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タカシの外資系物語

「編集」能力を磨け !2004.04.30

みなさまのおかげを持ちまして、今回のコラムがちょうど 200 回目となりました。ワー、パチパチパチ ( 拍手 ! )。


このコラムは週 1 回の連載ですので、200 回ということは、早いもので足掛け 4 年ということになります。日本の銀行から外資系企業に転職して、早や 7 年が経過しました。外資系での仕事のやり方を覚えて、自分の周囲が見渡せるようになったのは転職して 3 年目ぐらいからですから、それ以降に起こった出来事の大半は、このコラムに記載していることになります。


そもそも連載のきっかけは、あるフリーの編集者の方からの紹介でした。当時私は、前職の会社から、E ビジネス関連の本を出版する仕事を与えられていました。「本を出版する」といっても、本業のコンサルティングの合間、つまり週末や深夜にやれ ! ということでして、時間のない中、どのように進めていけばいいのか途方に暮れていました。そんなとき、本屋でふと目に付いたのが、その編集者の方が書いた E ビジネスに関する本でした。


「よーし、百聞は一見にしかず。この人に会って、話を聞いてみよう !」


私は藁にもすがる思いで、その方から教えを請うことにしたのです。


編集者 「…… 個人の文学作品でない限り、本を書くっていうのは、間違いなく共同作業なんですよ。一人で何でもやろうとしちゃダメ。タカシさんの会社なら、様々な分野のスペシャリストがいらっしゃるんでしょうから、まずはその人たちから E ビジネス関連の最新トピックスを聞き出して、面白そうな話題について原稿を書いてもらう。それをタカシさんが『編集』すればいいわけです」


私 「なるほどぉ …… そういうことなんですね …… いやぁーー、参考になりました。ありがとうございます !」


編集者 「じゃ、今度は私のお願いをきいてもらえますかねぇ ?」


私 「へ ? あ、どーぞ、どーぞ、私にできることなら何なりと ……」


編集者 「今、外資系企業を題材にした連載コラムが書ける人を探しているんですけど、だれかいい人いません ?」


私はとっさに、当時の直属の上司が適任だと思いました。彼は外資系企業での経験も長く、コンサルティング業界では、かなり有名な人物です。本も 5 冊ぐらい書いていました。彼なら週一のコラムぐらい朝飯前のはずです。


私 「それなら何とかなりそうです。私の方で心当たりがあるので、できるかどうか、すぐに確認してみますよ」


編集者 「よろしくお願いしますね !」


私は早速、上司に都合をきいてみました。しかし結果は「ノー」でした。本名や会社名を出せるわけでもないので、やっても意味がないと思ったようです。


「困ったなぁ …… 編集者の方に何て言い訳しよう …… トホホ ……」


私はこう見えても義理堅い方。一宿一飯の恩義も果たせないようでは、男タカシの名がすたります。私は編集者の方に、次のようなメールを送りました。


「編集者様 先日はお忙しいところ、ありがとうございました。お話いただいておりました「外資系コラム」の件ですが、どうも適当な人物が見つかりません。私に任せて …… なんてえらそうに言っていたわりには結果が伴わなくて申し訳ない限りです。そこで、代わりと言っては何なのですが、私がコラムを書くというのではダメでしょうか ? うまく書けるかどうか、全く自信はないのですが、精一杯頑張りたいと思いますので」


すると、すぐに返事が来ました。


「タカシ様 実は、タカシさんがそういうふうに言ってくれるのを待っていたんですよ。よかったです。管理職の方よりは、普通の社員の意見を全面に出したかったので。しばらくの間は、私が『編集』してからダイジョブさんに送りますから、タカシさんは思った通りのことを書いてくれればいいですよ」


以上のような経緯で、この「タカシの外資系物語」が始まったわけです。


しかし無事、連載が開始されたものの、最初のうちは A4 一枚の原稿を書くのに 3 時間ぐらいかかっていました。言葉遣いも不適切な部分が多く、その編集者の方にも、ダイジョブの関係者にも、かなりご迷惑をかけていたと思います。


それが、連載 50 回を超えたあたりからでしょうか、「コラムを書く」ことを中心にして、1 週間のライフサイクルを組むことができるようになっていったのです。平日は仕事をしながらも、何となくコラムのネタさがし。新聞や雑誌を読んでいても、「お、このネタ使える !」ってな感じ。そして週末に、頭の中にある一週間分のアイデアを『編集』して、一気にワープロで打ち込んでいくわけです。


