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タカシの外資系物語

スッキリ ! 契約更改2004.02.06

「契約に伴う申請は、今週金曜 24:00 が締め切りです。みなさん、忘れないように !」


私が転職した会社では、社員は毎年 1 月の初めに契約を更改します。そして 2 月からは、晴れて新しい契約 (= 給料 ) のもとで仕事をすることになります。


では、そもそも「契約更改」とは何なのでしょう ? 例えば私の場合は、現在勤めている会社と年俸ベースでの契約をしています。イメージ的にはプロ野球選手の「契約更改」と同じようなものだと思ってください。年俸はその人のランク ( 職位 ) に前年の業績等を加味して決定されます。「ランク」の部分は、同じランクならだれでもほぼ同じ金額です。例えば私はマネージャーなので、この部分に関しては他のマネージャーと同額のはずです。


問題は、差が出る「前年の業績等を加味」の部分です。実は、業績に連動する部分は年俸とは別枠の「ボーナス」で支払われています。ここで言っているのは、業績 ( 稼いだ金額 ) そのものに連動する部分ではなく、業績を「加味」ということなので、ボーナスとはニュアンスが少し違います。わかりやすく言うと、こういうことです。例えば私が前年に大きな売上実績を上げたとします。売上に連動する分はボーナスとして支給される ( 例えば、売上の 1% てな感じ ) わけですが、「タカシは今年も頑張ってくれるはず。期待してるよ ! 」という「期待料」として、年俸そのものに上増しされる分があるのです。あと、一般企業でいうところの「ベースアップ」分もこれに含まれます。ただ外資系企業の場合は、この金額はスズメの涙ほどでして、ほとんどあってないようなものです。つまり、ランクが上がるとか、収益を稼ぐとか、何らかの「目に見える出来事」がなければ給料は上がりません。「去年と同じ」では何も起こらないということであり、自動的に上がっていくベースアップのような概念はありません。


さてさて、これで終わりかというと、実はもっと重要な部分があります。それは、「前年の業績等」の「等」という部分です。「等」とは何だ、「等」とは …… なんとも曖昧な表現、グレーすぎます。一説には、同じランクで入社したにもかかわらず、そもそも入社時から金額が異なるケースがあり、その差額を表しているとも言われています。例えば、私が身を置くコンサルティング業界にも、明確な「会社の序列」が存在します。そして序列毎に、同じランクであっても給料の基本額が違ったりします。仮に A 社が業界のリーダー格だとすると、A 社の給料は同業他社よりも 2 割ぐらい高かったりします。なので、A 社より格下の B 社が、A 社の人材をスカウトする際には、いくらかの「ゲタ」をはかせて上増し提示しなければ B 社に入社してくれないという事情があるのです。これが「等」の部分です。


これ以外にも、優秀な人材が辞めたいとゴネたとき用の「引止料」だとか、幹部が個人的に気に入っている人材に対する「お小遣い」だとか、過酷な勤務で体を壊した人に対する非公式の「見舞金」だとか、様々な説があります。もしかしたら、これら全てを指しているのかもしれません。「等」の部分、恐るべしです。


しかし、あまりこの部分に立ち入ってはいかんのです。みんなが存在は認めているが、ベールに隠されている部分、外資系にはそういうのが山ほどあるのです。一方では、そのようなブラックボックスをなくして、透明性が高く標準的かつ画一的な評価にすべきだという意見もありますが、個人的にはそれでは面白味がなくなるような気がします。確かに「透明性が高く標準的かつ画一的な評価」というのは、コトバの響きはかっこいいと思います。しかし、その評価を実現するためには、「完璧な評価システム」を前提としていることを忘れてはいけません。


私はこの世に、完璧な評価システムなど存在しないと思っています。稼いだ金額だけを定量的に評価してしまうと、みんなが安易に稼げる案件に流れ、会社としての中長期的な視野が失われます。逆に、困難な案件へのチャレンジを重視する定性評価では、短期的な収益が積み上がっていきません。つまり評価に関しては、どこかに「鉛筆をなめる」部分を残しておかないと、うまくいかないのです。


「そんなことをしたら理不尽な年俸査定がまかり通るじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、そうでもないのですよ、実際のところは。だれがどのくらいもらっているかは、何となくわかりますし、私が知る限りそれはそれなりに妥当な金額だと思います。外資系企業というのはそういうバランスをうまくとっていくノウハウがあるのだと、あらためて感心させられます。


話がかなり脱線してしまいました。ここで、私の給料の中身を整理してみましょう。


( 年俸 ) 固定 ⇒ 業績を上げようが上げまいが、事前に約束されている分


( 1 ) ランクに依存する金額 ( みんな平等 )


