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タカシの外資系物語

外資系における会議手法 ( その 2 )-人の意見に「ケチ」をつける2003.07.25

私は学生時代、ESS というクラブに入っていました。ESS では、ドラマ (Drama) ・セクション、いわゆる「英語劇」をやるグループに所属していました。ドラマのほかには、ディベート(Debate)、ディスカッション (Discussion)、スピーチ (Speech) などのセクションがありました。


私の専門はドラマでしたが、よくディベートの大会にもかり出されました。ディベートというのは、要は「討論」なのですが、いろいろなルールがあります。参加者は、「肯定側(Affirmative)」と「否定側 (Negative)」に分かれ、特定のテーマについて「肯定なのか ? 否定なのか ?」という観点で意見を言います。それを第三者である審査員が聞いて、どちらが論理的で説得力があるか、ということを採点し、勝敗を決めます。


私がディベートをやってきた経験則で言うと、否定側がかなり有利だったように思います。実は否定側には非常に有効な「勝利の法則」が存在しました。それは、「核戦争が起こる」という結論を導くことです。例えば、「日本は外国産のコメを輸入すべきか、否か」というテーマだったとしましょう。日本がコメを輸入すると、日本にコメが余り、それを見た食糧不足の核保有国が「余ってるならこっちによこせ ! 」と怒り、核戦争になる …… なんていうような、メチャクチャ強引な論法を持ち出したとします。しかし、一方の肯定側は、「核戦争が起こる」というリスクを冒してまでコメを輸入するメリットを提示することが非常に難しくなるのです。ですから、否定側で「核戦争」を導けたチームは、ほぼ 100% 勝てました。


さて、前置きが長くなってしまいました。私がディベートの例で説明したかったのは、「物事を否定するのは簡単だが、肯定する / 支持するというのは非常に難しい」ということなのです。一般に、人の意見にケチをつけることほど簡単なことはありません。しかし、代替案がないにもかかわらず、単に「ダメだ、ダメだ」と言ってみても、何の解決にもなりません。会社における会議も同じことでして、ケチをつけるだけの、いわゆる評論家タイプの人は、会議進行の妨げになるので注意しなければなりません。


一方で、「代替案がないなら、ケチをつけるな ! 発言をするな ! 」と言ってしまっては、何も言えなくなってしまいます。そもそも日本人は論理的 / 建設的に話すことを得意としていません。なぜなら、そういう教育・訓練を受けてこなかったからです。(『 "ロジカル・シンキング" のすすめ』 参照。)


何でもそうですが、物事には良い面と悪い面の二面性があります。会議でケチをつけたがる人というのは、その二面性に気付いているにもかかわらず、悪い面ばかりをことさらに強調してしまう傾向があるのです。それは、今までうまくいったためしがないとか、担当役員が好まないような案であるとか、自分の経験で判断されたものがほとんどです。確かにこれまでと全く同じようなやり方であれば、その人の言う通り失敗する可能性が高いのでしょう。しかし、これまでとは違う方法でやることを前提に話しているのであれば、結果は違ってくるはずです。会議のファシリテーター ( 司会者 ) は、人の意見にケチをつけたがる人から、今までの悪かった点を引き出し、そうならないための方策へと導いていかなければなりません。


司会者 「当社はこれまで、学生をターゲットに商品開発を行っていましたが、今後は 20 代から 30 代の女性に対してマーケティングを行っていくべきだという意見が出ました。これについてはいかがですか ? 」


ケチをつけたがる A さん 「そりゃ無理だよ。3 年前にも同じことをやって失敗しているんだから …… 無理、無理 ! 」


ここで怒ったり、議論をやめてしまってはいけません。


司会者 「A さんにお聞きしたいのですが、3 年前はどのような販売戦略をとって失敗したんでしょうかね。また、どうすればうまくいったんでしょうか ? 仮に、3 年前とは違うスキルを持った開発部隊やマーケティング部隊が編成できるとすれば、どうなんでしょうかね …… 」


このように尋ねてみて、それでもまだ A さんが「とにかく、無理無理」の一点張りだったとしたら、A さんには退場してもらいます。過去の失敗経験者である A さんから 「Lessons Learned」( 学ぶべき教訓 ) を引き出して、A さん以外の ( フレッシュな ) 参加者から有効な意見を引き出していく、これがファシリテーターの役目です。


私は自分のクライアントから、「ブレーン・ストーミングをしましょう ! 仕切ってくださいよ、タカシさん」と、よく言われます。最近は「ブレスト」とか言って、日系企業の間でも普及してきました。「ブレーン・ストーミング」というのは、集団でアイデアを出すための会議形式です。10 人程度の人が集まって、可能な限りテーマを絞ってアイデアを出し合います。


実は私、個人的には、日系企業の中でブレーン・ストーミングをするのは、まだまだ無理じゃないかと思っています。なぜなら、ブレーン・ストーミングの重要なルールの 1 つに「他人の発言に対して、一切の批判をしてはならない」というのがあるからです。一方で、日系企業の管理職というのは、批判をすることに慣れています。彼 ( 彼女 ) らは、とにかく大きな失敗さえしなければ、何とか出世していくことができたからです。しかしこれからは違います。多少のリスクを負ってでも、チャレンジしていかなければ、百戦錬磨の外資に打ち克つことなどできないのです。


とは言うものの、急に建設的なブレーン・ストーミングができるようになるわけではありません。まず重要なことは、参加者ひとりひとりが、「どうすればケチがつけられなくなるか ? 」を常に考える、という姿勢が重要です。今ある意見に何が足りないのか、何が追加されれば、自分はケチをつけなくなるのか、ということです。もう 1 つは、会議のファシリテーターを育てることです。ブレーン・ストーミングも「慣れ」が重要です。進め方を理解した人に仕切りを任せて、何回かやってみれば、優秀な日本人のことですから、そのうち慣れてきます。会議が仕切れる人材というのは勝手に育成されるわけでありませんから、それこそ経営陣がこれはと思う人を選んで、外部研修に行かせることも重要でしょう。


ちなみに、私は上司の Jim とブレーン・ストーミングをやったことがありません。彼から来る指示は、「自分の案は自分で決める。ただし、私が決めた案の良い点と悪い点を 5 つずつ教えてくれ ! 」というもの。ワンマンな Jim ならではのやり方ですが、部下に決めさせるだけでなく、自分で決めるという姿勢も、日系企業の経営陣には求められているのかもしれません。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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