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タカシの外資系物語

「タスク」と「課題」を切り分けろ !2003.04.25

外資系企業に勤めていると、中途入社した社員の面倒を見ることがよくあります。ほとんどはそれなりに有名な日系企業から転職してきた人たちで、確かに高いスキルを持っている人が多いようです。一方で、転職組のほとんどが非常に苦労することがあります。それは、スケジュール立案、特に「タスク」と「課題」の切り分けです。


「タカシさん、お話いただいていたスケジュールをたててみました」


「どれどれ……」


私は先日入社したヒロユキくんに、今取り組んでいるプロジェクトのスケジュールをたてるようにお願いしていました。


私 「おっ ! MS-Project 使えるんだね、それは心強いや」


私が勤める会社ではスケジュールを立てるときの標準ツールとして、マイクロソフトの「MS-Project」を使用しています。実はこの「MS-Project」、当初はなかなか使われなかったんです。英語版と日本語版のバージョンがバラバラで互換性がない時期もあったものですから「あぁーー、イライラするぅーー」とか言いながら、結局 Excel でスケジュールを作っていたりしました。最近になってやっと、社員のほとんどが「MS-Project」を使うようになってきたのです。


ヒロユキ 「こう見えてもプロジェクト管理には自信があるんです。「MS-Project も、だれよりも詳しいと思いますよ !」


確かにツールを使うのはうまいようです。でもねヒロユキくん、「ツールが使える=スケジュールが立てられる」ではないんですよ。


私 「……あのぅ、ヒロユキさぁ……」


ヒロユキ 「なんすか ? あ、そうそう、ここで右クリックすると、人の名前が入れられるんですよ !」


私 「(だれもそんなこと聞いとらんわい !) いや、そんなことじゃなくてさ、このスケジュールの項目って、ちょっとおかしくないかな ?」


ヒロユキ 「へ ?」


私 「いや、例えばさ、この項目見てみな。『レガシー(既存)システムとの I/F(インターフェース)問題』ってあるけど、何これ ?」


ヒロユキ 「課題表に載ってたんですよ。スケジュール表に出しておかないと、いつまでたっても課題が解決されないから………」


ヒロユキはスケジュール表を作るときに、プロジェクトの課題表を参考にして作ったようです。それはそれで正しいのですが、問題はその「載せ方」なのです。


私 「『○○問題』』って書かれても、何していいかわかんないだろ ? スケジュール表に載せる項目ってさ、何をやるかわかんないと、誰にお願いして、どれくらい時間がかかるか、全くわかんないじゃん !」


つまりこういうことなのです。ヒロユキは解決すべき「課題」と、それを解決するためのアクションである「タスク」を切り分けて記述できなかったのです。


一般的に、日本人は「課題」を見つけることはうまいのですが、「タスク」を切り出すことが非常に不得意です。「課題」と「タスク」の違いは、人(実行者=担当者)にひもが付くか否かということにあります。「課題」は出しっぱなしにしておいても、だれも責任を取る必要はありませんが、「タスク」を切り出すということは担当者を決めるということを意味しています。つまり、「タスク」を切り出した人は同時に、担当者も指名するということになります。


ではなぜ日本人は、タスクを切り出して担当者を指名することが苦手なのでしょうか ? それは困難なタスクを押し付けて、その担当者に恨まれるのがイヤだということ、そしてその担当者を説得することもイヤだということ、要するに人間関係における軋轢を生むようなことからは極力避けようとする傾向があるということでしょう。


外資系企業においてプロジェクト管理ができるということは、「課題」を解決するための「タスク」を切り出して、各担当者を適材適所に当てはめていくことができる能力があることを意味します。みんなが嫌がるタスクにはそれなりのインセンティブを与えて、担当者のモチベーションを上げなければなりません。一方で、単純作業・流れ作業的なタスクについても同様に、仕事のやりがいを感じさせなければならないでしょう。外資系企業では、プロジェクト・マネージャー(PM)に非常に大きな権限を与えます。プロジェクトがうまくいくかどうかは、そのPM の能力に依存します。ですから、PM として実績のある人には、絶えず数千万もの年俸でのオファーがあるのです。


年収数千万の PM への第一歩は、何と言っても「課題」と「タスク」の切り分けです。例のヒロユキくんも、あれ以来このことを意識して仕事をしているようです。


ヒロユキ 「タカシさん、実はある「課題」を解決するための「タスク」がよくわからないんですが……」


私 「どんな課題 ?」


ヒロユキ 「いや、『私の給料が安い』っていう課題なんですけど……」


私 「『担当者 : ヒロユキがもっと働く』っていうのがタスクなんじゃないの ?」


ヒロユキ 「いや、私は 『担当者 : タカシさんが評価会議で頑張る』 がタスクだと思うんですが………」


はいはい、参った、参った。ここは 『担当者 : 社長がもっと給料を払う』 ってことにしておこうかね、ヒロユキくん !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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