MBA 転職実現への道

グローバル人材としてのMBAホルダーの生き残り方

 

グローバルタスクフォース株式会社
代表取締役社長 山中英嗣



  • 就職・転職活動の際に気をつける点はありますか?

前項で、MBA のニーズ(活躍する場面)が増える、と述べましたが、ここで重要なことは、「ニーズが増える」=イコール「売り手市場になる」、ではない、ということです。

ここ 30-40年で日本人の MBA 留学が定着してきたと同時にと、日本国内でもMBAを提供するスクールが従来の 10 倍以上にも増えました。  世界で 3,000 プログラム以上あるといわれる MBA プログラムの中でも、英フィナンシャルタイムズ紙等でランク付けされた世界トップ 100 (米国トップ 25、 欧州トップ 20、および各国トップ校)の日本人卒業生累積で見ると、約 2 万人前後存在します。

しかしながら、未だ MBA の評価は定着していません。 それはスクール自体の問題というより、学びに行く MBAキャンディデート個人の問題であることが多いと考えます。  つまり、能力云々以前の問題で、MBA 自体を取りにいく「目的意識」の段階で大きなバラツキがあるからです。 MBA の学習をする人によって、MBA を学習する目的が異なると、 当然実際に学習(予習・復習含む)を行うプロセスそのものも変わってきます。 

「箔をつける」、「人脈をつくる」等の動機のすべてが悪いとは思いませんが、主目的がそれでは確実に大きな機会損失を生んでしまうことになると思います。

それらの副次的な動機(あえて不純な動機とは言いません)が主目的に変わってしまうと、学習以外のこと(例えば、「卒業すること」自体が目的化しがちです。  そして、それは小手先の試験対策に時間を割いたり、先輩のレポートの取得にパワーがそそがれてしまう、といった学習のプロセス自体に大きな変化を導きます。

その結果、本来の主目的であるはずの「不確実な世界における経営上の重大な意志決定を行う力」が培われず、大抵、本を読んだ程度の知識の蓄積だけで終わってしまうのです。  逆に言えば、現在にいたっても、「知識」をアウトプットするための「知恵」にできていない(またはすべきとさえ思っていない) MBA も多く存在しているのも事実です。

このように、MBA の価値はその後のキャリアよりも、MBA 時代の学習プロセスの時点で既に差がついているといえます。冒頭で述べたとおり、「個人の能力とは別」 の話であることが多いのも事実です。 つまり、課題の捉え方とそれに気づくための「気づき」の問題です。 今一度、ビジネススクールで学んだ内容を「自分の腹に落ちる形で再確認されることをお勧めし ます。 スクールは成功事例を学ぶ場でも、失敗事例を学ぶ場でもなく、「戦略と戦術、施策間の整合性」と「(一発で死なないように)不確実な世界におけるリスクヘッジのためのシナリオプランニ ングの精緻さ」の 2 つの疑似トレーニングの場であることを思い出して頂きたいと思います。


  • MBAホルダーの強みをどのように活用していくべきでしょうか?
  • 前項で述べたように、まず「知識を知恵にする必要がある認識を持つ(その必要性に気づく)」ということを大前提に、目先や専門分野(部分最適)ではなく、 全体最適の骨太の意思決定をすることを心がけてキャリアを磨くことが重要といえます。

    知識を知恵にする、という例では、たとえば MBA 入学者の「気づき」でも大きな開きが見られます。 たとえば、前項で述べた MBA スクールへの入学後、ケース学習の目的を 「成功事例から学ぶ」や「失敗事例を反面教師に」といったとらえ方で MBA プログラムを終えた方は、おそらく MBA プログラムでの学習目的をほとんど達成し得ないまま卒業されたことになります。 

    ケースと同じ場面など現実的に起こり得ない中では、あらゆる視点の前提条件の変化によって、ある意志決定が失敗を引き起こす可能性があるという視点そのものが重要であり、 それはまさに「利益の最大化」よりもずっと重要であり、経営の大前提となっている、「会社を揺るがすような意志決定を避ける」ことによる経営の継続を果たす必要があります。

    つまり、「会社を一発でつぶしかねないような大きな失敗をしないために、さまざまな不確実性の存在をあらゆる視点で認識し、シナリオに基づく対策を打っておく」ことが、 まず最初の制約条件として満たされていないといけません。 その上で、「利益(企業価値)の最大化を図るための一連の戦略・戦術・施策群を打ち続けること」が重要、という 2 つの相反するシナリオが必要といえます。 現実的な企業経営で、理想的な「最善策」を採れるケースなど、ほとんどないわけですし、会社が上手くいっており、リスクも考えなくて良いなら、 経営者は誰でもよい、ということになってしまいます。

    そのため、役職や職種など関係なく、「視点を引いて全体最適の意思決定を行える」ことを心がけることが、キャリアを積んでいく上で非常に重要なステップといえます。その意味では、 ものごとを常に目先ではなく、鳥瞰して意志決定できる訓練をしてきた人が潜在的に活躍できる人といえるかもしれません。 そして、それができるキャリアは、ある程度自分のキャパシティを超える 程度の権限委譲がされる企業といえます。 ストレッチし続けなければ成長できません。そのストレッチを自らに課せる組織がどこか、を探すためには、HPや人事の方のお話だけでなく、 現場の社員や取引先などを含め、幅広くリファレンスをとることが重要だと思います。

    繰り返しますが、「MBA卒業生のニーズが増える」=「売り手市場になる」ではなく、「ニーズが増える」=「MBAの中での勝ち組と負け組がより厳しく選別されることになる」、 ということなのです。 現に、活躍している MBA はヘッドハンターよりも前に知り合いを通じて直接いくつもの仕事のオファーがあるなどして、1 人で 20-30 の紹介がある一方、  負け組のホルダーは求人求職サイトや人材紹介会社への登録をしても半年、1年仕事が決まらないことも稀ではありません。


  • それでは最後に、キャリアアップを目指すダイジョブユーザーにメッセージをお願いいたします。
  • 世界の主要ビジネススクールが共同で運営する組織から生まれた弊社では、約 1万 6,000人の日本人 MBA 同窓生をネットワーク化していますが、真に活躍する人の思考・行動様式は共通です。

    つまり、「失敗して反省して改善するのは猿でもできる。 成功しても、あの時こうしておけば、もっとも良い結果を生んだかもしれない」ということを 5つも 6つも出せるような思考の癖をつけること] (「成功しても改善」)、そしてその「気づきのサイクルを短く、早く回していく」こと。 この 2つを心がけて、役職や年収が上がっても決して勘違いすることなく、謙虚に自己成長できるよう応援し ています。


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    グローバルタスクフォース株式会社
    代表取締役 山中 英嗣

    国内大手通信会社を経て、コンサルタントとしてロンドン・ビジネス・スクールのMBA同窓生支援サービス(現Global Workplace)の世界規模ネットワーク化及び法人化に参画。 英国国立マンチェスター大学ビジネススクールMBAプログラムへ入学後、リサーチに従事。大学院国際開発行政・経営研究所(IDPM)修士課程修了(MPhil)。上場および未上場企業複数社の取締役のほか、 非常勤講師(関西大学大学院商学研究科)等を兼務。