さてさて、本を出版するときもコラムを書くときも、最も重要な作業は 『編集』 です。ワープロに向かってパチパチ入力していると、いかにも自分が何かを生み出しているように錯覚するのですが、その内容というのは、実は過去に自分が経験したこと、見聞きしたことを文章として表現しているにすぎません。重要なことは、自分の頭の中にある情報を、どれだけうまく選別していくかということに尽きます。


私にこのコラムを書かせた編集者のケースも同様です。彼女は自分の人脈を使って、「コラムの書き手を探す」という目的を達成しました。何人かの候補者の中から、最適な ( 私が最適だったかどうかは何ともいえませんが …… ) 人材を選んでいく作業は、多くの情報を編集していく作業に似ています。


日系企業と外資系企業の人材を比較すると、能力・スキルという意味では、どちらもそれほど大した差はないと思います。しかし外資系企業には、『編集』能力の高い人材が、日系企業よりも多いような気がします。つまり、「器」は同じなのですが、そこに入っている中身の「量」が多いのです。量が多いということは、質が高い情報が含まれる可能性も高いということになります。


また、外資系企業では自分が何をしなければならないか、つまり自分のミッションが明確です。ミッションが明確だと、情報を取り出す「基準」も明確になるわけで、本当に必要な情報だけを取り出すことが可能になるわけです。


例えば、次のように考えてください。みなさんもインターネットの検索エンジンを使って、情報を検索することがあると思います。日系企業と外資系企業の仕事のやり方は、以下のように説明できると思います。


1. 検索範囲 ・・・ 日系 = 日本語サイトのみ、外資系 = 世界中のありとあらゆるサイト


2. 検索条件 ・・・ 日系 = 曖昧 ( なので、何度も検索 )、外資系 = 的確 ( なので、すぐ終わる )


つまり、外資系企業の人材は、情報検索のうまい人材というわけです。


このことは、個人の能力に依存する部分もありますが、その企業の方針にも大きく影響しています。自社が属している業界だけの情報しか与えないようでは、情報の幅も限られてきます ( 1 の問題 )。また、会社としての方向性が曖昧では、社員は何をやっていのかわかりません ( 2 の問題 )。個人がスキルを磨いて、情報のアンテナを張り巡らせることは重要ですが、やはり個人の力には限界があります。


ですから、外資系企業では個人が情報を蓄積するため、サポートに思いのほか投資します。それは、社内のナレッジをデータベース化する「ナレッジシェアリング」や、顧客情報を一元化する「CRM ( Customer Relationship Management ) システム」など様々ですが、このようなインフラが外資系マン ( ウーマン ) の持つ情報の源泉になっているのは事実だと思います。


私は日系 1 社、外資系 2 社を経験していますが、個人の能力だけで判断すれば、日系の銀行員時代の同僚や上司が一番優れていたと思います。しかし、パフォーマンスという観点では、外資系 2 社に劣ります ( なにしろ、その日系銀行は破綻してしまったわけですから、パフォーマンスもへったくれもないのですが )。今でも、どうしてあんなに優秀な集団が集まって、会社を倒産させてしまったのか不思議でならないのですが、少なくとも、上で述べた 1・2 の観点では、非常にお粗末なものだったと思います。社員の質はそれほど高くなくても、それなりの情報量を確保し、情報の出し方を明確にしてやれば、会社はそれなりに発展していくということですかね。


とはいうものの、外資系に所属しているからといって、会社にばかり頼っているわけにはいきません。私は自分自身の情報量を増やし、出し方の切り口をより的確にする = 情報の編集能力 を磨くためにも、このコラムを大切にしていきたいと思います。ペンネームとはいえ、自分の文章を多くのみなさんが読んで、何かを感じてくれるのは快感 ! この機会を与えてくれた編集者の方や、ダイジョブのみなさん、そして何よりも読者のみなさんに感謝しながら、これからも頑張っていきたいと思っています。


なーんて言いながら、これも締切日翌日の早朝に書いてたりして …… いくら情報豊富で、出し方が明確であっても、作業そのものの「ナマケ癖」はどうにもならんようで …… 編集の方、来週からは締め切り守りますので、許してください …… トホホ …… ( なーんてことを 200 回続けています )。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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