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有元美津世のGet Global!

大企業の中途採用率公表義務化、そして「キャリアパス」2021.04.27


 日本では、今月、新年度がスタートし、いくつか働き方改革関連の法改正が施行されました。大企業では昨年から適用が始まっている同一労働同一賃金が、中小企業でも適用が開始されました。

 また、大企業に対しては、中途採用比率の公表が義務づけられました。これは、常時雇用する社員数が301人以上の企業に対し、正規雇用労働者の中途採用比率を公表することを義務付けたものです。

 というのも、厚労省の調べで、大企業ほど新卒採用率が高く、中途採用率が低いことがわかっているからです。1990年代からの転職者の推移を見たところ、従業員数1000人以上の大企業では、過去10年ほどで転職者数は大幅に増加しているものの、従業員数300人未満の中小企業と比較すると、転職率は低い水準にとどまっています。たとえば、2017年度のデータでは、従業員数5000人以上の大企業では、採用数全体における新卒採用の割合が63%であるのに対し、従業員300人未満の企業では中途採用が圧倒的に多く、73%を占めているのです。

 これは、企業規模が大きくなるほど新卒採用に重点をおき、企業規模が小さいほど中途採用が活発ということで、中途採用の環境を整備するために、大企業に根強い新卒一括採用慣行の見直しを促すのが、政府の狙いのようです。

転職希望者の認識は?


 Daijob.comを展開するヒューマングローバルタレント社では、今回の法改正が、中途採用市場でキャリアアップを図るグローバル人材にどのような影響を与えるのか、同サイトに登録している求職者を対象に独自調査を行いました。

 まずは、今月から大企業で中途採用比率の公表が義務化されることが、どれだけ周知されているかですが、日本人、外国人の登録者ともに、回答者の8割以上が「知らない」ということがわかりました。皆さんは、知っていましたか?

 また、転職活動時に、「中途採用比率を意識していた」のは、外国人(68%)が、日本人(32%)の倍以上の割合でした。日本で働く外国人は新卒採用でないケースが大半ですから、「この会社は、中途でも雇ってくれるの?」と気にかけるのは当然といえそうです。

 中途採用比率を「意識する」理由を探ってみると、日本人(72%)、外国人(67%)ともに「社風を知るきっかけ」が一番多いのですが、次の「職場に馴染めるのか気になるため」というのは、外国人(39%)に比べ、日本人(66%)の方がかなり多いのです。「中途採用者が少ない職場には、入り込みにくい」と心配する人が、日本人には多いということでしょうか。

 大企業の転職比率公表が始まれば、そうしたランキングも登場するでしょうから、今後は転職比率を転職の際に参考にする人も増えそうです。

 

キャリアパス


 最後に、「転職時に、基本的な求人情報以外で何が知りたいか」という問いに関しては、一番多い回答が、日本人では「離職率」で、外国人ではダントツで「キャリアパス」でした。


 日本人で離職率を気にする人が多いのは、「離職率が高いということは、職場環境が悪い?ブラック企業?」と思う人が多いからでしょうか。

  一方、日本企業で働く外国人社員の不満のひとつに、「キャリアパスが描けない」というのがあります。 「この会社で、この仕事を〇年したら、こうキャリアアップして、その後は...」というのが見えないのでは、将来像が描けず、働くモチベーションも上がらないでしょう。また、「この会社では、日本人でないと幹部になれない」「この会社にずっと勤めても、キャリアが積めない」と思われれば、優秀な人材に敬遠されても仕方がありません。

 外資系企業の多くでは(日本企業と変わらない外資系もある)、自分でキャリアパスを描いて、キャリアアップのために転職を繰り返すというのは、以前から当たり前でした。一方、大手日本企業では、長年、勤めるうちに、年齢とともに昇進していき、自分でキャリアパスを考える必要性は、あまりありませんでした。*

 しかし、終身雇用が崩壊しつつある今(多くの中小企業には元々ないけど)、コロナ前から早期退職を募集する大企業が増えていましたが、コロナによる経済的打撃で、その傾向は加速するでしょう。若い皆さんは、大企業に入れば、あとは安泰という時代は終わったことはお気づきだと思いますが、ポストコロナの時代、就活前から(理想的には大学に入る前から)自分でキャリアパスを練っておく必要があるでしょう。



* 日本語でいう「キャリアパス」は、ひとつの企業の中での昇進の道筋を示す「キャリアパス制度」を指していることがあるが、元々の英語のcareer pathというのは、キャリア全体を通じたもので、一企業に限ったものではない。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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