ON & OFF バランスライフ
     

「そうですねぇ。平日は常に On モードで突っ走ってますから、スーツを脱いだ Off の時間を大事にしています。一番の楽しみは、週末のウィンドサーフィンですかね……」

…… 何言っとるんじゃ、こいつ。カッコつけやがって……

銀行員だったころの私。『デキるビジネスパーソンのOn&Off 過ごし方』なんてタイトルの記事を見るたびに、そんなにうまい休日の過ごし方をしている会社員なんて、この世に存在しないと思っていました。

銀行員も、基本的に土日はお休みだったわけですが、その週の残務処理をするために、ほとんどの土曜日は出勤していました。そして、本来「Off」であるはずの肝心の日曜日は、昼過ぎまで爆睡。目が覚めたら、すでにお日様が傾きかかっています。

「あーーあ、あと少しで来週が始まっちゃうぅぅ…… また仕事かぁ、やだなぁ……(T−T)」

 
気持ちはすでに、来週の仕事のことを考えています。特に何をするわけでもなく、TV を見ながらダラダラと過ごし、せっかくの日曜日が終了…… こんなことを毎週繰り返していました。

周りの上司や同僚を見渡しても、私と似たような過ごし方をしていたように思います。そもそも、上司自身が土曜出勤をしているわけですから、部下としては出勤しないわけにはいきません。土曜に出勤するなんていう規則はないのですが、土曜は出社するものだという「暗黙のルール」が職場を支配していたのです。土曜日に会社に行かなかったりすると、「あれ、タカシはお休みか。体調でも壊したのかな……」なんて、わけのわからない心配をされるのがオチです。

 
こんな先輩もいました。私が勤めていた銀行には、「10 年目リフレッシュ休暇」というのがあって、勤続 10 年の社員は 1 ヶ月の特別休暇を取得できることになっていました。その先輩は 1 ヶ月休暇を取得するにあたり、最新のパソコンとプリンター、高性能のファックスを買い込み、みんなの前でこう言ったのです。

「課長、これで家でも思う存分仕事できる環境が整いました。休暇に入っても、通常通り頑張ります ! みんなも遠慮なく連絡くれよな。自宅でバリバリ頑張るからさ !」

日本の多くの会社員は、程度の差はあるにせよ、ほぼ上記の例に当てはまると思います。形式的にはお休みを取っていても、その実態は、実際に仕事をしているか、ないしは仕事のことを考えて過ごしています。そこには「On&Off のバランス」なんて考え方はなく、「On 一辺倒」しかないのです。確かに仕事量もそれなりに多いのですが、延々と働き続けなければならないほどの量でもありません。では、何のために休日も働いているのかというと、ズバリ「私は休日も会社のために働いていますよ。会社のために全てを捧げているのですよ。だから、みんなよりも低い評価はしないでくださいね……」ということを伝えたいだけなのです。上司も基本的に同じ考えですから、そのような「モーレツ社員」を評価しがちです。本来は「質」を問うべきはずの業績評価が、時間的な「量」のみになっているわけで、そういう評価であるがために社員は休日も働き続ける…… という悪循環を繰り返しているのです。


外資系企業に転職した後しばらくの間は、私は銀行員時代のライフスタイルを変えませんでした。平日も遅くまで残業し、土曜日も出社していました。でも、銀行員だった頃と、何かが違うのです。

まず、平日の夜遅くとか土日には、社員の姿がほとんど見当たりません。土曜に出社したって上司がいるわけでもなく、「私は頑張っているんですよ !」とアピールする相手がいないわけです。

次に、評価の項目も、銀行時代とは大きく変わりました。銀行時代には、数字で表現できるような定量項目はあまりなかったのですが、外資では数字さえ稼いでいれば、あとは何をしていてもいいよ、みたいな評価項目が中心だったのです。もちろん、銀行員でも課長や支店長クラスになれば、定量評価が重くなってきます。しかし入社 10 年目ぐらいまでは、数字ではあまり評価されず、もっぱら上司に気に入られるかどうか、まさに「情実人事」がまかり通っていたような気がします。

