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タカシの外資系物語

私の職務って ? ( ジョブ・ディスクリプション )2003.07.11

「あなたの仕事は何ですか ?」


私の場合は、外資系コンサルティング会社の IT コンサルタントです。


「あなたの職務は何ですか ?」


…… 職務と言われると答えづらいですね。私の職位は「マネージャー」なのですが、ではマネージャーって何をする人なのか、きちんと答えられるマネージャーは、わが社にもほとんどいないのではないでしょうか。


実はわが社の人事規定の巻末には「Job Description ( ジョブ・ディスクリプション : 職務記述書 )」というのがついており、各ランクの職務が規定されています。つまり、会社として社員に期待している仕事というのは、このジョブ・ディスクリプションに凝縮されているわけです。


では、わが社のマネージャーのジョブ・ディスクリプションを見てみましょう。- Selects, customizes and leads application of modeling and/or simulation techniques for addressing project specific issues ( プロジェクト特有の課題に対するモデリングやシミュレーション技法を選択、調整、適用の上、主導する )


- Convinces client executives of necessary strategy changes ( クライアント幹部に、戦略変更の必要性を納得させる )


…… こりゃまた、非常にわかりにくい。これでは具体的に何をしていいのか、さっぱりわかりません。わが社のマネージャーが自分の職務を説明できないのも、無理もないかもしれません。


そこで、最近わが社では、「もっとわかりやすいジョブ・ディスクリプションを !」というスローガンのもと、ジョブ・ディスクリプションの再設定作業を始めています。例えば、「会議をする」という作業について、スタッフ・シニアスタッフ・マネージャーの 3 階層における職務を考えてみましょう。


- スタッフ - 会議室を手配する。参考資料を収集する。


- シニアスタッフ - 会議室手配を指示する。会議資料を作成する。


- マネージャー - 会議開催を決定する。参加者を確定する。議事進行をする。


要は、日々会社で起こっている事柄 (= 業務 ) - 会議、資料作成、顧客との交渉 など - について、各ランクがどのように関わっていくかを考えれば、自然とジョブ・ディスクリプションは出来上がります。この作業をしていくと、縦軸に「業務」( 会議・資料作成など )、横軸に「ランク」( スタッフ・マネージャーなど ) を記載したマトリクスができます。1 つの業務に 1 つのランクしか関与していないような場合は、もっと責任的な立場のランクを関与させたり、違うランクなのに同じような職務しかしていないような場合は、どちらかの職務を廃止するなど、いわゆる業務改革に役立てることも可能です。


また、ジョブ・ディスクリプションは個人の評価にも直結しています。一般的に、ホワイトカラーの生産性を測ることは難しいとされていますが、ジョブ・ディスクリプションに記載されていることを「できたか、できなかったか」ということでなら、判断ができます。わが社のジョブ・ディスクリプション見直しプロジェクトも、評価体系そのものを見直すという観点から派生してきたものです。


このように、外資系企業では、「職務を定義する ( 繰り返し、再定義し直す )」というアクションを頻繁に実施します。これは、「組織が変われば職務も変わる」という考え方がベースになっているためで、マネージャーという同じランクであっても、2 年前とは職務内容や位置付けが全く異なっていたりします。


一方で、大半の日系企業では、課長は課長、部長は部長であり、位置付け自体も 10 年前と大差あるのかないのか明確ではありません。その背景には ( 具体的な ) ジョブ・ディスクリプションが存在しないことがあります。特に、シニアレベル以上の社員に対して、自発的に仕事を作り出して、創造的に仕事をするひとが評価されるという考え方は、日系企業、外資系企業にかかわらず同じです。しかし、欧米企業では職務を定義するアクションを頻繁に実施することから結果的に、決められた職務内容に基づき目標をもって決められたことをきっちりこなす人が評価されることになります。一方日本企業では、職務内容を明らかにしないことが多いため仕事を自発的に作り出しても成果が上がらない、何をやっているかわからない部長や課長……のような社員が存在してしまうのです。


つまり、創造的な仕事ができる一部のシニアレベル以上の社員と定型的な業務を担当するその他大多数の社員という切り分けでは、外資系も日系も大差がないということです。しかし、日系企業での問題は「一部のシニアレベル以上の社員」と「大多数の社員」の間に「何をやっているかわからない管理職」という階層が含まれている点でしょう。ほとんど仕事もせずに、一日中新聞を読んでいるような部長や課長 … 外資ではまずありえない階層です。ジョブ・ディスクリプションを作っていくと、何をやっているかわからない管理職の欄を埋めるのが、非常に難しいことがわかります。具体的に何をやっているわけでもないので、書きようがないのです。「私は会議で『課長』という仕事をやっています …… 」などと言うしかありません。


では、外資系企業のように、一部のエリートとその他大多数の二極だけに分解すればいいのでしょうか。短期的には効果はあがるでしょうが、レイオフなど大きな痛みを伴いますので、日本のすべての企業で実施できるとは思えません。となると、取れる手段はひとつです。自分のジョブ・ディスクリプションを真剣に考え、足りないスキルを補うように努力していくしかないのです。『課長』は職位であって、職務ではないことを肝に銘じなければならないのです。


これは余談ですが、外資系企業では自己紹介をするときに、自分の職位を言うことはほとんどありません。また、私の会社では、名刺に職位を印刷していません。これらの背景には、今回のコラムで述べたようなことがあるのです。


「Takashi, clients needs you as meeting facilitator, not as our company manager」 ( タカシ、お客さんはマネージャーとしてのお前じゃなくて、会議を円滑に進行してくれる役割を期待しているんだよ = つまり、もっと積極的に会議を進めろ、と言っている )


Jim がよく言う小言なのですが、日系企業と外資系企業の差異の本質をついているのかもしれませんね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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