悩みに答える転職相談
石原

相談者の悩み( H.N.さん、36 歳 )
私は専業主婦として仕事から離れていたことがあり、職務経歴にブランクがあります。その上、ひとつひとつの経歴が短く、経験と呼べるものが少ないのではないかと感じています。夫の転勤に伴い上京しましたが、現在は別居しています。生計を立てるためにも正社員として働きたいという意欲もあるのですが、どのように自分をアピールしたらいいのかわかりません。年齢についても不利になるような気がして、一歩目が踏み出せないでいます。

【相談者 経歴】 短大卒業後、メーカーに勤務。5 年後に結婚のため退職し、一時は専業主婦をしていた。紅茶の輸入卸、広告代理店の総務、ジュエリーの販売、外資系メーカーの経理などを経験し、現在は、派遣社員で大学院薬学研究室の事務の仕事をしているが、正社員を目指して転職先を探しているところ。趣味はフランス語。
人事担当によって受け取り方の違うバックグラウンド。取り繕うべき? 正直に話すべき?
相談者
今日はよろしくお願いします。
石原さん
まず最初に、Nさんが気にしておられる 1 社あたりのキャリアが短いという点についてですが、それぞれ転職の理由がもっともでわかり易いですから、何も引け目に感じる必要はありません。堂々とオープンに語っても問題ないと思います。
相談者
しかし、人事担当者によって受け取り方が違うような気がするのですが……。
石原さん
たしかに価値観の問題はありますね。「長く勤めていないこと」に対して眉を潜める人がいることは事実です。一方では、事情をきちんと汲んでくれる方もいます。どちらにあたるかはクジのようなものですから面接に挑む前に心配していても仕方がありません。どの会社に行っても同じ話をしなければならないし、プライベートの部分を絡めて説明するのはつらいかもしれませんが、それでも当たりクジを引けば前に進むものなんですよ。ハズレならハズレと割り切って、縁がなかったと気楽に受け止めた方がいいでしょう。
相談者
私の場合は、どうしても家庭の事情について話さなければならないので、たしかに面倒なところはあります。
石原さん
どんな仕事であれ、キャリアを積み重ねるというのは信頼を確立していくことと同義ですから、何であれ正直に話すことは大切だと思います。
相談者
私自身も接客の仕事をしていたときに、短時間でお客様の信頼を獲得するためには正直になることが大切だと思っていました。ただ、いくつも面接を受けていく中で、いろんな考えをする人がいることがわかり、迷ってきたんです。
石原さん
アンラッキーが続いてくると、正直が一番とわかっていても、それを貫くことに躊躇してしまいますよね。ただ、私は自分の素の状態を曲げてまで取り繕うのがいいとは思えないのです。一度嘘をつくと、それを後々まで引きずることになります。結局、苦しい思いをするのは自分自身なんですよ。だからこそ、自分の素直な部分を出して、それを受け止めてくれる会社を探すことが大切なんです。受け手のタイプは様々ですから、こっちが心配してもしょうがないんです。常に同じサインを出し続けていれば、いつかは良い会社と巡り会えるでしょう。
相談者
ishiharaわかりました。実はもうひとつ教えていただきたいことがあるんです。私は正社員としての採用を希望しているのですが、今まで経験したことがない分野にチャレンジしてもいいものかどうか悩んでいるのです。事務系の仕事が大半でした。その中で一度だけ販売の仕事をやって、うまくいったことがあるんです。もしかしたら私は何かを売る仕事の方に向いているのではないかと考えつつ、その一方で経験の不足が不安で……。
石原さん
まず、ハッキリお聞きしますね。今、Nさんがやりたいのは事務ですか ? それとも販売 ? あるいはそれ以外の仕事 ?
相談者
どんな分野であれ、自分の仕事が周囲の人たちの役に立っているという実感があるものに取り組みたいと考えています。販売にも興味がありますが、どんなモノを扱うのかというところで悩んでいます。以前はアクセサリーの店舗で働いていましたが、違うものでもいいのかといろいろ考えてしまって、なかなか先に進みません。
石原さん
うーん、そもそもNさんが、具体的に何を迷っているのか、今ひとつわかりにくいのですが……。
相談者
正社員で働くという点に焦点を合わせたいのですが、どういう風に選択肢を広げていけばいいのかわからないのです。
自分の進みたい方向と実績のギャップ。どうしたらいいのでしょうか?
石原さん
では、第一の目的は「正社員になること」でいいわけですね。そこに到達するまでに事務か販売かで選ばなければならない。そこが決められない、ということですか ?
相談者
そうですね。
石原さん
それだと正社員になれるのだったら、どっちでもいいということになりませんか ?
相談者
ずっと事務系の仕事を目指していたところがあります。ただ、よく考えてみると、ある職場で尊敬していた上司の後を追っていただけなのではないかと思うようになりました。販売の仕事の時には形のある物だけでなく、情報やサービスを売る仕事に向いているかもしれないと悩み、事務の時には一般的な事務仕事よりも、私は人事のサポートをやってみたいのかもしれないと悩み……いずれにしても経験が不足しているので、どうしたらいいのかわからないんです。
