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タカシの外資系物語

シリコンバレーのアジア人2002.10.04

ニューヨークでの出張を無事終えた私は、帰りにサンフランシスコに立ち寄ることにしました。「立ち寄る」と言っても、大した目的があったわけではなく、単にこちらにくるときにサンフランシスコ経由で入ったために、帰りも同じ経路をたどらなければ高くつくという理由だけなのですが。


超早起きして早朝便でサンフランシスコに着いたため、時間はたっぷりありました。


「さて、どこに行こうかな ……」


本来ならゴールデンゲートブリッジやアルカトラズ島、フィッシャーマンズ・ワーフなど、「定番の観光名所」に行くべきところなのでしょうが、そこまで足を伸ばす時間はなさそうです。


「よし、あそこに行こう ! 」


私が向かったのはシリコンバレーにある某 IT 企業の本社。 2 年ほど前に、あるトレーニングでそこを訪れた際、あまりのスケールの大きさに度肝を抜かれたのを覚えています。敷地が広いのはもちろんですが、それよりも自然・緑の多さに驚かされます。日本でも、大手メーカーの工場は広大ですが、敷地のほとんどは建物で占められているはずです。しかし、この IT 企業の敷地は、ほとんどが木々で覆われているのです。「ソフトウェア」という目に見えない資産を生産しているわけですから、自動車や機械メーカーのような生産設備を必要としないことを考慮しても、「恵まれた環境で仕事をしているなぁ。通勤ラッシュもないんだろうし ……」というのが正直な印象です。私は森林浴でもする気分で、空港からタクシーでシリコンバレーにあるその企業に向かいました。


ハイウェイが混んでいたこともあり、到着した頃にはお昼に近い時間になっていました。私はその会社の社内食堂 ( というかカフェテリア ) で昼食をとることにしました。そこはメニューによって、大きく 4 つのエリアに分かれていました。料理の種類は、洋食 2 種類 ( ヨーロピアンとアメリカンのスタイルに分かれているようなのですが、私には違いがわかりません ) と中華とエスニック。中華とエスニックのエリアにはアジア人とおぼしき人がたむろしていました。


「さすがに和食はないんだな ……」


私は中華メニューの「A ランチ」をオーダーして、オープンエアのテーブルに腰掛けて、日本語の本を読んでいました。


「あのー、ここ空いていますか ? 」


中国人風の男性が、流暢な日本語で声をかけてきました。


「えっ ? あぁ、いいですよ、どうぞどうぞ」


「東京からですか ? 出張ですか ? 」


「いや、ちょっと立ち寄っただけなんですけどね ……」


彼の名前は Andrew といい、その IT 企業の本社研究所で、 Web 技術の研究をしているということでした。彼は東京大学の大学院に留学していたらしいのですが、修士号取得目前で渡米したようです。


「私は、別に偉くなりたくはないんですよ。だけど、自分の技術で金持ちになりたい。だから近いうちに起業するつもりです。日本にいるより、ここにいる方がチャンスが大きいのです」


米国では、IT バブルがはじけて以来、 IT 産業の落ち込みが止まりません。シリコンバレーはまさにその象徴として引き合いに出されます。一時は 4 半期ベースで 1 兆円を超えていたシリコンバレーへの投資額も、今は 2000 億円と 5 分の 1 の規模になってしまいました。アメリカ人の IT 離れが進行する一方で、アジア人の台頭が顕著になっています。いまやシリコンバレーは、 Andrew のような中国人をはじめとする、アジア人が牛耳っていると言っても過言ではないようです。


さて、日本人はその中に含まれているのでしょうか ?


「日本人が優秀であることは認めます。だけど、日本人の才能は、結局は日本語という閉じられた世界で終わってしまっています。そこで満足してしまっているのです。えーーと、何でしたっけ、カワズの ……」


「井の中の蛙ですか ? 」


「そうそう ! 」


私もいまだ、蛙 ( カワズ ) の 1 人なのでしょう。少しでも外を知りたくて、外に飛び出したくて、外資系企業の扉を叩いたのですが、なかなか成果があがらないのも事実です。しかし、だれかがやらなければ、日本はますます「世界の孤児」として孤立していくばかりです。


結局、中華ランチ A を食べてそのまま帰って来たのですが、 Andrew との会話は私にとっては有益なものでした。もしかしたら数年後、株式公開で大金持ちになっている Andrew を目にするかもしれません。帰ったら早速連絡しないと。…… ん ? …… あれ ? し、しまった、名刺もらうの忘れた …… どなたか、O 社の Andrew さんを知りませんかね ? とほほ …… 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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