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タカシの外資系物語

Be "Challenging" !2004.02.13

みなさんにとって、「不可能」というのはどのくらいのレベルを指しますか ? 「自力で空を飛べ !」とか、「100 メートルを 5 秒で走れ !」と言われたら、これは間違いなく「不可能」でしょう。では、「年収を 2 倍にしてみろ !」ならどうでしょう ? 何となくできそうな気もするけど、でも難しいな …… やっぱ不可能 …… こんな感じですよね。


ナポレオンの辞書には「不可能」という文字がないそうですが、彼は空を飛んだわけでも 100 メートルを 5 秒で走ったわけでもありません。確かに、年収を 2 倍にすることよりははるかに困難なことを成し遂げたのでしょうが、絶対にありえないこと、完全に不可能なことをやったわけではないように思います。


私はこう見えても、わりと楽観主義の方だと思っています。空は飛べそうにはないですが、年収 2 倍は必ず達成したいと思っていますし、1 億ぐらいなら可能なんじゃないかと本気で思っています ( 全然、「当て」はないんですけどね …… )。このように考えている一方で、私は年収が半分、もしくは 5 分の 1 になることもあり得ると考えています。なので、今のうちに他の業界でも通用するスキルを身につけなければならないとか、コツコツ副業に励もうとか、そんなことも考えています。


一方、日系企業に勤めている人の多くは、「年収 2 倍なんて、非常に困難だ、ほとんど不可能だ …… 」と考えているような気がします。彼らは無意識のうちに、今の会社にずっと勤め続けることを前提に話をしがちです。その前提で、物事を逆算して考えるのです。「今の年収の 2 倍ってことは、ヒラの役員ぐらいかな。待てよ、そもそも俺って役員になれるかな …… 役員の数減ってきてるし、同期も多いし、社内の学閥からもはずれてるし、やっぱ無理だねこりゃ …… 」となってしまうわけです。


私のように外資系企業に勤めていると、自分と同年代でありながら 2 の年収を得ている人が、ザラにとは言わないまでも、それなりに存在します。つまり「やり方」次第 ( 「運」次第という説もあるが …… )で、年収を 2 倍にした例が身近にあるわけです。なので、私は年収を 2 倍にすることを「不可能」だとは思っていないのです。


さて、私が外資系企業に転職せずに、ずっと日本の銀行に勤めていたとしても、同じ考えを持つことができたでしょうか ? 答えは「NO」です。なぜなら、私はこのような考え方を外資系企業で学んだからです。以下でそれを説明しましょう。


当然のことですが、外資系企業においては、社内文書や提案書を英語で書く機会がかなりあります。私の英語力はかなり怪しいのですが、それでも「書く」というのはそれなりに自信がありました ( 「聞く」「話す」に比べればマシだ、というレベルにすぎませんがね )。にもかかわらず、あるコトバについてだけは、ボスや同僚から毎回修正されていました。それは、"difficult" "hard" ( 困難だ、難しい )、"impossible" ( 不可能だ ) などという単語でした。文章自体の意味や文法は間違っていないはずなのに、これらの単語を使うと、決まってあるコトバに書き換えられてしまうのです。そのコトバこそ外資系が最も好きなコトバ、"challenging" ( チャレンジング ) なのです。


" challenging" ( チャレンジング ) を辞書で引くと、「取り組み甲斐のある、( 困難だが ) やりがいのある」となっています。つまり私の英文を修正したボスや同僚は何を言わんとしているかというと、「難しいとか、できないと書くな !( そんなことは言われなくてもわかっておる ) 困難だがやりがいがある、取り組み甲斐がある、と書かんかい !」と言いたかったわけです。


そんなこと言ったって、無理は無理、難しいものは難しいじゃねぇか。「今期の部門収益は前期の 2 倍を目標とする」だとーぉ ? んなもん、不可能じゃ不可能、ミッション・インポッシブル !  最初のうちは、私もそう思っていました。しかし、ボスや同僚の書く "challenging" の文章と、私の元の文章を比較すると、何かが違うのです。


( 私の文章 ) It will be very hard to reach the target revenue. 目標収益を上げるのは、非常に困難です。


( ボスや同僚の文章 ) It will be very challenging to reach the target revenue. KSFs (Key success factors) are the following … 目標収益を上げるのは、非常にチャレンジングです。これを達成するためのキーサクセスファクター ( 成功の鍵 ) は以下の通りです。


両者を比較してみると、私の文章が「困難だ、できない」とだけ言いっぱなしにして終わっているのに比べ、ボスや同僚の文章は「非常に難しい目標ではあるが、いくつかの要素 (KSF) をクリアできれば達成できるかもしれない」という、極めて前向きな表現になっています。これって何だか、冒頭の「年収 2 倍」の議論に似ていると思いませんか ?