一方、外資ではヒラ社員であろうが役員であろうが、また営業だろうが事務職であろうが、「数字」に置き換えて評価する体系が出来上がっています。上司だって、自分の言うことを「ハイハイ」ときいてくれる日本型社員よりは、多少わがままでも数字を稼いでくれる社員の方がかわいいわけで、「量」よりも「質」の評価ができるわけです。

また、銀行員時代にはなかった評価項目として、「Work & Life Balance」というのが加わりました。これは、「仕事と生活のバランスをうまく取っているか ?」 ということ、つまり「On&Off」をきっちり切り分けて、やるべきときに最大限の力を出し切っているか、ということを評価されることになったのです。こうなると、「On 一辺倒」で上司に気に入られようという日本の伝統的なスタイルを通したのでは、出世も覚束なくなってきます。

 


要は、お客様や会社に迷惑をかけない範囲において、数字さえ稼いでいればだれからも文句は言われないわけですから、「自分なりのライフスタイル」を貫いた方がいいに決まっています。

一般的に、外資のフレックス勤務は徹底していますから、集中してやるべきときには徹夜する、その代わり翌日の午前中は休む、なんてことも可能です。ここまでは「On」、これ以降は「Off」という切り分けを、自分の意思で、ある程度決めることができるのです。

そもそも人間の集中力なんてのは、それほど長時間継続できるものではありません。やるべきときに最大限のパワーを出すためには、やはりそれに見合った休息が必要なわけで、そういう意味では、On が 5 に対して Off が 2 という割合(平日:土日の日数のことを言っています)は、それなりに妥当な気がします。つまり、少なくとも 1 週間に 2 日ぐらいは「Off」を作らないと、肝心の「On」で十分な力が発揮できないということです。

外資系企業が日系企業より優れているのは、その「5:2」というバランスをうまく取っていくためのルールやインフラが整備されていることだと思います。逆に言えば、日系企業に勤めている人は、自分自身がかなり意識してバランスを保っていかないと、「5:2」というバランスはおろか、ズルズルと「7:0」=「On 一辺倒」になってしまうということです。


さて、「Off」の時間を確保できたとしましょう。次に問題になるのは、「Offに何をしようか ?」ということになります。これに対する私の意見はいたって単純でして、「好きなように過ごせばいい」、ただこれだけです。

冒頭に述べた例にもあるように、世の中には、せっかく確保した Off なんだから、何かカッコいいことをしなくちゃいけないというような、変な誤解があります。確かに、みんなが「へぇー、すごいね !」というような趣味や遊びをしている人はカッコよく映ります。しかし、「Off」の目的はみんなから喝采を浴びることではありません。自分の好きなこと、やりたいことに時間を使うことで、幸せを実感することこそ、本来の目的のはずです。無理に背伸びしたって疲れるだけです。

私の場合も、スキューバダイビングやジェットスキーなど、「カッコいい系」に手を出した時期がありました。でも、これって日常的な「Off」ではなくて、どちらかというと「Event」という感じなんですよね。今でも年に 1 回ぐらいダイビングをしますが、私にとっては「Off = ダイビング」というほどの、重要な存在ではありません。

傍目には平凡であっても、自分にとって一番の過ごし方、それこそ「究極の Off」なのだと思います。私の「究極の Off」は、うちの奥さんといろいろなことを話しながら、愛犬ゴルゴと自宅近辺を散歩することです。何ものにも代えがたい、私にとっての至福のとき。これがあるからこそ、明日からの「On」も頑張ろうって気になるんですよね、なーーーんて、ちょっとノロケちゃってますかね。

重要なことは、5:2の適度な「On&Off バランス」を保つこと。自分なりの「Off」を満喫すること。みなさんも、充実した「On&Off バランスライフ」を過ごしてくださいね ! 私は奥さんと一緒に散歩に行ってきまーーーす。では !

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