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タカシの外資系物語

外資系企業の中途採用戦略2003.08.29

「業容拡大のため、中途社員 200 人募集中 !」


外資系企業の求人広告などでよく目にするフレーズです。なるほど、この会社は業績がいいから、即戦力の人材を増強しようとしているんだ …。それは見た目には正しい解釈かもしれません。しかし、実態はどうなのでしょうか ?


そのことを確認するために、その求人企業の在籍社員数 ( 現状のもの ) を見てみましょう。それが数万人規模の会社なら、今の業容を確保したままで、何か新規事業を始めようとしている可能性が高いと思います。でも、それが千人程度、あるいは数百人レベルの会社なら …。その会社では、業容拡大というよりも、リストラを伴った「大手術」をしている可能性があるのです。


これを理解するためには、外資系企業における人事戦略の考え方を理解する必要があります。多くの外資系企業では、経営陣が変わると非常に大きな「変革」を実施します。企業を変革するために一番手っ取り早い方法は何かというと、人を入れ替えるということです。例えば、今年の阪神タイガースを考えてみてください。めちゃくちゃ強いですよね。で、その阪神、実は去年もいた選手が今年になって急に力を発揮したわけではありません。去年のメンバーと比較すればわかるのですが、今年のレギュラーは半分ぐらいが去年と異なります。つまり、阪神はメンバーを大幅に入れ替えることによって、心機一転、新たなチーム「新生・阪神タイガース」として成功したのです。同じことが企業でも当てはまるわけで、短期的に会社を変革して成果を挙げるため、またはトップの方針を明確にするために、人の入れ替えは非常に効果的な施策というわけなのです。


話を戻しましょう。 1000 人規模の外資系企業が、 200 人の新規採用を実施する場合、純粋に 200 人を追加しようというケースは少ないと思います。おそらくは、新規に 400 人ぐらい採用して、既存社員を 200 人解雇し、結果として 200 人増えて 1200 人とする計画ではないかと思われます。短期間に全体の 3 分の 1 が「新しい血」となれば、会社の雰囲気もガラッと変わってしまい、これはもう新会社と言っても過言ではありません。


私が勤めている外資系企業も、このようなプロセスを経て、現在の姿になりました。私が面接試験を受けていた頃 ( ちょうど 6 年前 )、従業員数は 600 名程度だったようです。そこに、私を含めた中途採用組が 100 名、M&A で買収した企業の従業員が 100 名、合わせて 200 名が、私が入社する前後半年ぐらいの間に増員されました。これで合計 800 名になるはずですが、いざフタを開けてみると、従業員数は 700 名あまり。つまり 200 名が追加されると同時に、 100 名程度は会社から去っていたことになります。


当時わが社では、それまでのシステム一辺倒のコンサルティングから、企業戦略や人事を含めた総合コンサルティングへの脱皮をはかろうとしていました。しかし、それまでシステム開発をベースにしていた仕事のやり方、社員の考え方を急に変えることはできません。一方で、米国本社からは短期的な成果を求められます。わが社の経営陣が選択した方法は、社員をごっそり入れ替えることによって、この要求を達成することだったのです。


つまり、私は「社員入れ替え大作戦」にまんまと乗っかって、今の会社に入ったことになります。中途入社する立場からすると、このようなやり方には一長一短があると思います。いい点としては、中途採用されるその人は、会社が変わろうとしている方向性に沿った人材として採用されているわけですから、期待通りの力を発揮すれば、非常に高い確率で成功することが出来ます。例えば私の場合、入社当初は、「こんなにシステムが詳しい人たちの中に入って大丈夫かな …。やっていけるのかな …。」と心配ばかりしていました。しかし私に期待されていたのはシステム開発能力ではなく、業務改革やコスト削減などの分野であり、それこそが会社が私に期待していたことだったのです。その後、会社はその分野での業績を伸ばしていきましたから、私はその波にうまく乗れたのかもしれません …。そのわりには私の給料がそれほど伸びていないのは、うまく説明できないのですが …。トホホ。


では、悪い点というのは何なのでしょうか ? それは、会社が進もうとしている方向性 ( これは、その企業が今まで経験したことがないものです ) が正しいかどうか、その時点ではだれにもわからないということです。私の会社でも、 2 年に 1 回ぐらい、大きな採用キャンペーンを実施してきました。つまり、その都度会社は社員を大幅に入れ替えることで、新しい何かを始めようとしていたことになります。しかし、その戦略はうまく当たることもあれば、外れることもあります。どちらかというと、外れることの方が多いと思います。なぜなら、当たることがあらかじめわかっているのなら、他の競合企業も同じことをするからです。会社の戦略というのは、だいたい「 1 勝 2 敗」ぐらいの確率でしか当たらないようにできています。逆に言うと、「1 勝 2 敗」の確率をキープしていれば、その会社は生き残ることができるのです。


一方で、会社にとっては「1 勝 2 敗」サイクルの一環であったとしても、その「2 敗」に該当してしまった個人にとっては、たまったものではありません。外資系企業の中途採用者の半分ぐらいが入社後 1 年以内に辞めている理由は、まさに以上のようなことが原因なのです。


外資系企業の採用は、企業の戦略と密接に関係しています。ですから、少数の人材をチョロチョロと採用するのではなくて、短期間に大量の人材を採用する、冒頭の例のようなケースが多いといえます。一方で、大量採用の裏には企業の戦略が存在します。戦略があるからこそ、その戦略に合う人を大量に欲しい ( 中途採用 )、その戦略に合わない人は必要ない ( リストラ )、という行動に出るのです。


外資系企業の人事部では、以下のような会話がなされていると、人事部にいる友人から聞きました。


「A さんは個人的には優秀な人なんだけどねぇ。でも、去年の経営戦略が失敗した以上、現状では使い道はないよねぇ。申し訳ないんだけどさ …。」


さ、寒っ ! 私もいつ、会社の「戦略」から漏れてしまうかわかりません。


「やだやだ …」


私は気を取り直して、新聞に目をやると、そ、そこには、なななんと !


『業容拡大のため、中途社員 100 人募集中 ! ○Xコンサルティング人事採用係』 


がーーーーーーーーーーーーん ! こ、これって、うちの会社じゃないですかぁーーー !」 うぅーー、寒い ! そういえば、今年は近年まれに見る冷夏ですね、って言ってる場合かぁーーー。みなさん、くれぐれも自分の会社の採用広告にはご用心のほどを、トホホ …。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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