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タカシの外資系物語

Pursuit Team 結成 ! ( その 1 )2004.03.12

ある日の朝、オフィスに着くと、以下のようなメールが来ていました。


「おいおい、来たよ、来たよ、久しぶりに外資系らしいメールが …… どれどれ ……」


Gentlemen, 
One of the most important initiatives for XX consulting this year and for the next few years is XYZ. This initiative will create the next generation of core systems for Japanese clients by leveraging new technologies to provide a much more flexible and dynamic platform …


You have been selected to join myself as the consulting part of the overall XYZ pursuit team. We are excited by the opportunities we see for the XYZ solution in the Japan market and beyond. Our efforts will be integral to the success of this initiative …


I look forward to working with each of you as members of the pursuit team


Best regards, 
Nick


「いやぁー諸君、元気かね ? XXコンサルティングが今後数年、力を入れていく分野として「XYZ」というシステムがあるのを知っておるかいのー。これはすんごくいいシステムだから、日本でも絶対売れるに決まっておる。私が言うのだから間違いない !


で、だ。諸君は私がチームメンバーとして選んだ 1 人なのだよ。光栄だと思わんか ? 精一杯、頑張ってくれたまえ。楽しみにしているよ。ぶぁっはっはっは ! ニックより」


和訳のテストなら 0 点かもしれませんが、私の頭に残ったのは、まぁこんなもんです。ニックというのは、金融部門のパートナー ( 普通の会社で言えば、執行役員クラス ) です。実際に会ったことはないのですが、恰幅のいいアメリカ人を想像します。赤を基調としたネクタイに、ブルーのYシャツ、派手なカフス。ミネラルウォーターしか飲まないのに、なぜか太っている …… ( 私のイメージ )


「ま、いいや。とにかく返事出しておこう ……」


このメールでは、返事を明確に要求されているわけではないのですが、こういうケースではできるだけ早く返事を出した方がいいのです。日系企業なら、この手のメールに対して、「はいはい、わかりましたよ ……」なんて感じで、軽く流してしまうことも許されなくはないのでしょうが、外資系企業ではそうはいきません。


返事を要求していてもいなくても、それなりの地位の人から、格下の自分宛にメールが来たわけです。そのメールを見てどう思ったのか、何か問題はないのか、そういうことをいち早く相手に伝えることがエチケットなわけです。何となく当たり前のように思われるかもしれませんが、「あ ・ うん」の呼吸に慣れた日本人にはなかなか難しいことです。「返事しなくてもわかってくれるよな」という淡い期待を抱いてはいけません。


実は私、前職時代に、同じようなケースで失敗したことがあるのです。そのときも、役員クラスから、あるチームに参加するように連絡を受けたのですが、単なる連絡メールだと思って、特に何も返信しませんでした。それから 3 日後のこと、メールを送信した役員の秘書さんから私宛に連絡がありました。


「タカシ、どうして返事しないの ? もう、カンカンに怒ってるわよ !」


その役員、そもそも非常に短気な人だったのですが、この手のメールを送って返事がなかった経験がないとのこと。私は彼にとって、「 3 日間無視 !」という記録を作ってしまったようです。ということで、私はメールを見てすぐに、以下のように返事のメールを出しました。


Dear Nick,


I am very excited about joining the XYZ Pursuit Initiative Team. 
Thank you for the opportunity.I hope I can make a valuable contribution.


I look forward to working with everyone else in the team!


Regards, 
Takashi 

「ニックさん、チームに参加できて非常にうれしく思っています ! 精一杯、頑張りますのでヨロシク ! タカシ」

1 週間後のこと、当チームのキックオフ ・ ミーティングが開催されました。会議室に入ると、恰幅のいい外国人が豪快に足を組んで座っています。それは私がイメージした通りの Nick、まさにその人でした。


「Hi, Takashi ! How are you? Hahhahhahha --- !」


「( そ、想像した通りじゃねぇか …… ) Hi, Nice to meet you! 」


チームの正式名称は、「XYZ pursuit initiative team」。” pursuit “ というのは「追跡」、”initiative” というのは「主導権」です。ま、「XYZシステムを頑張って売るチーム」という感じでしょうかね。チームリーダーは Nick ではなく、金融部門で新規事業を手がける S 部長( 日本人 ) が着任しました。S 部長は、これまで新規のソリューション ( 製品とサービスを融合したもの ) を専門に営業していたのですが、とりあえず、今後 2、 3 年はこの「XYZ」というシステムを売ることに専念することになりました。


