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タカシの外資系物語

「マトリクス」 で説明する2002.12.13

外資系企業に入って苦労することのひとつに、外国人とのコミュニケーションがあげられます。私の場合も、そもそも英語に自信も実力もありませんでしたから、入社当時は非常に苦労しました。一方で、これが外資系企業で最も苦労することかというと、私はそうは思いません。ある「コツ」さえつかめば、外国人とのコミュニケーション能力は格段に上達します。


重要なことは、「書いて説明すること」です。そもそも日本人が、口頭だけでネイティブに説明しようとすること自体が無謀。自分の伝えたいことを、紙やホワイトボードに書いて、ひとつ1つ確認しながら進めていく必要があります。で、実はここまでのことは多くの日本人が理解しています。問題は、その「書き方」なのです。


「書いて説明する」というとき、多くの日本人は自分が話している単語のスペルだけを羅列して、”OK ? OK ? Understand ?” などと言って説明します。しかし相手の外国人は、「そんなことわかってるんだけどなぁ……」と思いながら聞いているのです。つまりほとんどのケースでは、話している単語が何かということぐらい理解してくれています。彼らがわからないのは、「話の内容」そのものなのです。


例えば、ボスがフルーツを食べたいと言っているので買いに行くことになったとします。「ボスはリンゴがわりと好きなのでリンゴを買うつもりだったが、思ったより高かった。また課のみんなにおすそわけするためには数がたりなかったので、結局オレンジを買って来た」ということを説明することを考えます。ここで出てくる「Apple(リンゴ)」「Orange(オレンジ)」なんてのは、どんなに下手な発音でも外国人に伝わりますから、それを必死に説明する必要はありません。つまり、伝えなければならないのはフルーツの種類ではなくて、「どうしてオレンジを買ってきたのか ?(ボスはリンゴの方がわりと好きなのに)」ということです。


ではその理由を説明してみましょう。実はこのケースで理由を説明するのは、かなり大変です。なぜなら、リンゴではなくオレンジに決めた理由が複数存在しているからです。こんなときに、「図解する」技術が役に立ちます。次のように整理してみましょう。


ボスの好み  値段  量(おすそわけ)


リンゴ    ○    X    X


オレンジ   △    ○    ○


この表を見れば、「 2 勝 1 敗」でオレンジを買って来た理由が一目瞭然でわかります(もちろん、「ボスの好み」だけを最優先するケースも多いかもしれませんが、ここでは理由の重みを一律に扱うことにします)。このような表現方法を「マトリクス形式」といいます。マトリクスというのは数学の「行列」のことで、みなさんおなじみの Excel の表形式と同じです。


欧米人は、マトリクス形式を非常に好みます。その理由は、「だれが見てもわかる ! 」というところです。おそらく歴史的な経緯から、様々な民族・文化の中で物事を判断していくためには、言語のみに依存しない表現方法を用いるしかなかったのでしょう。マトリクス形式で記録を残すことにより、それを見た者すべてが納得できる仕組みを作り上げたわけです。一方、日本人は結果をクリアに残すことを嫌います。その理由は、責任の所在を明確にしないこと、また明確にしなくても何となく暗黙の了解で物事を進めることができたということだと思います。


最近、「図解する」技術を解説した本が書店にあふれています。この状況を見ていると、いよいよ日本人の「あいまい文化」にも、欧米の「明確化する文化」が流れ込んできたことを実感してしまします。


私が現在取り組んでいるプロジェクトにおいても、議事録にはマトリクスなどの表を多用しています。


私 「あのさぁ、この議事録って文字ばっかりだけど、もっと表にまとめられないかな ?」


スタッフ 「え ? いいんですか ?」


私 「いいんですかって何だよ ! 今までもそういうふうに言ってきたはずだろ !」


しばらくして、議事録が私の手元に戻ってきました。


私 「よし、どれどれ……表にまとめてみると……項目ベースでみて、 3 対 1 で私の意見が劣る……うううむ……これさぁ、元の文字ベースに直そうか……」


スタッフ 「……(だから気を遣ってやってんじゃねぇか、コノヤロ !)」


物事にはあまりはっきりさせない方がいいことも多いわけで、何事も使い分けが必要だということです。トホホ……なさけない上司……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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