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タカシの外資系物語

「リスク」を取れ !2003.03.14

数年ほど前から「リスクマネジメント」という言葉が一般的に使われるようになってきました。実は私と「リスクマネジメント」の付き合いは長く、もうかれこれ 7,8 年ぐらいになります。私がいた銀行業界では当時から他業界に先行してリスクを厳しく管理していました。「それにしては、不良債権のヤマを築いているじゃないか !」とおっしゃるかもしれません。それはその通り。現在の不良債権の大半はバブルがはじける前 ( = まだ、リスクマネジメントという概念が一般的でなかった時代 ) に、不動産やゴルフ場に貸し込んだものが大半なのです。不良債権問題というのは 10 年以上前からわかっていた話であり、ここ 5 年ほどの騒ぎは思い切ってケジメをつけなかったツケがたまっているだけのことなのです。


さて話を戻しましょう。私が銀行員のときに念頭に置いていたリスクは主に以下の 3 つです。

 

1. 市場リスク ( マーケットリスク )

・・・ 金利や為替、株式市場の下落により被るリスク ( 例 ) 買った株が下がって損をした …… 非常にわかりやすいですね


2. 信用リスク ・・・ ある企業が倒産、またはその格付けが低下することにより、当該企業の社債下落や債権が回収不能となるリスク ( 例 ) 友人に金を貸したところ、トンズラされた …… これもよくある話 ( ? ) です。

 

3. オペレーショナルリスク ・・・ 1,2 以外のすべてのリスク。従業員による不正、業務ミス、システムトラブル、風評リスク ( 悪い噂をたてられる )、総会屋に目をつけられる、など


1,2 は銀行の仕事そのものですから取り立てて説明することはないでしょう。3 は最近よく話題になるリスクです。 1 社員による過大な銅取引で 3000 億円の損失を出した商社、衛生問題で壊滅的な打撃を受けた食品会社、システムトラブルで ATM が数日間使えなくなった大銀行、原発で事故を起こした電力会社 …… 数え上げればきりがありません。特に 3 は金額でははかれないほどのダメージを企業に与える場合が多いようです。


このように非常に厄介な各種リスク。一体どのようにマネージすればいいのでしょうか ?


まず、世の中には 2 種類の「リスク」があるということを理解せねばなりません。それは「I. 絶対やらなければならないことをサボることによって生じるリスク」と「II. 結果がよくない可能性があるという意味のリスク」です。上の例では、商社のケース以外は全て「I」です。要は、企業として当たり前の「法律」のようなことが守れなかったということからすべて生じています。ですから「あの企業は信用ならん !」ということで消費者の信用を失い、非常に深刻かつ長期間にわたり悪影響を及ぼします。


一方、商社の例は「II」にあたります。まぁ、3000 億円も損をするまで気付かなかった会社もいかがなものかという感じですが、このケースでは逆に「3000 億円儲かった」ということも可能性としてはあるわけで「極端に運が悪かったのね …… 」という言い方もできなくはありません。本人だって存するつもりでトレーディングしていたわけではないでしょうから、こういうのは会社がしかるべき監視 ( モニタリング ) 体制を敷いていればよかったのです。


私は、外資系企業に入ってから以上のような考え方を持つようになりました。それまでの私は、「リスクはないにこしたことはない。一番いい ( 優れている ) のは、リスクフリー ( リスクが全くない ) の状態なのだ ! 」と思い込んでいました。しかしそれは違います。リスクフリーの状態というのは、儲かる余地が全くない状態とほぼ同義だからです。うちの社長はそのことをよく理解しており、マネージャー陣を叱咤激励する際にはよく以下のような言い回しをします。


「君らねぇ …… リスクヘッジ ( リスクをなくすこと ) したものばかりを積み上げても、うちの会社は儲からんのだよ、わかる ? それなりにリスクのある、でも、おいしい話を持ってきてごらんよ。でないと私が意思決定する意味がないじゃないか !」


外資系企業では守るべきことは完璧に守り、そこから生じるリスクを皆無にします。それ以外の、「あたるも八卦、あたらぬも八卦」のようなリスクは、それをマネージしようとします。リスクが低く、高確率で儲かる話ならみんなやっています。ですから、そんな話は世の中に存在しません。一般的に言えばリスクが高いが、経験やノウハウでそのリスクを軽減することができる、と判断できれば、会社として全力を挙げて「ヒト・モノ・カネ」を突っ込みます。日本にはそういうマーケットがない、つまり日本では自社の強みが生かせない、と判断したとき外資は日本から撤退していくのです。


要するに、外資系企業は「リスクマネジメント」を通じて収益を得ているわけで、「リスクを取る」と決めた案件は、どんなことをしてでも取りに来ます。一方、「これではリスクに見合わない」と判断した案件には全く見向きもしません。「外資系」と聞くだけで、なんにでも群がるハイエナのようなイメージを持っている人が多いのですが、内部から見ると実はいたって淡白です。「儲かりそうなものだけやってみる」ただそれだけのことです。


私に言わせれば節操がないのは日本企業の方でして、私がいた銀行にしても、よくもまぁ儲かるか儲からないかわからないような案件に手を出すなぁ、と思っていたものです。確かに、日本のマーケットに日本企業しか存在しないのなら、どの企業も同じ確率で儲ける事ができるかもしれません。でも今や、マーケットには外資がゴロゴロしているのです。彼らと互角に渡り合うには、彼らと同じように「リスク」を冷静に判断していくしかないでしょう。


一方で、「リスク」の語源は、「勇気をやってみる」ということです。外資系企業の強みは、新規マーケットを積極的に開拓していく精神です。新規マーケットはリスクも大きいですが、競争相手がいないため、リターンも大きいのは言うまでもありません。


日本企業が外資から学ぶべきは、社名やロゴ、組織のような「見た目」ではなく、「リスクの取り方」そのものだという気がしています。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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