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タカシの外資系物語

「ソリューション」を売れ !2002.05.03

4 月 1 日に統合したみずほ銀行で、大規模なシステムトラブルが発生したことについてはみなさんもご存知のことと思います。みずほ銀行の ATM ( 現金自動預払機 ) ネットワークが、統合初日に大混乱した上、口座振替の遅れなどが 2 週間以上も続きました。


私もかつては、某大手銀行のシステム部門に在籍していましたので、今回のトラブルがいかに「前代未聞」の事態であるかについては、よく理解できます。原因は、「テスト不足」だとか、「人為ミス」であるとか …… また、統合前の 3 銀行のホストシステムを開発していた、 3 大システムメーカーの覇権争いが根本原因にあるとも言われています。


私は個人的には、原因はそれらすべてに当てはまると思っています。今回の件は、みずほ銀行が全面的に悪いのは明らかです。一方で、被害を被った方々には不謹慎なのですが、銀行システム経験者の立場からすると、「担当のみんなは連日徹夜だろうなぁ、かわいそうになぁ ……」というのが率直な印象です。


さて、私の本職は金融機関に対する IT コンサルティングです。みずほだけではなく、大手の銀行同士の統合が決まった一昨年ぐらいから、実はビジネス上でいろいろと「売り込み」をかけていました。外資系企業であるわが社は、いったい「何」を売り込んでいたのでしょうか ?


みずほ・ UFJ ・三井住友など、大手銀行が統合を決めた頃、私と上司のジムは次のような会話をしていました。


Jim 「タカシ、日本の銀行も大合併時代に突入したようだな。 IT 関係で何か商売の『ネタ』はないものかね?」


私 「銀行のシステム統合に、部外者が絡むのは難しいよ、 Jim 。日本では、各銀行と大手のシステム・ベンダー ( システムのソフト・ハードを提供するメーカー。 IBM ・富士通・日立・ NEC など ) の関係が強いから、下手に口出しすると、痛い目に遭うから ……」


Jim 「タカシ ! 今何て言った ?」


私 「だから、システム統合のための意見調整が難しいって ……」


Jim 「それだよ、タカシ ! 」


翌日、Jim が徹夜して書き上げた提案書には、次のように書かれていました。


『私ども○○カンパニーはシステム統合のお手伝いをいたします。ご担当のみなさま、ベンダー各社の意見を調整するのはさぞかし大変なことでしょう。私どもはみなさまになり代わって、そのイヤな役割を、合理的かつ客観的に実施いたします ……』


( 結局、この提案は、どの銀行にも採用されませんでした )


Jim はよく、次のように言っています。


「ビジネスは人と人とのふれあいだ。当然、そこにコンフリクト ( 衝突 ) が起こる。その衝突をなくしてやる ( Conflict Sweeper と言っています ) ことって、大きなビジネスチャンスなんじゃないのかな」


実は、これこそが外資系の発想なのです。


「トラブルを無理矢理抑えてしまうと、どこかで必ず歪みが生じる。そのトラブルをうまく解決することこそ、最も大きなマーケットなのだ ! 」


外資系企業においては、「ソリューションを売れ ! 」ということを繰り返し徹底されます。モノが余って在庫がたまるのは、「顧客にソリューションを売っていないから ……」ということになります。


サービス業も同様です。サービス業はモノを売っているわけではなく、実体のない「サービス」を売らねばならなりません。サービスはショーウィンドウに飾るわけにはいきませんから、より魅力的でなければ売れない分難しさがあるのかもしれません。しかし、顧客のニーズを満たす、顧客が困っていることを解決する、という「ソリューション提供」の思想は同じことです。


もしみずほ銀行に関与したシステム・ベンダーに、「ソリューション提供」の発想があれば、今回のようなトラブルは回避できたような気がします。統合前の旧 3 銀行が、自己のメンツにこだわり、主導権を握ろうとするのは当然の成り行きなのですから、それを所与とした上でもっと有効な「ソリューション」を提供する事が出来なかったのかなぁ、と残念に思われます。


今後ますます外資系企業が日本のマーケットに進出してくるでしょうが、今回のみずほトラブルは日本企業の弱点のひとつを象徴しているように思えてなりません。


ちょっと立ち止まって考えてみましょう。


「あなたの会社は、お客様に 『ソリューション』 を提供していますか ? お客様は、あなたの会社に 『感謝』 していますか ?」

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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