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タカシの外資系物語

終わらない ?! 評価会議 ( その 1 )2002.07.05

7 月の数週間、わが社のマネージャー以上の人々は非常に忙しくなります。その原因は、連日連夜の「評価会議」。 6 月末決算のわが社では、この時期にスタッフの年度末評価を実施するのです。


わが社を含めた外資系企業のほとんどは、いわゆる年功序列制を採用していません。ですから、次年度のランクは、この会議の内容がすべてだと言っても過言ではありません。加えて、賞与の査定もこの会議で行います。つまり、来年の年俸とボーナスが決定されるわけですから、様々な意味で盛り上がらないわけがないのです。


今日の会議の対象者は、私が主に担当している金融ユニットのシニアスタッフ ( だいたい 5 ~ 7 年目 ) です。私が直接評価したスタッフも、 3 名含まれています。実は昨晩、このうち 2 名から、私のところにコンタクトがありました。まずはスタッフ A くん。


( スタッフ A くん ) 「タカシさーーん、明日って、 Evaluation ( 評価会議のこと ) ですよね」


( 私 ) 「あぁ、そうだよ」


( スタッフ A くん ) 「ところで、最近つくづく、英語ができなきゃなって思い始めてるんですよ」


( 私 ) 「ま、外資系だしな」


( スタッフ A くん ) 「でも、最近の英会話学校って、けっこう費用かかるんですよね。勉強する気があっても、オカネの問題はどうしようもなくて …… 困ったもんですよねぇ …… やる気はまんまんなのに ……」


<<< なんて回りくどいやつなんじゃ …… 要は給料上げてほしいんじゃねぇか …… >>>


一方、 B くんからはメールが来ました。


「拝啓 タカシさん。いかがお過ごしでしょうか ?」


<<< 毎日顔合わしてるじゃねぇか …… >>>


「そもそも、人が人を裁く、評価する、なんてことが可能なんでしょうか ?」


<<< 哲学者かお前は …… >>>


スタッフ諸君もあの手この手で、何とかいい評価を勝ち取ろうと必死のようです。このパワーを仕事に活かしてくれればと思うのは、私だけではないでしょう。


評価会議で一番もめるのは、「ランクアップ」です。中でも、 2 ランク以上のアップ ( わが社ではこれを「スキップ」と呼んでいます ) については、非常に厳格な審査がなされます。


私が日本企業に勤めていたときは、「スキップ」なんてことはまずありえませんでした。確かに役員クラスになれば、「10 人ゴボウ抜き」なんてこともありましたが、スタッフレベルでは順番に昇進していきました。そうすることが、職場での妙な軋轢ややっかみを防いでいた面が多かったように思います。


しかし、外資系企業では、頻繁にスキップが起こります。「実力主義でいいじゃないか !」と思われるかもしれませんが、実はそんなに簡単な話ではないのです。


( 評価会議の司会 )「では次に、本年度の 『スキップ』 対象者に話題を移します。まず、Jenny の評価した C さんから ……」


( Jenny ) 「 OK! C さんは現在シニアスタッフですが、マネージャーと同等レベルの仕事をこなし、顧客からの信頼も厚く ……」


( 私 )「Hey, Jenny, I have one question!」( 「ちょっと Jenny, 質問があるんだけど !」 )


( Jenny ) 「何 ? タカシ」


( 私 ) 「 C さんって、いつ入社したんだっけ ? 」


( Jenny ) 「確か、 5 年前よ。それが何か ? 」


( 私 ) 「いや、僕も C さんと仕事をしたことがあるから知ってるんだけど……さっきから話聞いてると、なんか急にスキルがアップしたような印象を受けるんだけど、そういうことなのかな ? 」


( Jenny ) 「私は半年以上前のことは知らないわ。でも私のプロジェクトでは、すばらしいパフォーマンスをあげたのよ ……」


つまり、こういうことなのです。おそらく C さんは、ごくごく普通レベルのスタッフなのでしょう。だから、過去 5 年間、「スキップ」の話が出なかったのです。しかし今回評価した Jenny にとっては、非常に使いやすい人材だったのでしょう。なので、 Jenny は「彼女の基準」で、「マネージャーにランクアップしてやれ」と言っているのです。


以前なら、 C さんは Jenny の「押し」で見事スキップしたいたはずです。しかし、最近は違います。個人の偏った評価で昇進した場合、うまくいかないケースが多いため、わが社でも多人数による多面的評価を取り入れるようになってきました。 C さんの場合も、私をはじめ数名のマネージャーから「待った !」がかかり、マネージャーへのスキップは見送られることになりました。 C さんにとっては残念なことですが、一方でマネージャーという仕事は、みんなのコンセンサスがなければつとまりません。その意味でも、来年、すっきりした形でマネージャーになった方が、 C さんのためでもあるのです。 C さんに対する Jenny の評価は、賞与の査定に反映させることになりました。


「さて、次は D さんのランクアップの件です……」


時計の針はもう 10 時を回っています。しかし、「人材こそ外資系の財産」だということを、みんな理解しているので、だれも文句を言いません。また、マネージャーである私にとって、一生懸命働いてくれたスタッフ諸君にしてやれることって、こんなことぐらいしかないのです。疲れたなんて言ってられません。


( 評価会議の司会 ) 「次は …… A くんです」


( タカシ ) 「はい、 A くんは自分の弱みである英語力克服のため、英会話の勉強に非常に熱心に取り組んでいます ……」


これぐらいのウソは、神様もきっと許してくれるでしょう、ね !

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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