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タカシの外資系物語

奇蹟のカンパネラ2002.01.04

みなさんは、フジ子・ヘミングというピアニストをご存知でしょうか ? 1 万枚売れれば大ヒットと言われているクラシック音楽の世界で、デビュー CD の「奇蹟のカンパネラ」は 70 万枚の売り上げを達成し、それ以外の CD と合わせると売り上げ 150 万枚に迫っています。


私はこう見えてもクラシックには少々うるさく、仕事の合間にクラシックを聴き、コンサートにもよく出掛けます。彼女の演奏は、実はそれほどびっくりするようなものではありません。機械のように正確というわけでもなく、目が覚めるような早弾きがあるわけでもないのです。でも、そこには何ともいえない「味」があるのです。


彼女は長い間、評価されませんでした。若い頃の無理がたたって、右耳が聴こえなくなるというトラブルにも見舞われました。しかし彼女の経験は、その作品に活かされ、齢 60 ( 年齢不詳のため推定 ) になってデビューという「奇蹟」につながったのです。


さて、私の同僚に、「梅さん」という日本人の IT エンジニアがいます。彼は私より一回り年上なのですが、ランクは私より低い位置です。彼の専門はホストシステムのプログラミングなのですが、お世辞にもそんなにすごいシステム・エンジニアとは言えない状況です。昨今は、Java や Web 系技術などに押され、「梅さん」の技術はどんどん隅の方に追いやられていました。


しかし、彼には、他の SE に絶対に負けない「技術」を持っていました。それは「トラブル・シューティング」、つまりシステム的な問題に対する対処のことです。


「原因がプログラムにある限りは、どんなバグでもすぐに見つけることができる」梅さんは、よくそう言っていました。実際に、システム系のトラブルが発生すると、そこにはいつも梅さんの姿がありました。


「どのようなプログラムであっても、人が作っている以上、そこには落とし穴がある。わしは経験上、それがどこにあるのか、だいたいわかっておる。開発言語なんか関係ないんだよ … 」


彼にはこのような優れた能力がある一方で、非常に「口下手」です。実は、われわれコンサルタントの世界で「口下手」であることは致命傷なのです。彼の「職人肌」的な性格もあってか、顧客からの評価は低く、そのため今まで出世しなかったのでしょう。


( 梅さん ) 「いいよ、いいよ、別に出世しなくても。食うには困らんからな。管理職になるよりも、システムを作る方が面白いしな … 」


( 私 )「そんなさみしいこと言わないでよ、梅さん … 」


先日のこと、定例の昇進発令がありました。「おっ ! 」そこには何と、梅さんの名前があったのです。何と 3 ランクアップで、パートナー ( 執行役員にあたります ) に昇進しているではありませんか !


「梅さん、よかったね、おめでとう !」「どうでもいい仕事が増えるだけだよ … 」


梅さんの昇進に関し、日本支社長のコメントは以下の通りでした。


「梅さんは、長く IT 部門の活動に従事し、特にプログラムの品質向上の観点から多大な功績を上げてきました。今後は、IT 部門の QA ( Quality Assurance ) 担当役員として、引き続き任務に当たってもらいます。みなさんも、彼の「味」のあるプログラミング技術を、是非学んでください」


うちの社長も、なかなか粋な計らいをするものです。この昇進は、おそらく日本支社長の推薦によるものでしょう。梅さんのような人は、外資系企業ではなかなか認められません。しかし、日本でビジネスをやる以上、どこの外資系企業にも「梅さん」のような人は存在するでしょうし、それは欠かすことのできない存在なのです。


「奇蹟のカンパネラだ … 」


梅さん、昇進おめでとう。これからもトラブル・シューティングよろしくね !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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