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タカシの外資系物語

フリーライダーに気をつけろ !2002.08.30

公共経済学の中に、「フリーライダー(Free Rider)」という言葉があります。要は「ただ乗り」のことで、費用を負担せずに便益を受ける人のことを言います。例えば、ある町が住民の税金を使って橋をかけたとします。しかしその橋は、税金を払った住民だけが使用するわけではなく、税金を払わなかった人も使うことができます。こういうのをフリーライダーというのです。


よく考えてみると、ビジネスの世界にもフリーライダーがたくさんいます。例えば私の場合も、昨年は大した実績をあげることができませんでした。しかし、事業部としての収益はそれなりの金額であったため、個人の実績以上のボーナスをもらっています。実際には、収益を上げたのはトシユキの案件だったので、彼に言わせれば、私はフリーライダーということになります。


しかし、外資系企業におけるフリーライダーとは、もう少し違った意味で使われています。例えば、こんなケース。いまトシユキがある大きな案件を手がけていて、もう少しで顧客から OK の返事がもらえそうだとします。当然そこにいたるまでには、トシユキは毎晩徹夜して、顧客への提案活動を行ってきたのです。そんなとき、なんとなく近づいてくる人、だれかが成功しそうになった瞬間をねらって、さも最初から関与してきたかのように振舞って、すり寄って来る人がいます。そういう人のことを「フリーライダー」と呼んでいます。ですから、本来の公共経済でいうところの意味とは若干異なっています。


外資系企業には、フリーライダーを容認する素地があります。結果を重視するあまり、そこに至るプロセスに目が行かないことが多いのです。つまり、初期の案件発掘の段階から苦労してきた人も、案件がうまくいく直前に参加しただけの人も、同じように評価されてしまうのです。


実は上記のトシユキのケースでもそうでした。彼が提案を始めた頃には、だれひとりとして協力しなかったくせに、大きな案件として花開こうとした瞬間に、多くのマネージャーが「一緒にやろう ! 」と申し出たようです。案件そのものが彼の予想を上回る規模に大きくなって彼ひとりでは回らなくなったため、結局、トシユキと私を含め 6 名のマネージャーが関与することになりました。案件は数億円の規模になり、 6 名のマネージャーにはボーナス評点 ( 売上のいくらかを、関与したマネージャーに配分するための割合 ) が与えられました。その内訳は、「トシユキ 25% 、私を含め残り 5 名が 15% ずつ」でした。でも実際のイメージでは、トシユキ 75% 、残り 5 名が 5% ずつ、というのが妥当なところです。


しかし、トシユキには申し訳ないのですが、私とて自分の取り分を返却するようなことはしません。うちの会社はそういう方針でやっており、今後も同じようにやっていくわけですから、いつ自分が同じような目に遭うかわかりません。ですから、「トシユキ、ごめんな …… 今度はオレが案件持ってくるから !」ということで、何となく暗黙の了解ができているのです。


ある案件において、トシユキのように最初から関与して主導的な役割を演じるマネージャーのことを「インチャージ・マネージャー」と呼んでいます。通常のマネージャーであれば、自分がインチャージの案件を、最低 1 つは持っているはずなのですが、中にはインチャージが 1 つもないマネージャーがいます。そう、彼こそ自分はほとんど苦労せずに、おいしいとこ取りをする「フリーライダー」なのです。


先日、私がインチャージになるはずの案件の検討会議に、フリーライダーで有名な N がやってきました。


私 「やぁ、 N さん。どうしたの ? 声かけてたっけ ?」


私はわざと「牽制」してみました。


N 「いや、タカシもいろいろ大変だろうからさ、協力できる部分があるかなと思ってね ……」


ここは何としても、 N にフリーライダーされて、いいところだけ持っていかれないようにしなければなりません。


会議の途中、私は次のような提案をしました。


私 「…… ということで、本案件のポイントは、いかにしてクライアントが希望する形でシステムのアーキテクチャーを設計するかということになります。さらに突っ込んだ提案作業のためには、かなりの調査が必要となることが予想され、私としてはその部分を N マネージャーに御願いしたいと考えています」


N 「げげっ ? まだそんな面倒な作業が残ってんの ? 」


私 「今後の展開次第では、本件のインチャージを N マネージャーとすることも検討に入れたいと考えています。じゃ、 N さんよろしく !」


N 「…… は、はぁ …… ( 来るんじゃなかったよ …… 困ったなぁ …… )」


どのようなルールにも、完璧なものはありません。しかしルールに欠点があって、それを悪用する者をこらしめなければ、悪がはびこるばかりです。

「フリーライダー」に気をつけろ ! ほら ! あなたの横にもフリーライダーが近づいて来ましたよ。くれぐれも気をつけてくださいね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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