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タカシの外資系物語

リストラによる転職 ( その 1 )2004.01.16

みなさん、新年明けましておめでとうございます。今年も 『タカシの外資系物語』 をよろしくお願いいたします。


さて、私は今、ある銀行のプロジェクトに参加しています。そのプロジェクトとは、人件費削減を目的としたもので、はっきり言えば「リストラ」のお手伝いをしています。プロジェクトにおける私の役割は、ある手法を使って、どの部分に余剰人員がいるかということを割り出すというもの。ま、計算そのものは大したことないのですよ、実際のところ。この手のプロジェクトで一番難しいのは、計算した後の「説得作業」にあるのです。


タカシ 「あのですね、計算結果から判断すると、○○部には課長クラス以上の人材が多すぎると思います。この部署の業務内容から見たスパンオブコントロール (Span of Control、1 人で管理できる人数の限界値 ) から言えば、課長 1 人に部下 8 人が適当です。でも○○部には、課長 1 人に部下が 4 人しかいない。これなら、課長さんを半減できますよ」


銀行の担当者 「ううぬぅ …… タカシさん鋭い …… やっぱりそう来ましたか ……」


タカシ 「やっぱり、って …… わかってるんならサッサと対処しないといけませんよ ! しょうがないなぁ、もう ……」


人員削減などのコンサルティングでは、われわれコンサルティング会社が参画する前から、ムダな部門のだいたいの目星がついているケースが多いと思います。ではなぜ高いコンサルティング料を払ってわれわれを雇うかといいますと、コンサルタントを雇う企業としては外部の人 (= 赤の他人 ) にそれを言い放って欲しいだけなのです。要は、内部の人間が内部に対して、「アンタ、ムダだからクビ !」と言えないのです。


銀行の担当者 「タカシさん、それを来週の部長会議で言ってくれませんかね」


タカシ 「そりゃね、私もお金もらってますから、言えっちゅうなら言いますけど …… でもね、これはおたくの銀行自体の話なんですから、内部の方がきっちりと認識した上で話された方がいいと思うんですけどね …… つらいのもわかるんですが ……」


銀行の担当者 「私が悪者になるのは一向に構わんのですがね。なんかこう、自分で自分のクビ絞めてるって言うか、明日はわが身っていうか ……」


…… な、泣ける話や …… ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ( T-T )


リストラの手助けなんて、何ともヤクザな商売をしているわけですが、このような状況は、何もこの銀行に限ったことではありません。私が所属するコンサルティング会社でも、プロジェクトの 40% ぐらいはリストラ関係と言っても過言ではないぐらい、企業は活発にリストラを仕掛けています。そしてその対象年齢も、一昔前なら 50 歳以上だったものが、最近では 40 代や 30 代にまで下がってきているのです。なんとも世知辛い世の中になったものです。


ただし、「リストラ、リストラ」とはいうものの、簡単にクビを切っているわけではありません。人員を削減する企業の方も、再就職の支援をしたり、割増の退職金を出したりといろいろと考えています。私は職業柄、リストラを進めている企業の方々と話をする機会が多いのですが、リストラ推進役の彼らだって好き好んで人員を削減しているわけではありません。いま人を減らさなければ、会社そのものが傾いてしまう、それこそ断腸の思いでリストラを行っているわけです。私がお手伝いしている銀行の担当の方も、「最終的には、自分自身をリストラする覚悟はできている」とおっしゃっていました。彼は働き盛りの 45 歳なのに、です。


心情的には、私もリストラには反対です。しかしこれまで長い間、日系企業は合理化を怠ってきたわけですから、ツケが回ってくるのは当然のことです。どこかの段階で、思い切った人材の入れ替えをしなければならないというのも一理あるでしょう。今こそ、みんなが一致団結して、困難に立ち向かうときなのかもしれません。


一方で、非常に陰湿なやり口でリストラを進める企業も存在するようです。よくあるのが、完全に仕事を奪い取って、窓際に追いやってしまうようなケースです。実は、日本の外資系企業でリストラされる場合は、このケースがほとんどだと思います。日本においては、いくら外資系企業とはいっても、「アンタ、クビ !」と言われるケースは少ないのです。もちろん、年俸制のディーラーや営業職のように明確な契約を結んでいる場合や、欧米の本社が日本法人の部門ごと撤退を決めたような場合には即刻クビになることもあるようですが、それ以外の多くは徐々に「干されていく」ケースがほとんどです。


実は私も前の会社で、リストラ対象になったことがあります。そのときは、私が所属する部門の売上が極度に悪かったために、部門に所属する 10 名程度が干されました。最初は他部門のお手伝いとか社内研修の講師とか、そういった作業が割り当てられなくなりました。次には、全社レベルのミーティングに呼ばれなくなったり、呼ばれても極度に発言機会がなかったり、というように、徐々に無視されていくわけです。その結果、忙しい部門はどんどん忙しくなっていき、ヒマな部門は完全に浮き上がってしまいます。


この状態で、何人かの同僚はいたたまれなくなって会社を去りました。いま思うと、先に辞めていった人ほど、仕事ができる優秀な人だったように思います。私もこの段階で辞めようかと考えたのですが、「いや待てよ。悪いのは部門長であって、スタッフじゃないよな。これで辞めるのは理不尽だ。もう少し様子を見るか ……」と思いとどまりました。幸運にも私の場合には、他部門からの誘いがあったので、しばらくはそっちに「一時避難」していたわけです。


半年ほどすると、様子が変わってきました。米国本社の方針が変わり、その部門に多くの仕事が来るようになったのです。結局私は、自分の志向が本社の方針に合わなかったために転職してしまいましたが、それは干されたから辞めたのとは違います。いずれにしても、部門としては干されることがなくなったというわけです。このように、外資系企業の方針は短期間に変わる可能性が高いので、ちょっと干されたぐらいで辞める必要はありません。何とか耐え忍んでいれば、そのうち方針が変わって元通りになるかもしれません。仮に元通りにならなかったとしても、干されている時間を「有効に」使って、転職活動をするという手があります。要は、過度にうろたえてはいかんということです。


私は基本的には、日系企業においてもこのことが当てはまると思っています。ちょっと干されたからと言って、辞めるべきではないのです。しばらくすると状況が変わるかもしれません。 40 代や 50 代のように、それなりの年齢の場合には、動きたくても動けないというケースもあるかもしれませんが、 20 代や 30 代の場合でも、安易に転職すべきではないと思います。「リストラ」というのは、雇用されている側からすれば、企業側の勝手な言い分に過ぎません。確かに、そこで働いていた社員にも責任はないとは言えませんが、一義的に悪いのは経営陣です。仮に仕事を干されても、図太い神経を持って、しばらくやってみる方がいいと思います。


「お、マサルからだよ。久しぶりだな」


銀行員時代の後輩にあたるマサルから年賀状が来ました。


「タカシさん、お久しぶりです。お元気ですか ? 少し相談したいことがあるので、ご連絡いただけないでしょうか ?」


なんちゅう年賀状だ …… 私は早速、マサルに電話することにしました。


「あ、マサル ? タカシですけど」


「タカシさん、お久しぶりです」


「で、相談事って、何 ?」


「実は外資系に転職しようと思って …… 今の職場で、オレ、完全に干されてるんですよ」


さぁ大変です。マサルの転職理由は、リストラの典型的なパターン。


「わかった。詳しく話してみな ……」


私はマサルの話から、日系企業が行っている陰湿なリストラの実態を知ることになります。

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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