかの企業から部門ごと買収する戦略をとりました。


「中堅 IT ベンダーの SIPS (Strategic Internet Professional Service の略。ここでは、E ビジネス全般のコンサルティングを指している ) 部隊を買収することに決まったよ」


私はその当時、社長命令で E ビジネス関連の本を同僚と一緒に書いていました。 E ビジネス部門を買収することがわかっていたのなら、その人たちに書いてもらえばいいようなものなのですが、社長は私をはじめとするプロパー戦力に執筆を命じました。


私は 8 割がた仕上がった原稿を持って、買収した E ビジネス部門のみなさんにご意見を伺いに行きました。


私 「どうも、はじめまして。金融部門のタカシといいます。今度、E ビジネスの本を出版することになりまして、専門家のみなさんにご意見頂戴できればと ……」


私はそれなりに気を遣っていました。E ビジネスに関する知識は、当然のことながら彼らの方が上でしょう。しかし、買収した側、された側としいう意味では、力関係から言えば、私の方が明らかに上です。「両者に差はない」ときれいごとを言ってみたところで、現実には買収された側に何らかの「負い目」のようなものがあるのは事実です。


私がコメントをお願いしたマネージャーは、私の原稿を見て、少し薄ら笑いを浮かべているようでした。「こいつ、こんなレベルの文章しか書けないのか。そして、われわれはこんなやつのいる会社に買収されたのか。情けない ……」 そんなことを考えているような気がしました。


彼は一言、次のように言いました。「原稿を拝見して、明日の朝までにコメントいたします」


翌日の朝、彼から届けられた原稿には、私の誤字脱字の修正だけがされていました。私がお願いしたのは、内容そのものに対するコメントだったのに ……


「こんなレベルの低いものに、コメントなんかできないよ !」 その後半年の間に、彼らの大半は会社を辞めていきました。


(3) 外資コンサル ( 2 社目 ) ・・・買収された会社に転職 ! 
私が現在所属しているコンサル会社は、2 年前に外資の IT ベンダーに買収されました。仮にそのコンサル会社が買収されていなかったら、私は転職を決意していなかったと思います。なぜなら、私が転職した一番の理由は、買収されたコンサル会社に入ることではなく、買収した側の IT ベンダーの一員として仕事がしたかったからです。


通常、コンサルティング会社というのは IT ベンダー等から「中立」であることを要求されます。コンサルティング会社が IT ベンダーにひも付いていると、導入するシステムのハードやソフトがそのベンダーのものありきになってしまうため、コンサルティングそのものの結果が歪んでしまうからです。


外資系コンサルのコンサルタントには、上記のような考え方をする人が非常に多く、私が入った会社でも、IT ベンダーに買収されることが決まった瞬間、多くの人が会社を去ったようです。ま、そのおかげでマネージャー職に欠員が出て、私が入社できる枠ができたというわけですが。


このような経緯から、私の会社には以下の 3 種類の人が共存しています。


A. 買収した IT ベンダー出身の人


B. 買収されたコンサル会社出身の人


C. 買収後に中途で採用された人 ( 私はこのカテゴリーに含まれます )


で、これは全くの私見なのですが、職場の中で元気があって、収益にも貢献している順番は「C>A>B」のような気がします。もちろん、B のうち実力のある人は、すでに別の会社に移っているという事情もありますので、現存する B の人たちというのは、そもそもあまり元気のない人たちだという言い方もできます。しかし、私はそれだけが理由ではないと思っています。


現在私のプロジェクトに参加している、B に当てはまる I 君は次のように言っています。 
「確かに、仕事に対するやる気は買収される前の方がありましたね。以前はいつクビになるかわからなかったし …… 緊張感がありました。でも今は、まず会社が潰れることはない。クビになるにしても、以前の方が厳しかったでしょうから。あ、それと、中途の人が頑張ってくれてるんで、われわれプロパーは適当にやっていても何とかなるんですよ」


私が経験した上記の 3 ケースは、非常に重要な示唆を与えてくれています。それは、「企業買収においては、買収される側の社員のモチベーションが極端に下がるケースが多い」ということです。なんだ、そんなこと当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。自分の会社が買われちゃったんだから、そりゃやる気もなくすだろうさ、と。


しかし、私は彼らのモチベーション低下の原因は、買収後に買収企業が実施した施策にあると思っています。


- 日本人を排除し、外国人を中心とした合理的な経営一辺倒にする


- 買収された側の社員の強みを評価してやらず、あくまでもプロパーをサポートする立場にとどめる


- 買収以前に比べて、ノルマ等が低く、緊張感に欠ける

 

-中途採用を増加し、買収された側の社員の力を当てにしない


その結果、買収された企業のプロパー社員は、会社にとって負担になっていきます。買収されても辞めなかった彼らは、会社に対して高いロイヤリティを感じています。「よーーし、心機一転頑張るぞ !」と思っていた矢先に、買収企業の施策が彼らのやる気を失わせているわけです。何とも皮肉なもんです。


企業買収成功の条件は、いかにしてプロパー社員のやる気を引き出すかにかかっています。逆に受け入れる側も、受身になってはいけません。あなたのやる気が、会社の再建を支えるのです。ともあれ、日本における企業買収の歴史は始まったばかり。数年後には、企業買収のイメージそのものが、もっと明るいものになっているかもしれませんね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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