石原さん
ごめんなさい、やっぱりまだNさんの悩みが具体的に見えてこないんです。やりたいのは事務なんでしょうか、それとも販売なのでしょうか ?
相談者
今まで事務一辺倒で来たのが間違いだったのかもしれないと思うようになった、といえばいいのか……。
石原さん
ご自身の中でまだ整理がついていないのかもしれませんね。じゃあ、ちょっと視点を変えてみましょう。Nさんが新卒の学生で、今から自由に仕事が選べるとしたら、どんなことをやりたいですか?
相談者
人のサポート、です。
石原さん
「人のサポート」はどんな仕事でも当てはまりますよ。それでは、まだ具体的とはいえませんよね。
相談者
焦点を絞るためにいろんな情報を取り込もうと努力しているのですが……。
石原さん
もしかしたら、何かひっかかる点があるのではないでしょうか。年齢だとかキャリアの短さといった部分を気にしていたりしませんか ?
相談者
ええ、そう思います。私自身はどんな仕事であっても慣れるのは速い方だと思うのですが、キャリアの短さや年齢のことがあって踏み出せないのかもしれません。
石原さん
まず、そこで考え方を変えてみませんか ? 年齢は平等なんです。誰だって時間が経過すれば同じように歳を取る。それは動かしようがありませんから、悩んでも仕方がないことなんです。同じように悩むとしたら、今からの自分について悩みましょう。たしかに時間的に見ればNさんのキャリアは短いのかもしれません。しかし、販売の仕事では実績を残しているじゃないですか。
相談者
はい。ただ、販売の数字に関していえば、下で働いていたスタッフの子たちが頑張ってくれたからであって、周囲に盛り立ててもらったところもあるんです。これをもって「自分がここまでやりました」となかなかいいにくいというのが正直なところです。
石原さん
販売スタッフが頑張った結果というのは店長の実績そのものですよ。それはアピールしてもおかしくないと思います。
自分に自信を持こと!判ってはいるのですが、なかなか・・・
相談者
ishihara転職の活動を続けていく中で、少しずつ自分のことを自分なりに認められるようになりました。それでも、主婦のときの感覚が残っていて、人に対して「私がやりました」と自信を持っていいにくいところがあります。
石原さん
ハッキリいって、それは主婦の感覚とは関係ないことだと思いますよ。Nさんは控えめというか、自信が足りないところがありますよね。過去の自分を悔やんでも仕方がないので、これからは未来の自分について考えてみましょう。
相談者
なんとなくわかります。今は派遣社員として働いているのですが、面接に行った時、職場が楽しそうだったので、思わず「明日から働きたい」といったんです。そうしたらすぐに採用されました。
石原さん
ご自身の中の何かをうまくクリックすることができたのでしょうね。やっぱり明るくて素直であることが一番なんですよ。同じ職場で働くわけですから、そこが一番問われる。経歴や年齢というのは、あくまでもその次なんです。
相談者
将来的に外資系で働いてみたいという気持ちもあります。その場合、何か気をつけることはありますか ?
石原さん
外資系といっても「日本にある会社」ですからね。それほど大差はないですよ。やる前に心配するのは無駄だと思います。
相談者
不動産にも興味があるんです。何度も足を運んで信頼を勝ち得るようなスタイルには多少自信があるんですが……。
石原さん
だったら、やっぱり販売向きなんでしょう。
相談者
ただ、やっぱり実績がないので……。
石原さん
そこです!Nさんはやっぱり心配しすぎ。もっと自信を持っていきましょう。まずどこかに飛び込んで、そこで実績を積んで未来を切り開いてください。
相談者
わかりました。今日はありがとうございます。

石原久美の転職アドバイス 今回のポイント

転職相談_ishihara

  1. 年齢が採用の成否にかかわることは多いが、「とってしまった歳」を気にしても仕方がない
  2. 変えられるものは変えるべくベストを尽くし、変えられないものは変えられないと割り切る
  3. 自信を持つこと。それだけで相手に与える印象は大きく変わる



Nさんは結婚を挟んでいくつかの仕事を経験していました。それぞれの勤務年数が長いとはいえませんが、販売の仕事では店長を務め、それなりの実績を出していらっしゃいます。たしかに控えめなところは彼女の美点だと思います。しかし、それが自信のなさが欠点に映ってしまう場面が多いように見受けられます。まず、過去の自分についてあれこれ思い悩むのは止めましょう。反省すべき点はきちんと反省しなければなりませんが、取り返しのつかないことを悩んでも一歩も前に進みません。未知の世界に進む場合も同じです。やる前に心配して成功の確率が上がるのなら、それもまた意味がありますが、石橋を叩いて渡らないようでは、どんな仕事にも就けないと思います。仕事はやってみなければわからないし、会社は入ってみなければわからない。柔軟な姿勢と肉体と精神の健全さをもって、とにかく飛び込んでみてください。