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タカシの外資系物語

外資系企業の「コーチング」論2002.03.01

最近、「コーチング」という言葉が流行しています。「コーチング」というと、多くの人はスポーツにおける「コーチと選手の関係」を思い浮かべると思います。しかし、ビジネス社会におけるコーチングとは、「能動的な自己変革へと導くコミュニケーション・スキル」としてとらえられており、スポーツにおけるコーチングよりも一歩進んだものとして位置付けられています。一体、「コーチング」とはどのようなものなのでしょうか ?


先日、私が勤める企業の米国本社から、「コーチング」の専門家がやってきました。なんでも、「コーチング」の本場、米国のノウハウを日本のマネージメントに伝えるために来たのだとか。マネージャーである私は、彼女(Sein: セインさんといいます)のカウンセリングを受けることになりました。


まず彼女の年齢を聞いてビックリ(私から聞いたのではありません。彼女が言ったのです)! なんと私より 4 つも年下ではありませんか。「コーチ」という言葉のイメージから、この業界でベテランの、いかつい顔をした“おっさん”を想像していた私としては面食らった感じです。


(Ms. Sein)「私は大学と大学院でコーチングを専攻しました。今は米国本社のトレーニング・セクションのチーフ・マネージャーをしています。ではタカシさん、早速あなたの『コーチング』に入りますよ !」


(私)「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、Sein さん。『コーチング』に入るのはいいのですが、私のやってること、その、つまり、業務内容はご存知で ?」


(Ms. Sein)「あなたの業務内容、特に日本のビジネスはよくわからないわ。だけど、『コーチング』は万国共通だから大丈夫なのよ ! 黙って聞いてなさい !」


大丈夫かなぁ…。私はとっさにそう思いました。豊富な業務経験を持つベテランからのアドバイスを期待していた私は、かなり疑心暗鬼になっていました。


(Ms. Sein)「では始めます。最近、ビジネスで困ったことはありませんでしたか ?」


(私)「うーん、そうですねぇ…。あ、そう言えば先週のことなんですけど、顧客から私の部下に対するクレームがあって、収拾つけるのに結構苦労しましたね」


(Ms. Sein)「そのときあなたはどのように対処すべきだと思いましたか ?」


(私)「部長と私で謝りに行きましたよ。あと、その部下と面談をして、悪かったであろう点を修正しましたけどね」


(Ms. Sein)「あなた自身に悪い点はなかったんでしょうか ?」


(私)「(ヤなこと聞く人だねぇ、まったく)そりゃ、私の管理にも問題あったんじゃないすかねぇ」


(Ms. Sein)「あなたは今後、そうならないためにどうしようと考えていますか ?」


(私)「だから極力そうならないように、顧客やお客さんとのコミュニケーションをより積極的に取っていくつもりっすけど ! もういいっすかね、仕事あるんで。じゃ !」


以上のように、短気な私はブツブツ言いながらカウンセリングを終えました。しばらくして冷静になって考えてみると、彼女から受けたカウンセリングには、それなりの価値があったように思います。


まず、失敗を能動的にとらえ、失敗を回避するために、自分は今後どのように振舞えばいいのかを、再度考え直したことが大きいと思います。彼女から、「それで、あなたはどうするの ?」と繰り返し問いかけられることによって、「同じ過ちを繰り返さないための方策」を整理できたような気がします。


もう一つは、自分が触れられたくないことをズバリと指摘されることで、自分の本当の“弱点”を見つめ直すことができたことです。彼女とのカウンセリングがなければ、顧客からのクレームも単なる部下の失敗で終わっていたかもしれません。部下が失敗しようがしまいが、重要なことは顧客から直接クレームがきたことの方であり、その原因はアカウント・マネージャーとしての私の責任なのですから。


このように、「コーチング」の本質は、「いかにして本人が能動的に取り組むか」ということに関して、手助けをすることにあります。答えは外部から与えられるものではなく、自分から生み出さなければ身につかないということなのでしょう。


日系企業の多くは、過去の成功体験に縛られ、自分の短所を見つめ直すことをなおざりにしています。社員ひとりひとりの自己変革させるためには、以上のような「コーチング」のスキルが必要なのかもしれません。


私は Sein さんとのカウンセリング以来、常に次のことを考えて行動するようにしています。


「それで、あなたはどうするの ?」


「私なら、こうします !」

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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