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有元美津世のGet Global!

民主主義を考えよう(3)メディアとSNS2020.11.24


 コロナ禍で“禍転じて福となす”側面があるとすれば、まず普通に生活できる日常の有難みがわかったこと、そして、コロナに関する煽り報道でメディアを信じない人が増えたことではないかと、私は思っています。(そして、米大統領選の報道で、日本のメディアは米主流メディアの報道を垂れ流しているだけだと気づいた人が増えたことも。[i]

  今年1~2月に40カ国を対象にオンラインで行われたアンケート調査では、日本で「大半のニュースは信頼できる」と答えた割合は37%と、中央値に近い値でした。[ii] アメリカ(29%)やイギリス(27%)、フランス(23%)、アジア諸国は、それより低いのですが、アメリカの場合、「信頼できる」と答えたのは、左派の39%に対し、右派では13%のみでした。(なお、イギリスでは逆で、EU離脱反対の左派が15%のみ。)

 一方、「客観的なソースからニュースを得たい」と答えた人は、ドイツ(80%)に次ぎ、日本が78%と多かったのでした。(日本では「メディアは中立であるべき」と思っている人が多い、と私も常日頃、感じている。)

 ここでも、アメリカは他の先進国と違い、「自分の視点を共有するソースからニュースを得たい」という人が30%と、ブラジル(43%)とスペイン(34%)に次いで多いのです。

さらに、アメリカでは、テレビの(24時間)ニュースを見る人は、42%が「自分の視点を共有するソースからニュースを得たい」と答えています。それも、中高年より若い人に、その傾向が強いのです。

 アメリカでは、右派はFox News(全米で視聴率最高)、左派はCNNやMSNBCしか観ません。テレビ以外の媒体でも同じです。ですから、アメリカには、あらゆることに関し右派の現実、左派の現実という二つの現実が存在し、社会で共有された“現実”というのがないのです。(が、日本を含めアメリカ国外には、“左派の現実”しか伝わらない。)

 これだけ社会が分断すれば、各メディアが社会全体からまんべんに信頼を得るのはむずかしく、自社の客層の信頼を維持するために、その層が喜ぶコンテンツを提供することに力を注ぐことになります。近年では、中立の立場からの客観的な報道よりも、一定の大義や思想を提唱する「“advocacy journalism”の方がいい」という声すら高まりつつあります。

見たいものしか見ない


 こうした傾向は、SNSの登場で、さらに拍車がかかりました。SNSでは、コンテンツが個々のユーザ向けにパーソナライズされるため、右派ユーザには右派のニュース、左派には左派のニュースが流れます。これは、4年前の米大統領選の際、実験でも証明されており、「D・トランプ」「H・クリントン」といったトピックに関して流れるコンテンツは、右派(赤)フィードと左派(青)フィードで驚くほど違っていたのです。そのニュースのソースも非常に偏った新興メディアやオピニオンサイトが多く、両派とも「見たいものだけしか見ていない」のです。

 SNSでの友達も、政治的志向が似た人たちが集まるため、共有されるニュースも自分たちの信じていることをさらに強固にするものになりがちです。その人の信条に反するコンテンツを流すと友達登録を削除され、「〇〇の支持者は私を今すぐ削除して」「△△に反対の人はフォローしてくれなくて結構」といった投稿が珍しくないのです。

受け身な情報消費者ではなく


 日本でもSNSが登場してから炎上事件が多発するようになりましたが、その拡散力が大きな要因です。選挙戦でも、まじめな政策討論よりも過激な発言の方が注目を浴び、拡散されます(メディアも書き立てる)。テレビで公開討論会など見ない人でも「トランプがまたこんな発言をした」といったコメントはSNSで共有するのです。

 自分は実際にその発言を聞いていないのに、本当にそうした発言がなされたかどうかを検証することもなく、「〇〇と発言した」という人のコメントが拡散され、そして、それが世論として築かれて行きます。

 考え方が似た人が集まったSNSの友達の輪では、情報拡散のスピードが速いという実験結果もあります。「見たいものだけしか見ない」環境では、賛同しない内容のものは無視し、自分の信条と一致するものであれば、デマかもしれなくても疑うことなく拡散するのです。そして同じような考えの人が集まったグループでは、メンバーの賛同を得ることで、自信を得て意見がどんどん極端になっていくとも言われています。

 先述のアンケート調査で、35歳以下では、調査対象国全体で、テレビよりもネット、SNSからのニュース取得の割合が多いという結果が出ました。(とくにインスタグラムが伸びている。)選挙の行方を左右するまでになったSNS。利用するにあたり、受け身な情報消費者として「見たいものだけを見て」拡散するのではなく、常に疑いの目をもって、その出所を確認し、他の視点がないかも探求し、自分で考えて調べる姿勢を忘れないようにしたいものです。





[i]  現地の特派員が「〇〇紙が、こう報じています」って、何のために現地にいるのか…

[ii] オンラインでの調査なので、シニア層に多いテレビ・新聞派が含まれると、もっと高い可能性あり。またパンデミック発生後まもなくの調査なので、今、調査すれば、各国とも信頼度は、もっと低いかも。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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