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タカシの外資系物語

「紹介予定派遣」のアメとムチ2002.04.05

最近、外資系企業を中心に、「紹介予定派遣」という雇用形態が活発に採用されています。「紹介予定派遣」とは、派遣先企業で一定期間派遣スタッフとして働き、その後企業と本人双方の合意があれば、社員として正式に採用されるという制度です。通常の派遣の場合は、何度契約更新を繰り返しても「派遣」のままですが、紹介予定派遣の場合は正社員になれるチャンスがあるわけです。ですから、「いずれは正社員になりたい ! 」という人には魅力的なシステムといえるでしょう。


外資系における紹介予定派遣の職種に多いのは、セクレタリー(秘書)業務です。以前に紹介したことがありますが、外資系企業のセクレタリーは非常に高度な能力を要求されます。英語力や PC スキルはもちろんのこと、日本人のクライアントに会うときには、日本語のできないボスを助けつつ、同時に「営業マン」としての能力も必要とされます。


しかし、外資のセクレタリーに最も必要な能力は、実はもっと別のところに求められます。それは、「いかにしてボスに気に入られるか ? 」ということになります。実際に、非常に能力の高いセクレタリーであっても、ある会社では低い評価となる場合があるようです。ですから、彼女らの最大の関心事は、「どんなボスの担当になるか」ということで、それは実際に会社で働くまでわかりません。最初から正社員で入ってしまっては、「最悪な」ボスの担当になったときに困るわけです。「紹介予定派遣」であれば、たとえ企業側が「正社員になってほしい」と頼んだ場合でも、自分が気に入らなければ断ることができるのです。もちろん、企業側にとってもメリットはあります。企業は、派遣期間を通じて、その人の能力・適性を見極めることができます。


現在私が所属するチームの秘書をしているアツコさんも、 6 ヶ月間の「紹介予定派遣」契約で働いています。


(アツコさん) 「会社やボスの相性なんて、実際に働いてみないとわからないでしょ、だから "temp to perm" (※)にしてるの。」


(※)紹介予定派遣のこと。"perm" は permanent の省略で永続的な雇用を意味する。時として"palm「手のひらの上にいる(会社に支配されている)」という意味や、「ヤシ」の花言葉が成功なので、「派遣から成功(正社員)へ」という意味のスラングで使われる場合もある。


(私) 「アツコさんは、ずっと秘書でやっていくつもりなの ? 」


(アツコさん) 「しばらくはそのつもり。だけど本当は、タカシさんみたいなコンサルタントになりたいの。そのためにはまず、正社員にならないと話にならないから」


うちの会社では、派遣の秘書から正社員としてのコンサルタントになった人がいます。彼女もそれを目指しているようです。


(アツコさん) 「でも紹介予定派遣は普通の派遣と違って、やっぱり大変だわ …… 」


(私) 「えっ !  どうして ? 」


(アツコさん) 「だって、『あなたは正社員になりたいんでしょ ? だったら、もっと頑張ってアピールしなきゃ』 みたいな "プレッシャー" があるんですもの。そりゃ私も頑張るけど、今はあくまでも派遣なんだから、あんまり多くを求められても困るのよね …… 」


確かにアツコさんが言う通り、ボスはよく「アツコは正社員と一緒だ」と言っています。仕事の内容も、他のセクレタリーに比べれば、責任の重い仕事をやらされているようです。ただ、一方では、それなりの仕事をやってもらって試してみなければ、その人の資質を見極めることなどできません。アツコさんには申し訳ないのですが、私自身も彼女にはそれなりに重い仕事をお願いしていくつもりです。それよりも何よりも、アツコさんの「紹介予定派遣」期間終了後、アツコさんの方から「お断りします ! 」と言われないようにしなければなりません。


そのためには、うちのボスの悪いクセ、「自分でミスったときの"逆ギレ"」を止めさせなくてはならないと思っています。


「アツコー !  タカシー !  カモンッ ! 」 またボスの「悪い癖」が始まったようです… トホホ ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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