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タカシの外資系物語

タカシ・外資系駆け出しの頃 ( その 2 )2004.05.21

無事外資系企業に転職したものの、周囲に英語を話す人しか存在しない環境に押し込められた私。日増しに鬱積していくストレスと戦う毎日でした。


入社当時の私の仕事は、金融機関におけるリスク管理システムの外部監査というものでした。簡単に言うと、顧客である金融機関が作ったシステムが、本当に設計書通りに作られているかどうかを外部の目でチェックするというもの。チェックする手段としては、システムの設計書を見ながら、同じロジックのシステムを Excel や Access で作って、顧客のシステムから出力された結果と見比べるというもので、業務の大半は 1 人でコツコツと PC に向かってマクロや VB(Visual Basic) を組んでいるわけです。ほとんど人と会話することもなく、1 日中 Excel や Access の関数とにらめっこ。


「sum ( 合計する )、roundup ( 数値を切り上げる )、rand ( 乱数発生 ) …… って、ここでも英語ばっかりやないかぁーーー。なんとかしてくれーーーーーーーーー( T - T )」


関数は英語、周りから聞こえてくるのも英語、英語、英語、英語 …… やってられっかぁーーーーーーー !


ストレスが頂点に達した私は、なけなしの退職金の残り ( すでに入社前に MS-Office の研修に参加して、半分程度使用済。詳細は前回のコラム参照のこと ) を使って、スポーツジムに入ることにしました。しかし、オフィスのそばにあるスポーツジムに行ってみてびっくり !


「ね、年会費 20 万円だとぅ …… くぅーーー、き、キツイ ……」 


当時の私にとってこの金額は、清水の舞台から飛び降りて、平等院の鳳凰の上で逆立ちするぐらいの出費です。


「個人会員はとても無理だな …… こうなったら、会社の優待制度を使おう ……」


一般に、外資系企業では日本企業のような手厚い福利厚生制度はありません。しかし、こと健康管理に関しては別でした。私が転職した会社でも、あるスポーツジムと法人契約を結んでおり、社員はわりと安い費用で使うことができました ( No.20 『健康管理とトレーニング』参照 )。


人事部から優待クーポンをもらった私は、日頃のうっぷんを晴らすため、早速そのジムに行くことにしました。


「よーーし、たまったストレス晴らしたらぁーーーー。うおりゃーーーーーーーーーー」


私はおもむろに自転車こぎマシンにまたがると、ものすごい勢いでこぎ続けました。マシンのモニターには、「SOLW DOWN ! SOLW DOWN ! ( もう少しゆっくり ! ゆっくり ! )」の表示が出ていましたが、そんなものお構いなしです。


「やかましいわぁーーーーーー。おりゃおりゃおりゃあぁぁぁぁーーーーーーーー」


般若の面のような形相で、一心不乱に自転車をこぐ私。周りの人は、さぞかし気持ち悪がって引いていたに違いありません。


自転車こぎを開始してしばらくすると、何やら聞きなれたリズム、フレーズが耳に入ってくるではありませんか。


「ん ? はて、どっかで聞いたような ……」


こ、これは …… まさか …… そう、職場でイヤというほど聞いている、「英語」ではありませんか。私は自転車をこぐ足を止め、自分の周りを落ち着いて見渡してみました。よく見てみると、ジムで汗を流している人の半分ぐらいは、外国人の方だったのです ! 冷静に考えると、うちの会社が契約を結んでいるという時点で、外国人の利用者が多いのは当たり前なわけでして、私はこの瞬間に、要はどこに行こうが英語からは逃れられんということに気付きました。トホホ……


そうこうしているうちに、転職してから半年が過ぎ去っていました。その段階で、私は入社以来 5 社目のシステム監査を実施しており、マクロや VB の作成もかなりの腕前になっていました。また、英語に囲まれて過ごしているせいか、ヒアリング能力もかなり上達してきました。


「確かに Excel はうまくなったし、英語もなんとかわかるようになってきたな。だけど、このまま漫然と過ごしていていいんだろうか …… ふ、不安だ ……」


その頃から、私は芥川龍之介ばりの「将来に対するぼんやりとした不安」を持つようになっていました。そして、そのぼんやりとした不安以上に私の気持ちを不安にしたのは、クライアント ( 顧客 ) の私に対する応対でした。当時、私はクライアントから「先生」と呼ばれていました。Excel のマクロをちょろちょろっと作って、「先生」なんてちゃんちゃらおかしいのですが、私の位置づけは「システムの外部監査人」だったものですから、会計士の「先生」と同じように扱われていたのです。


顧客の心中を察すれば、半年前まで同じ銀行業界にいた若造に対して、「タカシ先生 !」なんて呼びたくないに決まっています。しかし、私を怒らせてしまっては、システム監査でどのような意見を言われるかわかりません。彼らは私を尊敬しているわけでも何でもなく、単に外部の第 3 者として、私の会社から「システム監査 OK 」のお墨付きが欲しかった、だから私にも気を遣って「先生」と呼んでいたにすぎなかったわけです。


