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有元美津世のGet Global!

インドのカーストと肌の色2018.05.29


 前回の映画「Hindi Medium」に出てくるデリー郊外のハイソなVasant Viharの住人は皆、白人のように白い肌です。インド人は皆、浅黒いと思っている人たちがいますが、ボリウッド映画を見ればわかるように、有名俳優の大半が肌が白く、髪の毛を染めたり、カラーコンタクトを入れていると白人にしか見えない人たちもいます。(主に南部タミル地方で話されるタミル語の映画に出てくる俳優は、浅黒い人が多いですが。)
 一方、インドのあちこちで清掃員をしている人たち(不可触民)は皆、肌が黒いです。列車に乗るときも、プラットフォームで待っている人たちの肌の色や服装で、何等車が着くあたりか見当がつきます。

「色白の花嫁求む」


 インドでは、今でも子供の結婚相手を探すために新聞の三行広告欄(classified ads, personal ads)に「花婿募集(Grooms Wanted)」「花嫁募集(Brides Wanted)」の広告を出す親が多いのですが、「花婿募集」の場合、「当方美人」以外によく見られるのが”fair”。これは”fair skin”のことで「白い肌」という意味です。広告には「当方の娘は very beautiful, very fair, slim and ...」といった表現が並んでいるのです。
 「当方、米市民(または永住権保持)」「英市民」といったアピールも多いのですが、
「カナダ市民、extremely beautiful, very fair」というのもあり、カナダ人になっても価値観はインドのままのようです。
「花嫁募集」広告でも、「色白でスリムな女子求む」というのがよく見られます。その上、「背が高いこと」という条件も珍しくなく、「5フィート4インチ(164.5cm)以上」などと具体的な身長が述べられている広告もあります。

漂白・美白は一大産業


 社会的に「色白=きれい、色黒=醜い」という概念が浸透しており、生まれたときから刷り込みが始まります。 数年前に行われたアンケート調査では、男女回答者300人のうち70%が「デートの相手や恋人は色白がいい」と答えたそうです。

 そのため、インドでは漂白(bleaching)、美白(chemical peeling, whitening creamなど)が一大産業を成しています。世界初の美白クリーム「Fair & Lovely」が登場したのは1970年代で、40年以上の間、インド人女性は涙ぐましい努力をしてきたのですが、近年では男性向けに「Fair & Handsome」といった名前の美白製品が人気を呼んでいます。*

 世界保健機構(WHO)によると、美白化粧品を日常的に使う人の割合は、インドでは61%で(ナイジェリアでは77%)、とくに結婚式前には、漂白するためにエステを訪れる男女が後を絶たないようです。

求むは超ハイスペック


 花嫁・花婿ともに、募集広告ではMBAや博士号など取得学位、「MNC(Multinational Corporation=多国籍企業)勤務」と職業も掲載されています。「花嫁募集」には”professionally qualified”といった条件が入っているものも多く、「美人で色白でスリムで背が高い」だけでは足りず、高学歴でキャリア的にも成功していないといけないようです。まさに「求むスーパーウーマン」!

 さらに家柄も大事で、「良家」だけでなく、「当方ブラフミン(カースト最上層)」「上層カーストに限る」といったカーストに言及するもの、「当方、父親医者、母親大学教授」「両親ともに公務員」「父親元政府高官」と親の職業をアピールする広告もあります。

 容姿、学歴、キャリア、家柄をクリアしても、星占いで相性が合わなければ不可という家庭もあり、** 「条件すべてにマッチする人なんて見つかるのか?!」と思わずにはいられません...

 

 

* 日本を含め多くの国では健康被害のため禁止されている製品も。

** 結婚によくない星回り(Manglik)の人は敬遠され、「うちの娘はnon-Manglik」とうたっている広告多。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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