( 2 ) 前年の業績を加味する部分 ( 前年に実績を上げた人は上増しされる )


( 3 ) 「等」の部分 ( かなり不平等と思われる。アンタッチャブルな部分 )


( ボーナス ) 変動 ⇒ 業績を上げればもらえるし、上げなければ「ゼロ」もあり得る


上記のうち、( 1 )( 2 )( 3 ) というのは勝手に決められてしまうというか、そもそも決まっているというか、雇われている身としてはどうにもならない部分です。またボーナスについては、「業績」という結果に基づいて支払われる分なので、やってみなければわかりません。


では、「契約更改」で何を決めるかというと、実は(年俸)と(ボーナス)の「割合」を決めているのです。私の会社の場合、確定済の年俸を「100」とすると以下のようなパターンになります。


( A ) 年俸「 90 」( 確定 ) ボーナス「0~20」( 未確定 )


( B ) 年俸「 70 」( 確定 ) ボーナス「0~80」( 未確定 )


( C ) 年俸「 50 」( 確定 ) ボーナス「0~150」( 未確定 )


( A ) の場合は、「 90 」は手取り確定ですが、いくら業績を上げたとしても年俸+ボーナス合わせて「 110 」しかもらえません。一方、( C ) の場合、確定分は「 50 」しかありませんが、業績次第では合計「 200 」もらえます。さて、みなさんならどれを選択しますか ?


一般的に、外資系企業の給料は日系よりも高いと言われています。しかし、年俸「100」の部分だけを比較すると、実は大きな差はないのです。外資系の方が高くなっているケースというのは、未確定であるボーナス部分で稼いだ場合にすぎません。つまり、結果次第では「100」以下も十分にありえるわけです。


私の会社では、( B ) を選択する人が一番多いようです。実は私も ( B )です。( C ) も魅力的ではありますが、正直言ってちょっとこわいです。何と言っても、結果次第では半分しかもらえないわけですから、住宅ローンをかかえる身としてはリスクが大きすぎるというわけです。( C ) を選択する人は、全体の 10~15% ぐらいでしょうか。「余程自分の仕事に自信があるのだろう」と思われるかもしれませんが、実はそういうわけでもありません。彼ら ( 彼女ら ) の大半は、大規模かつ継続的な案件を持っている人です。要は、ある程度の「玉」を持っているのです。非常にうらやましい限りですが、ま、そういうのも実力のうちです。


一方で、( A ) を選択する人はほとんどいません。暗黙の了解というか、会社からの暗黙の圧力で、( A ) は選択できないことになっています。会社の経営陣としては、( A ) を選択するような人は、会社には必要ないと、本気で思っています。ひどい会社だなと思われるかもしれません。でも、私も会社と同じ考えです。なぜなら、( A ) のような契約では、業績を上げようが上げまいが結果はほとんど変わらないので、「頑張って働こう ! 収益を上げよう !」というインセンティブがわきません。例えば、同じチーム内に ( A ) 契約の人がいたら、仕事が非常にやりにくくなります。チームワークというのは、ほぼ同じ目標を共有する人たちの中に芽生えるのであって、背負っているリスクが違いすぎるとうまくいきません。あまりハイリスク型にするのも考えものですが、少しぐらいのリスクがないと人間は実力以上に働かないと思います。


冒頭のアナウンスの通り、わが社の契約更改申請の締め切りは今週金曜日です。2 週間ほど前のこと、人事部から私のところに「来期基準年俸額 ( 100 に当たる金額 )」が送られてきました。以前から勤めている人はこの金額そのものについて交渉するのでしょうが、私の場合は昨年 10 月の入社時に金額を事前に知らされていましたから、これに関しては同意済みです。残りは、( B )、( C ) どのパターンにするかということです。


「ま、普通は ( B ) でしょねっと。しばらく様子見ないとわかんないしね ……」


私は契約申請用のシートに「パターン ( B )」と記入して、人事部に返送しました。


ほっ ! 別に、タフな交渉作業をしたわけでもないのに、何やらスッキリした気分です。外資系企業に転職して 7 年になりますが、毎年同じような感覚になるのが不思議です。これは日系企業では味わえない感覚のような気がします。自分の価値 ( 年俸 ) とリスク ( ボーナスのパターン ) を見直し、自分の弱点を認識する、こんな機会でもなければ、あらためて考え直すことなんてないですからね。


松井やイチローにははるか及びませんが、こんなスーパースターたちと比較して「とほほ ……」となっても仕方ありません。はるか彼方にある夢の大台 ( ま、「億万長者」って言うぐらいですから、1 億円としましょうかね ) 目指して、明日からもまた、頑張っていきましょう ! ダーーーーーーーーーー! ( イノキ風 )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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