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有元美津世のGet Global!

数字・データに強くなろう(3) - 一次情報 vs 二次情報2021.06.15


 日本でもワクチン接種が進み、日本の知人などからワクチン接種を懸念する声が聞こえてきます。「政府はワクチン接種を進めるために、副反応などの情報を隠している」という人たちがいたので、私は、4月の時点で出ていた厚労省によるワクチン接種後の健康観察の中間報告を、URLとともに送っておきました。

 すると、最近になって、また「メディアはワクチン接種を推進する報道ばかりで、もっと客観的な情報公開をしてほしい」という人がいました。厚労省では、その後も新たな中間報告を出しており、死亡例を含め、さらに詳しい情報が公開されています。その人は副反応を非常に気にしているので、随時、上記の厚労省のサイトにアクセスして、最新情報を見ているのだろうとばかり思っていたら、そうではないようで...

 さらに、「厚労省は、そういう(国民に知られたくない)データを目立たないところに隠している」という人たちもいるのですが、ネットで「厚労省+ワクチン副反応」で検索すると、厚生省のデータが一番上に出てきます。

二次情報より一次情報


 厚労省が医療機関から収集してまとめた一次情報よりも、それをメディアが報道する二次情報の方を信頼する人たちがいるとは、私には考えにも及びませんでした。これまで、このコラムでもいくつか指摘しましたが、メディアを通すと、元データの解釈が間違っていたり歪曲されていたりということは多々あります。だから私は、できるだけ一次情報を探します。(一次情報がどこに落ちているかを探す上で、メディアは役に立ちます。)

 日頃から市場調査をしたり、調査報告書を書いているビジネスパーソンには当たり前のことだとは思いますが、調査などに関わったことがない人には、「一次情報(または一次資料)(primary data)」「二次情報(または二次資料)(secondary data)」というのを聞き慣れていない人もいるようなので、簡単に説明しておきます。

 一次情報とは、アンケート調査や聞き取り調査などをして自分で直接得た情報です。二次情報とは、他の人が集めた情報を間接的に得た情報のことです。たとえば、日本のメディアが「米〇〇紙が△△と報道している」「〇〇大統領が△△と発言した」というのは、二次情報(また聞き)です。(新聞記者などが独自で仕入れた情報は一次情報です。)*

 皆さんも子供のときに、伝言ゲームで人を介するうちに伝言の内容が変わってしまった、というのを経験したのではないかと思います。情報源から離れれば離れるほど、情報が人づてに伝わる間に、情報が正しく伝わらない可能性が高くなるわけです。

 といって、二次情報が使いものにならないというわけではありません。生のデータ(raw data)よりもそれをまとめた主旨だけ読む方がわかりやすいでしょう。先述の厚労省の中間報告書も、20ページ以上からなり、表やグラフが満載です。日頃からデータを見慣れていない人には読みにくいかもしれません。確かに、それをまとめた記事の方が読みやすいです。しかし、調査の意図や対象者、調査方法などを含め精査したいのなら(または自分の報告書で引用したいのなら)、元データを見る必要があります。

 「数字だけが独り歩きしてしまう」というのも、こうした背景から起きてしまうのでしょう。しっかり理解するよりも、パッと目立つところだけを見て理解したと思ってしまう人が多いということです。(ネットの記事や投稿でも、見出しだけ見て、中身読まない人は大勢いますからね。)

陰謀論?


 ちょっと話はそれますが、ワクチン接種に関しては、(医者が)「YouTubeでワクチンに疑問を呈した動画を投稿すると削除された」「YouTubeまでが(日本)政府に忖度か?!」「(日本)政府による言論統制だ」という人たちにも出会いました。ワクチンに対し疑問を呈する投稿を規制しているのは、日本政府ではなく、YouTube(グーグル)やフェイスブック、ツイッターなどのSNS、大手IT企業(BigTech)です。

 こうしたBigTechによる投稿内容の検閲は、今回、始まったことではなく、昨年の米大統領選挙のときには日本でも報じられましたが、その前からも行なわれています。今年に入ってからでも、イギリスの社会主義労働者団体やインドの農家などが影響を受けました。

 これらBigTechでは、コロナウイルスやワクチンに関しWHO(世界健康機関)や各国の公衆衛生当局の”専門家による総意”に反した情報、つまりワクチンの有効性に疑問を呈したり、副反応の可能性を語るだけでも(マイクロチップ埋め込みのようなトンデモだけでなく) ”誤情報(misinformation)”として削除しています。(日本語でも、昨年、ニュースとして流れていましたが。)

 これらBigTechでは、コロナの武漢研究所起源説に関する投稿も”陰謀論”として削除していましたが、バイデン政権が再調査を開始したことから、削除をやめると発表しました。(BigTechが”忖度”しているというのなら、アメリカ政府に対して。というより、昨年3月、ザッカーバーグ氏がファウチ博士に送ったメールによると「当局の広報活動をしたい」と自ら申し出たようですが。)

 巨大になりすぎたGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)は、もう数年前から脅威と見なされ、ヨーロッパだけでなく、アメリカ本国でも規制・解体の動きがありますが、日本では、まだ”正義の味方”みたいに思っている人が多いですね。これに関しては長くなるので、またの機会に。



* 厚労省のデータを自分の論文・報告書で引用する場合は、二次情報。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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