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有元美津世のGet Global!

SDGs取り組み例2021.06.01


 今回は、SDGs達成に尽力している地方の中小企業を紹介したいと思いますが、皆さんは「グローバルに活躍したい」という方が多いでしょうから、海外ビジネス、海外貢献をしているという企業をいくつか拾ってみました。

 下記の企業は、どこも、日本政府が設置しているSDGs推進本部による「ジャパンSDGsアワード」を受賞しています。(受賞先は、他にも、NPOや学校など多々あります。)

自動車リサイクル


 石川県にある会宝産業は、中古車を買い取り、部品を修理して海外90ヵ国に輸出する自動車リサイクル事業を展開しています。同社では、自動車リサイクルを通して、「持続可能な消費と生産」「すべての人々に働きがいのある人間らしい雇用」を促進することを目指しており、SDG 「1 貧困をなくそう」や「12 つくる責任 つかう責任」など貢献するSDGとして7つを挙げています。

 会宝では、現地の技術や調達レベルに合った自動車リサイクル工場を新興国に提案し、持続可能な環境に配慮した自動車リサイクルのバリューチェーン構築しています。「誰一人取り残さない」の理念から、現地の貧困層や若者へ技術研修を行い、雇用の創出も実現しています。

 中古自動車部品の輸入禁止を検討する海外政府もあったため、中古自動車部品規格基準「JRS(国際規格PAS777)」を設け、規格に適合した中古部品のみ輸入することを提案し、実現しました。使用済み自動車の処理が適切に行われないことによる土壌汚染,廃プラスチック、タイヤ等の投棄・野焼きによる環境汚染の防止にも貢献し、目指しているのは地球規模の循環型社会の実現です。
 また、国内でも、定年退職した社員が働けるように農園を設立し、自動車リサイクルで出る廃油を使った廃油ボイラーでハウス栽培を行っています。

 同社社員には、「新興国でBOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスに携わりたい」という具体的な思いから、入社したという若者もいます。

新興国で手洗いプロジェクト


 子供の頃から学校の手洗いなどでよく見かけた緑の消毒液。あれを作っているメーカーが大阪のサラヤです。同社が創業したのは1952年。戦後間もない日本では伝染病が蔓延しており、赤痢予防のためにパーム油で作った消毒・殺菌石鹸を開発したのが始まりです。今では、世界各国に拠点を展開しており、アメリカに工場も持っています。

 サラヤでは、10年以上前に、ウガンダでのユニセフ(UNICEF)の手洗い普及活動支援のために、商品の出荷額1%を寄付する「100万人の手洗いプロジェクト」を開始していました。そうした中、現地で病院の院内感染を防ぐ必要性を感じ、現地法人を設立して、手指消毒液の現地生産、医療従事者への教育、正しい手洗いの普及活動をソーシャルビジネスとして始めたのです。同社では、この「病院で手の消毒100%プロジェクト」を、現地の人々の雇用も創出しながら、現地の社会課題を解決する持続可能なビジネスとして、東アフリカ全域へ広げていくことを目指しています。

 同社が掲げているSDGsは、「3 すべての人に健康と福祉を」「6 安全な水とトイレを世界中に」など、6つです。

難民に眼鏡寄贈


 サラヤよりさらに古いのが富士メガネです。1939年に当時の樺太(現サハリン)で創業し、北海道を拠点に60店以上を展開しています。

 同社では、1983年から海外難民視力支援活動を行なっており、毎年、海外の難民キャンプや国内避難民の居留地を訪問し、視力検査を行って、各自に合った眼鏡を無償で寄贈しています。これまでの参加社員は延べ195名、寄贈した眼鏡は169,446組にのぼるということです。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とは世界で最長のパートナーシップを続けており、2006年には、同社会長が日本人として初めてUNHCR「ナンセン難民賞」を受賞されたそうです。

 同社では、貢献するSDGsとして「1 貧困をなくそう」「3 すべての人に健康と福祉を」など5つを挙げています。

SDGs貢献事業向け融資


 上記とは違い、これは、国内向けの事業なのですが、ユニークなので紹介しておきたいと思います。

 滋賀銀行では、SDGsに貢献する新規事業に取り組む中小企業や個人向けに「ニュービジネスサポート資金--SDGsプラン」を提供しています。最大1億円を、所定の金利から最大0.3%優遇して融資するものです。SDGsに貢献する新規事業に対する金融商品を取り扱うのは、地方銀行としては同行が初めてでした。

 また、同行では、SDGs私募債の取り扱いも行っています。私募債発行企業にSDGsに賛同してもらうと同時に、発行額の0.2%相当を同銀行が拠出して、学校への物品寄贈や社会的課題解決を目指すNPO法人などに寄付するという仕組みです。

 さらに、昨年、「サステナビリティ・リンク・ローン」の発売も開始しました。これは、SDGsやESG(Environmental, Social and Governance)に関連する目標となる「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)」を設定し、それを達成した場合に金利等の融資条件が変動する仕組みの融資商品です。金利の引き下げなどによって、顧客のサステナビリティ経営を支援しようというものです。

 同行では、コロナ禍によりサステナビリティを求める社会的要求が高まっていると見て、今後、サステナビリティとデジタルを軸にした体制を強化するため、「サステナブル戦略室」と「デジタル室」を設置しました。

 1980年代からCSR(Corporate Social Responsibility)に取り組んでいる滋賀銀行ですが、同社のCSR憲章(経営理念)と重なる「地域経済の創造」「地球環境の持続性」「多様な人材の育成」を重要ターゲットとし、2017年に「しがぎんSDGs宣言」を表明しています。なお、「ジャパンSDGsアワード」を受賞した金融機関は、滋賀銀行が初めてです。

 上記以外にも、面白い取り組みを行っている中小企業は、多々あります。皆さんも、転職活動をする際には、SDGsやCSR、ESGといった観点から企業を見てみると、意外な転職候補先が見つかるかもしれません。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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