「せっかくコンサルティング会社に入ったのに、Excel と英語だけやっていてもいいんだろうか …… それよりも、こんなしょーーもない作業しかしていないにもかかわらず、「先生、先生」と言われ続けた日にゃ、近いうちにおかしくなってしまうかもな …… 」


ちょうどそんなことを考えていた頃、私は会社のパントリー ( ジュースの自販機などが置いてある休憩所 ) で、ある話を盗み聞きしました。


「ERP 大手の S 社が金融部門を立ち上げるんだって …… でもスタッフの採用が難しいみたいで、とりあえずは、うちみたいなコンサル会社に対して、出向社員が出せないかって頼んでるみたいだよ ……」


ERP というのは、Enterprise Resource Planning の略でして、無理やり訳すと「企業統合管理」みたいな感じでしょうか。でも、これでは何のことかわかりませんね。実際には会計・販売・物流・人事など、会社で行うほとんどの業務を 1 パックにしたソフトウェアのことを「ERP パッケージ」といい、一般に ERP という場合には、そのパッケージそのものを指します。わが社を含めて、多くの外資系コンサルティング会社は、ERP パッケージを企業に導入する仕事を活発に行っていました。私が入社した頃から、製造業を中心に一部上場企業にも導入され始め、ERP 導入コンサルは、コンサル会社の収益の柱となっていました。


なかでも S 社は、ERP パッケージの販売で世界一の実績を誇っていました。その S 社が新しく作る金融部門のスタッフを探しているというわけです。


「こ、これだ ! 現状を打破するにはこれしかない ! ERP って何だかよくわからんが ……とりあえず、今の状況よりはマシにちがいない ……」


当時私は ERP のことなど全く知らなかったのですが、銀行をはじめとする金融機関の業務についてはそれなりにわかっているはずです ( ま、勤めていたのですから当たり前ですが …… )。


私は早速、直属の上司である T 部長に相談してみました。


T 部長 「え ? S 社に行きたい ? そりゃ良かった、良かった ……」


私 「良かったって ?」


T 部長 「いやね、今やってもらってる例のシステム監査なんだけど、そろそろ仕事なくなってきそうなんだよね。そうなったらタカシさんやることなくなるから、困ったなって思ってたんだよ ……」


私 「は、はぁ ?」


T 部長 「いや、とにかく ERP ってことは社内の部門の違うわけだから、少なくとも僕の責任じゃないわけだし …… いやぁ、とにかく良かった良かった …… じゃ、頑張って !」


どうやら上司の T 部長自身も、私の「使い道」に困っていたようです。でも、こんなハッキリ言わなくてもいいのに ……


私 「で、ものは相談なんですが、T 部長の方から ERP 部門の部長に話をつけるというか、私を推薦していただけませんかね ?」


T 部長 「え ? 推薦 ? あなた、何言ってんの ? 自分が希望して行きたいんでしょ ? じゃ、自分のことは自分でしなさいよ、んったくもう ……」


そう、自分のことは自分でやれ !、外資系というのはそういうところなのです。とにかく、T 部長からは OK が出たわけですから、あとは ERP 部門のヘッドに直接交渉するのみです。


「しょうがないなぁ、メールでも出すか ……」


私は ERP 部門のヘッドである K 部長に S 社記入部門への出向を希望している旨、メールを出すことにしました。K 部長とは面識はありませんでしたが、こうなったら当たって砕けろです。T 部長との仲も何となく気まずくなった以上、私に残された道は、S 社に出向するしかなくなったわけですから。


ERP 部門の K 部長にメールを出した 3 日後、K 部長の秘書さんから電話がありました。


秘書さん 「金融部門のタカシさんでいらっしゃいますか ?」


私 「あ、ええ、タカシです ! K 部長がお呼びでしたら、すぐに伺いますが ……」


秘書さん 「いえ、わざわざ来ていただかなくて結構です」


私 「へ ?」


秘書さん 「もう決まりましたから。あさってから S 社に行ってください。まず先方の担当者との顔合わせをしていただきます。9 時半に S 社の受付ということで ……」


私 「あ、あのぅ …… S 社金融部門への出向は、私に決まったんですか …… ね ?」


秘書さん 「そうですよ」


私 「いや、それならそうと、なんか辞令とか、K 部長から一言とか、「がんばれよ」みたいな、そういうの、ないんでしょうかね ?」


秘書さん 「そういったことは特に何も聞いてないんですけど …… あ、そう言えば ……」


私 「そう言えば ? ( ワクワク ) 」


秘書さん 「『自分で出向を希望したんだから、いいんじゃないの~』って、言ってましたけど」


私 「そ、それだけ ?」


秘書さん 「ええ」


がっくし ……


というわけで、私は何も期待されることなく、また何のねぎらいの言葉もない 
ままに、転職後初めての出向先である S 社に行くことになったわけです。

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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