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有元美津世のGet Global!

語学は習うより慣れろ(1)— カンボジアのマルチリンガル少女2016.03.01

 

このコラムで「英語が話せるようになるには実践あるのみ」と何度も言っていますが、それを証明してくれた10歳の女の子がいます。

 

昨年、カンボジアに行った際、アンコールワットの売店で休憩していると、物売りの女の子が絵はがきセットを売りにやってきました。

私が宿泊していたゲストハウスのオーナーは、農村部の貧しい子供たちが教育を受けられるように財団を作って運営しており、

「子供の物売りからは買わないように。微々たるお金と引き換えに親は子供を貸し出しているのであって、稼ぎは元締めにわたる。児童労働・搾取に加担しないでほしい。観光客が子供たちから一切、買わなくなるのが、その子供たちにとっては一番」

と言われていました。そこで、絵はがき買うのは断ったのですが、その子の英語が実にうまいので、いろいろ質問をしておしゃべりしました。

 

こちらが英語ネイティブに話すスピードで話しても、ちゃんと理解でき、彼女も非常にわかりやすい発音で、英語でスムーズに会話ができるのです。(マレーシアでは大人相手でも、なかなかスムーズに会話ができない。)

私が日本人とわかると、今度は日本語で「1ドル」と売り込んできました。日本語でも「こんにちは」「ありがとう」といった簡単なフレーズが言え、数も1万くらいまで数えられるのです。

 

そこで、「北京語は?」「韓国語は?」「フランス語は?」「スペイン語は?」と次々、聞いていくと、やはり1000~1万くらいまで数えられ、簡単なあいさつができるのです! 「あと何語ができるの?」と聞くと、タガログ語もできると。

 

「学校、行ってるの?」と聞くと、「1時から(自転車で)行く」と言い、将来は教師になりたいということでした。そこで、「稼ぎは大人にとられるかもしれないが、ちゃんと学校に行っているのなら」と思い、彼女の才能を評し、絵ハガキを買うことにしました。(他の物売りの子は、彼女ほど英語がうまくないし、何ヶ国語もできない。)

 

大人顔負け

 

米ドルは、あまり手元に残っていなかったので、「(マレーシア通貨の)リンギットでもいい?」というと、「5RM」と言います。その頃、レートは1ドル=4.25くらいだったので、「4RMにしてよ」というと、「ノ~。5RM」というので5RM支払いました。(子供相手に値切るなって?)(汗)

 

彼女は、自分が売っている商品の価格を各通貨で把握しており、対応できるのです。

その後、大人の物売りが20ドル以上するカンボジアに関する本を売りにきましたが、「もうドルはない。リンギットしかない」というと「リンギットでもいい」と言います。すると、「200RMって何ドル?」と聞いてきたので、「50ドル近く」というと、「えっ」と顔が曇りました。どうも、為替レートを理解していなかったか、ちゃんと換算できずに誰かにぼったくられたようです。

 

「大の大人が情けない!あの10歳の女の子を見習え~」と思い、そんな大人からは何も買いませんでした。

頭の切れる彼女が、周りの大人に搾取されず、将来、希望どおり教師になれることを祈るばかりです。

 

 

<余談>

ちなみに、過去2年、新興国の通貨が暴落していますが、97年のアジア通貨危機以来の最安値を記録したリンギット。マレーシア人は隣国タイではリンギットでの支払いを拒否をされると嘆いていますが、カンボジアではOKでした。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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