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タカシの外資系物語

Good News and Bad News2002.05.17

先日、 NY オフィスの同僚 ( アメリカ人女性、ちなみに私よりランクは上です ) から、"Good News and Bad News" というタイトルのメールが、ごく数名のメンバーに送られてきました。


"The good news is, the Firm has granted me a transfer to the San Francisco office, enabling me to move back home and closer to my family..."(「 Good News っていうのは、サンフランシスコに転勤になったこと。実家に戻って、家族と一緒に過ごせるようになってうれしいわ !」


"The bad news is, I will be leaving all of my wonderful friends and colleagues here in New York to begin the next phase of my life here at the Company on the West Coast."(「 Bad News は、NY のみんなとお別れしなければならないこと。この会社における第 2 の人生は、ウェストコーストで始まることになったわ !」


。。。 (T-T)(T-T)(T-T) 。。。


私が彼女と出会ったのは、3 年ぐらい前だったでしょうか。彼女はあるグローバルベース ( NY ・UK ・東京 ) のプロジェクトでプロジェクト・マネージャーをしていました。私はそのプロジェクトにおける、東京チームのマネージャーでした。私はあまり英語が得意ではないこともあり、「タカシでは東京チームのマネージャーは無理なんじゃないか ?」という話が、上の方で出ていたと聞きます。確かに、ある上司からは、「タカシ、もうグローバル・プロジェクトは諦めて、ローカルなもの ( 日本だけで完結するプロジェクト ) に専念したらどうだい」と言われていました。


そんなとき彼女は、「ちょっと話があるの」と言って、ひょっこりと東京オフィスに出張してきたのです。私と彼女は 2 日にわたり、 6 時間ほど話し合いました。「OK 、タカシ、あとは任せたわよ !」


彼女はその夜、プロジェクト関係者全員に、「タカシはこのプロジェクトになくてはならない人物である。彼の登用についての全ての責任は、私と私の上司が負う」という主旨のメールを出してくれました。その後、私へのバッシングは一切なくなり、非常に気持ちよく仕事ができたことを覚えています。


私にとっての恩人である彼女なのですが、最近「NY オフィスでの幹部昇進」の話が出ていました。簡単に言うと、役員への昇進試験なのですが、実は非常に難関なのです ( 当たり前ですが )。候補者は 1 年前からプレゼンテーションの準備をし、合計 15 名以上の役員から「同意」を得なければなりません。


しかしそれよりもっと深刻なのは、その試験に落ちた人は、たいていの場合「左遷」されるか、ないしは退職せねばなりません。強制ではないのですが、いまだかつて、試験に落ちてその地に留まった人はいないらしいので、現実にはそうするしかないのでしょう。


さて、話を戻しましょう。はっきり言うと、彼女はその昇進試験に落ちたのです。なので家族のいるサンフランシスコに飛ばされる格好になったのです。


"To all of you whom I've had the pleasure of working with in the past, I thank you for the support, teamwork, creativity, hard work and fun..."(「過去に私を支えてくれたみなさんへ。みなさんがくれたチームワーク、創造性、頑張り、そして楽しかった思い出に感謝します」


外資系企業においては、このような非情な人事が珍しくありません。なぜなら、外資系企業のシステムそのものが、「限られた小数の人に大きな利益を与えるように成り立っている」からです。「できるだけ大勢の人に、ちょっとだけ差がつく利益を与えるように成り立っている」日本のシステムとは好対照でしょう。外資系企業のやり方の方が、目の前のニンジンが大きい分、競争の激しさが違います。


「もっと頑張れば、もっと大きなニンジンをあげるよ。もっともっと頑張れば、もっともっと大きなニンジンをあげるよ ……」


ま、私もそのレースにのっかっているわけですから、偉そうなことは言えませんけど ……


当然このようなシステムでは、彼女のような「敗者」も出るわけです。


しかし、外資系企業に勤める人の特徴として、「泣きごとを言わない」「決して諦めない」ことが上げられます。


彼女のメールからもわかるように、決してネガティブなことは言わないのです。確かに彼女の「意地」として、泣きごとは言えないという事情もあるでしょうが、 NY オフィスの別の同僚によると、「彼女は早速、『復活計画』を立てているらしいよ」とのこと。


彼女から、次の "Good News and Bad News" が届く日も、案外近いのかもしれません。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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