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タカシの外資系物語

「デザイナー」と「スタイリスト」2002.07.26

つい先日のこと、 A くんが何か思いつめたような表情で、私のところにやってきました。


A くん 「タカシさん、ちょっと相談があるんですが ……」


私 「どうしたの ? 」


A くんは 1 年前に、日系の某有名企業から転職してきました。私は直接的には彼の採用面接には関わらなかったのですが、採用後のオリエンテーションで彼が次のように話していたのを覚えています。


「前の会社では自分のやりたいことが全くできませんでした。でも今日からは、思う存分自分の実力を試したいと思います ……」


さて、その A くん、何やら深刻に悩んでいるようです。


A くん 「タカシさん …… 実はぼく、会社辞めようかなと思ってて ……」


私 「あ、そう。」


少し解説しておきます。おそらく普通の日系企業なら、「ええっ ! 一体どうしたの ?!」と驚くところでしょう。一応、私だって少しは驚いているのです。でも基本的には、会社を辞める辞めないというのは個人が決めることなので、他人の私がとやかく言うことではないと思っています。 A くんが辞めることを決めたなら、それでいいじゃないかと思います。


A くん 「…… あ、そう …… って、それだけですか ?」


私 「ん ? 止めてほしいの ? ぼくが止めて思いとどまるぐらいなら、辞めないほうがいいよ」


A くん 「いや、もう決めたんです。辞めるんです」


私 「そっか …… またメールちょうだいね、じゃ !」


A くん 「…… じゃ、って。理由聞きたくないんですか ?」


私 「要するに、理由が言いたいんだろ ! 話したきゃ、勝手に話せば ?」


A くん 「退職の理由はですね、つまりこの会社にいても自分のやりたいことができないことに気づいたんです」


私 「…… ……」( なんか、いつかどっかで聞いたことあるなぁ …… )


A くん 「今回のプロジェクトで、私はクライアントに、ある販売戦略の採用を勧めたんです。そうすれば絶対に売上が上がるはずなんです。私の上司の B さんも理解してくれていたんです。でも、結局はクライアントが希望する別の案を採用することになりました。 B さんは何も助けてくれなかった ……」


私 「で ?」


A くん 「で ? って、ぼくが受けたショックは相当なもんだったんですよ。会社はもっとぼくをサポートしてしかるべきでしょう ?」


さて、みなさんは A くんの言い分を聞いて、どのように思いますか ? 私は A くんに次のように話しました。


・ まず、 A くんがクライアントに勧めた販売戦略について、内容がいかに優れていようが「絶対に」正しいということはありえない。( 絶対に正しい戦略なら私に教えてくれーー、オレが起業するから …… )


・ 次に、 A くんはクライアントのことをあまり重視していない。日系企業であろうが外資系であろうが、一番大事なのはお客様であるクライアントであり、自分の主張ではない。


・ 結局のところ、クライアントを説得できなかったわけだから、A くんの案も大したものではなかったはず。ならば割り切って、クライアントが選んだ案をうまく展開していくということについて、引き続きサービス提供ができるはず。


私 「…… つまり、こういうことなんだよ。ここに黒い服がよく似合う人がいるとするじゃない。だれがどう見ても、その人は黒い服が一番似合うんだよ。でも、その人が「赤い服が着たい」と言ったとするよね。赤い服は全然似合わないんだよ、その人は。でもね、そんなときには、服を勧める際に一言、『お客様は黒い服の方がお似合いですよ』って言って、それでもお客様が赤い方がいいって言ったときは ……」


A くん 「言ったときは ?」


私 「赤い服が似合うように、一生懸命サポートしてやるんだよ。それがうちの会社の方針なんだ。『デザイナー』ではなくて、『スタイリスト』ってわけだね。どうも聞いてると、 A くんは『デザイナー』になりたいようだけど。それなら、うちの会社の方針に合わないから、辞めたほうがいいかもしれないね。そういう方針の会社を探すか、自分でベンチャーやるか ……」


A くん 「…… どうもありがとうございました ……」


A くんは黙って去って行きました。まぁおそらく、彼が会社を辞めることはないでしょう。


さて、今回のケースが示す通り、最近同じようなことに不満を持つ 20 代の若手諸君が増えています。彼らの言い分はだいたい似ていて、「自分の思う通りにできない、会社がやらせてくれない」というもの。しかし、はっきり言いますが、そんなの当たり前です。会社の方針を無視して好き勝手やられては困ります。会社に所属して、そこから給料をもらっている以上、会社がやろうとしていることに従ってもらわなくては困ります。


「外資系企業は、もっと自由だと思っていた …… 」いったい何を勘違いしているのでしょうかね。確かに外資系企業では、ゴールに到るまでのプロセスについては、日系企業ほど口やかましく言いません。でも目指すべきゴールは外資系も日系も同じです。「顧客に満足を与えて、収益を得る。そして株主にその収益を分配する」これ以外のことがやりたいなら、自分で独立するしかないと思います。または、休日にどこかのサークルにでも所属して、思う存分やればいいことです。


「ホントに、もぅ …… ( ブツブツ ) 」最近私も、若者に対する小言が増えてきました。確実に「オジサン化」してきている自分がこわい、今日この頃です。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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