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タカシの外資系物語

メンタルヘルス対策としての EAP2002.09.06

職場の中で、「仕事がはかどらずイライラする」、「夜眠れない」などの悩みはよく聞かれます。一方で、管理者や経営者サイドも「どうも社員の仕事の能率が悪いようだ」と感じているケースがあります。


確かに、ストレスを感じながら仕事をしていると能率は上がりません。このような社員のストレスを発見・解決し、会社全体の生産性向上を支援するプログラムとして、「EAP (Employee Assistance Program)」があります。ストレスを感じている社員本人は、会社に悩みを打ち明けたくても、会社に悩みを知られること自体への抵抗感から、なかなかそのような行動に出ません。また、医者に相談するのは、「通院していることが会社にばれたらどうしよう」などと考え、会社に相談することと同様の心理的抵抗があるようです。 EAP は、本人から悩みを聞くことによって適切なアドバイスをするとともに、本人と会社、本人と医者の間に立ってサポートする役割も担っています。


ストレス先進社会であるアメリカでは、上場企業の 95% が EAP を導入しています。例えば、自動車のゼネラル・モータースは、 EAP を導入することによって、欠勤率 40% ダウンを実現しました。日本でも大成建設や凸版印刷、 INAX などが EAP を導入しています。日本においても社員の過労死で訴えられたある会社が、1 億円以上の賠償金支払を命じられています。社員のメンタルヘルス対策に、欧米と同様の取組みが求められてきているわけです。


私が勤める外資系企業においても、昨年から、「トータルヘルスカウンセリング」という EAP サービスが開始されました。うちの会社では EAP 自体を外部企業にアウトソースしています。そもそも会社の規模が小さいため、内部でそのような組織を持つ余裕がなかったことにもよりますが、 EAP サービスが持つ性格からも外部の組織の方が相談しやすいという理由もあるようです。


社内 LAN の掲示板にあるパンフレットを覗いてみましょう。そこには、カウンセリングの基本コンセプトとして、「 3 つの S」なるものが説明されています。まず「スピード (Speed)」、早く対処しろということでしょう。次に「秘密保持 (Secret)」、まぁこれは必須でしょうね。最後に、「総合的アプローチ (Synthesis )」、これはちょっとわかりにくいのですが、「Bio ( 身体 )」「Psycho ( 精神 )」「Social ( 人間関係 )」の 3 点から総合的にアプローチするという意味のようです。


「いったいだれが利用するんだろうねぇ ……」秘密厳守なのでどんな人が利用しているのかは一切わかりませんが、ウワサでは日本人の社員はほとんど利用していないようです。一方で、外国人の社員には、それなりの需要がありそうだとのことでした。


確かに、日本人には精神的な悩み事を、だれかに話して解決するという社会的な習慣がありません。悩みを持つということは、自分が弱いということをさらけ出しているという意識があるため、どうしても自分で抱え込みがちになります。一方、欧米では従来から、「教会」がそういった役割を担っていたように思います。


私が前に勤めていた銀行の本店内には、内科・外科・歯科の病院がありました。実は情けない話なのですが、私は「水虫」を治療するために、その病院を使ったことがあります。なんと言ってもタダでしたからね。ですが、果たして「精神科」とか「カウンセリング科」があったとして、社員のみんなが使うかというと、ちょっと疑問のような気がします。


その理由は、多くの日本企業における取り組みの方向性が、「医療」という観点にしか向いていないからだと思います。ストレスを抱え込んでいる社員は精神的に病んでいるのだから、それを治療しなければならない。そういう対応をしておけば、仮に過労死や自殺されたときにも「言い訳」できるだろう …… そんな考えがありありと見受けられます。これでは EAP も精神科の病院もほとんど同じ位置付けですから、社員の足が遠のくのも無理はないでしょう。


一方、欧米企業における EAP 導入の目的は、第一に「生産性向上」です。「会社としてはもっと働いて欲しいのに、最近能率が悪いよね。何か問題あるんだったら、言いたいこと言ってリフレッシュしてよ ! 」というのが、 EAP のコンセプトにあるのです。それは病院ではなく、いわば、ガソリンスタンドで給油してもらうようなノリなのです。また、日本にはない「明るさ」のようなものが感じられます。本質的には同じでも、使いやすさという観点では、欧米の考え方のほうが勝っているような気がします。


先日、私のチームにいる若手のエース、ジュン君が「悩み事がある」と言ってやってきました。これは EAP を紹介するチャンスかも ……


ジュン 「タカシさん …… ちょっとご相談が ……」


タカシ 「どうしたの ? 何か悩んでるの ? 」


ジュン 「実は、給料の件で …… もうちょっと上げてもらえません ? 」


…… これは EAP っちゅうか、そういう話でもないわけで …… もっと言うなら、私を含めてみんなが共通に持っている、一番大きな「悩み」なわけで ……


拝啓  EAP のカウンセラー様 こんな場合、なんて言えばいいんでしょうね ? 是非教えてください ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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