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タカシの外資系物語

「プロジェクト管理」のすすめ2002.06.21

千葉工業大学という大学に、非常に面白い名前の学科があります。それは、「プロジェクト・マネジメント学科」。この学科の目標の 1 つに、「国際的なプロジェクトで活躍する人材育成」というのがあります。さて、ここでいう「プロジェクト」というのは、いったいどのようなものなのでしょうか ?


NHK の番組「プロジェクト X 」がブームになったこともあり、最近、「プロジェクト」という言葉が一般的になってきました。しかし、番組の影響もあってか、「プロジェクト」という言葉からイメージされるのは、「超高層ビルを建設する」「急病人の命を助ける」など、何か非日常的なものであるような気がします。


「プロジェクト・マネジメント」という場合の「プロジェクト」とは、もっともっと日常的なことも含んでいます。例えば、旅行の計画を立てるとしましょう。まず、どこに行きたいかを考え、旅行会社に予約します。ツアーでなければ、具体的にどこに行くかを考える必要があります。また、旅行で必要なものを調達するために、事前にお買い物にも行っておかねばならないでしょう。このように、何かの目的を達成するためにアクションプランを練って、それを実行していくことを「プロジェクト・マネジメント」というのです。


私が外資系企業に入って、まず最初に戸惑ったのは、プロジェクト・マネジメントのスキルがあまりにもないということでした。能力そのものがないというよりは、過去にそういった教育・訓練を受けてこなかったし、日本の企業にいてもプロジェクトを管理するような機会はほとんどありませんでした。日系企業では、スケジュールが遅れた場合、メンバーみんなのがんばりで ( 例えば徹夜して ) 何とか切り抜けるのです。一方で、外資系企業の場合には、このような「気合で乗り切る」スタイルはほとんど受け入れられません。納期を守れなかったのはマネージャーの責任ですから、スタッフ全員が助けてくれるわけではないのです。


また、次のようなケースもあります。例えば、ビルの工事で材料の鉄骨が届かなかった。または、システム開発プロジェクトで、システムの仕様が決まらなかった。調達すべきもの、決まっているべきものが手元にないばかりに、多くの人間を遊ばせることになります。発注側にとっては、不稼動の人件費がかさみ、大きな損失を招くことになります。プロジェクト・マネジメントとは、以上のような「どうすることもできない事態」を極力避けるために、いろいろなケースを想定して策を打っておくこと、という言い方もできます。


さて、プロジェクト・マネジメントを学習、訓練するにはどのようにすればいいのでしょう。「プロジェクトなんて、実際にやってみないとわからない、机上の論理なんて役に立たない」という意見もあります。それはその通りで否定しません。しかし、プロジェクトに先立って、やっておくべきこと・押さえておくべきチェックポイントというのは、事前に学習することができます。これは、プロジェクトを開始する上での心構えのようなものですが、これは経験よりもむしろ、どれだけ多くのことが押さえられているかということにつきると思います。


例えば、プロジェクト管理で重要なのは、計画策定時の「先読み」ということです。システムを開発するプロジェクトなら、最終的にどのようなシステムを開発するのか。開発にあたって、どのようなヒトが関与しなければならないか。彼らは、いつ、どのような役割を演じるのか。また、テクニカル ( 技術的 ) な課題は何で、いつからどのような準備をするのか ……。これらは計画段階で押さえておくべきことであり、たとえ未経験者であっても対応できることなのです。


このようなプロジェクト・マネジメントを体系化したものに「PMBOK」( ピンボックと読みます、Project Management Body of Knowledge) があります。これはプロジェクトの全体像を体系的にとらえたもので、実は私の会社のマネージャー以上のポジションでは必修プログラムになっています。


確かに、プロジェクトなんてやってみなけりゃわかりません。ときには気合も必要でしょう。しかし、事前にわかっておくべきことを知っているのと知らないのとでは大違いなのです。「PMBOK」が全てとは言いませんが、是非みなさんもご一読を …… あれ、だれか走ってきましたぞ ……


( スタッフ )


「タカシさぁーん、大変です。今日納入予定だった開発用のマシンが、届かないそうです、どうしましょう …… みんな、やることなくなってしまいますよ ……」


( 私 )


「…… す、すぐ行くよ …… 」


…… このように、プロジェクトというのは色々なことが起こるのです …… トホホ ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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