" hard" で文章を書いてしまうと、「難しい、できない。だからこれ以上考えない」となってしまい、話がそれで終わってしまいがちです。一方、"challenging" の文章では実行することが前提になっていますので、「難しいけど頑張ろう。これがクリアできたら何とかなる」という具合に、話を前向きかつ具体的に展開することができます。


外資系企業が難しい課題に対して "difficult" "hard" "impossible" というネガティブなコトバを使わずに、"challenging"を使う理由は、まさにこういうことなのです。「無理だ ! 無理だ !」と言う前に、できる方法を考えろ、実現している会社もあるんだから、とまぁ、こういうことですね。言葉遣いの問題と言うよりは、気合というか気構え、考え方の問題かもしれません。


以上のようなわけで、外資系に長く勤めている私としては、ちょっとやそっとのことでは「不可能」というコトバを使わなくなってしまいました。「不可能」に近いような内容であっても、「チャレンジング」を使うことで発想そのものを前向きに転換します。外資系の人が何となく自信にあふれているように感じるのは、常にこのような考え方をしているからかもしれません。


ただし、これについては注意すべきこともあります。それは、"hard" "impossible" を "challenging" に書き換えたところで、達成可能性自体が変化するものではないということ。つまり、難しいものはだれが何と言おうと難しいわけで、"challenging"と書いてあるから簡単になるわけではないのです ( 当たり前ですが )。


例えば、あなたがある外資系企業と一緒に仕事をすることになったとしましょう。外資系企業の連中は、あなたが一見不可能だと思ったことについて、"challenging" を多用することで、さも簡単なことのように説明します。あなたにしてみれば、それまで付き合っていた日系の業者が「できない、難しい …… 」と後ろ向きだったのに比べると、非常に新鮮かつ頼もしい感覚を持つことでしょう。しかし、外資が言う "challenging" は非常に幅の広いコトバでして、例えば可能性が 10% 程度のときにも平気で使われます。可能性が 10% なら、日本のビジネス感覚では、普通は「かなり難しい、不可能」ですよね。このあたりの感覚の違いを理解しないと、痛い目に遭うことがありますのでご注意ください。


あと、外資の連中が "challenging" を使ったときには、必ず KSF ( 成功の鍵 ) を確認することをお奨めします。外資の連中すべてが物事をロジカルに考えられるかというと、実はそうではなく、中には論理的な思考が全くできない連中もかなりいます。こういう連中は、「収益を 2 倍にする成功の鍵は、価格を 2 倍にすることだ !」などと平気で言うわけです。価格を 2 倍にしたら、普通は商品がうれなくなりますから、販売量を一定と仮定しているこの論理は成り立ちません。これではまるで、


It is challenging to fly . The key success factor is that you have your own wings. ( 空を飛ぶことは難しい。が、やりがいがあることだ。成功の鍵は、自分自身の翼を生やすことだ )


と言っているようなものです。論理的に考えられた KSF は、「価格を上げても販売量が落ちない策」または「販売量が落ちても、その下落率を上回る価格を合理的に設定する策」ということになります。重要なことは、"challenging" というコトバに後に、彼らが何を言っているかということです。


いずれにしても、"challenging"というのは、自分で使う分にはすばらしいコトバだと思います。日本語でぴったり対応する単語がないのも、やはり従来の日本人が持っていなかった概念なのかもしれませんね。


みなさんも、困難を前向きに考える「Be " Challenging " 」の精神で、何事もあきらめずに頑張っていきましょう ! ナポレオンのように、睡眠 3 時間で ! …… と、ま、もうちょっと寝ましょうかね、睡眠 4 時間で ! …… と、冬場の朝は辛いんだこれが、3 月までは睡眠 5 時間で ! …… だ、だめだこりゃ、トホホ ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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