私は入社当初から S 部長を知っていました。実はこの「XYZ」というシステム、私が言うのもなんですが、非常にいい商品でして、私は入社当時から前職時代のお客さんに営業していたのです。S 部長とも一緒に顧客訪問したことがあり、今回の私のチーム入りも、S 部長の口添えがあったことは間違いありません。S 部長は会議冒頭の挨拶で、次のように言いました。


「みなさんもご存知の通り、わが社は今後数年の間、XYZ を重点的に販売するという戦略を決定しました。私もここ 1 年ほど、新規ソリューションの 1 つとして XYZ の営業をしてきたわけですが、もっと本腰を入れれば、この商品は必ず売れると感じています。そのためには、商品を十分に理解した上で、組織的な対応をしなければなりません ……」


S 部長の英語は、飛びぬけて流暢なわけではないのですが、理路整然としていて非常に聞きやすいものでした。Nick も腕組みをして、ウンウンとうなずいています。


「…… というわけで、本日は、実際に XYZ システムをクライアントに導入したことがあるオーストラリア・オフィスからゲストを招いて、XYZ の機能と導入方法についてレクチャーしてもらうことになりました。これを受けて、この 1 ヶ月の間に、pursuit team で、顧客毎の詳細な営業計画を練りましょう !」


そう言えば、Nick の横で別の外国人が 2 人、ニコニコしながら座っています。彼らはオーストラリア事務所からやってきた、インド人コンサルタントでした。オーストラリアの銀行に XYZシステムを導入したときのケーススタディを、約 1 日使って教えてくれるようです。


「こりゃ助かるなぁ ……」私は一番前の席に移り、気合十分でレクチャーを受けることにしました。


「うぅぅ …… 全然わからん、ね、ねみゅい …… Zzzzz ……」


一番前の席に移ったのはいいのですが、彼らの言っていることが全然わかりません。その講師、ドイツに留学したことがあるらしく、ときどきドイツ語が混じります。そして激しいインドなまりの英語。ま、日本人の英語なんて、ネイティブにとってはもっと聞きづらいのでしょうから、あまり偉そうなことは言えないのですがね。


講義の内容自体はパワーポイントの絵を見れば、だいたいの想像はつきました。非常にオーソドックスなシステム導入コンサルティングの説明をしているようです。これぐらいの内容なら、日本のコンサルタントだって理解しているのですがね。彼らにしてみれば、日本 = レベルが低い = 基礎から教えてやらねば、という感じなのでしょう。


私を含めた数名がコックリコックリやり始めた頃、Nick は違う理由でイライラしていました。そういえば、Nick とわれわれ日本人の意識は、最初からなんとなくずれているような気がしていました。彼は米国本社から、日本のマーケットで「XYZ システム」を販売するというミッション( 本社からの命令 ) を受けています。初年度の目標は 5 million$ ( 約 5.5 億円 ) とのこと。一方で、チームリーダーの S 部長は、売上よりもまず日本人がXYZシステムを理解することを重視しています。最終的な目標は同じでも、2 人の現状の意識には、若干の温度差がありました。


Nick 「OK! ちょっと話題を変えないか ? 諸君も XYZ のシステムの概要は、だいたい理解してくれたと思う。これからの数時間は、それを日本のクライアントに売っていく方法を、より具体的に考えていこうじゃないか。話を具体化するために、A 銀行の事例で考えてみよう」


おいおい、ちょっと待ってくれよ。A 銀行って、私と S 部長が営業をかけている銀行じゃないですかーー ! みんなの前で話ができるほど、まだ営業活動が進んでいるわけじゃないのに …… それも英語でなんて無理だよ …… トホホ ……


私は助けを求めようと、うしろに座っている S 部長の方をチラッと見ました。がーーーーーーん ! 座っているはずの S 部長がおらん ……


「S 部長、緊急の打ち合わせだって」


タカシ、ピーーーンチ !


Nick 「Takashi, please talk about the A bank case.」


( 次回に続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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